[ブランドの10周年と未来] ANREALAGEデザイナー森永邦彦

ANREALAGEデザイナー森永邦彦 Photo by: ANREALAGE

 2012年にブランド創立10周年を迎えた2人のデザイナーに、アニバーサリーイヤーと今後を聞く。2人目は「ANREALAGE(アンリアレイジ)」のデザイナー森永邦彦。新しいアプローチで服作りに挑む姿勢や独自のクリエイションは、国内外で注目を浴びている。服の「骨」を表現した20回目のコレクションでは、初めてショーを開催した会場東京タワーへのオマージュが込められた。13の質問にデザイナー森永邦彦が答えた。

【1】アニバーサリーイヤーを迎えた感想は?
10年前、自分がつくりためていた服に「アンリアレイジ」という名前をつけた。その頃、僕と数人しか知らなかった「アンリアレイジ」という名前が、この10年の道のりを経て、多くの人が知る名前となった。その事がただただ嬉しい。「A REAL UN REAL AGE」という名前を展覧会につけたのも、ブランド設立当初の、このブランド名をつけた時の気持ちを尊重したかったため。何十年も続けられているブランドに比べれば、アンリアレイジはまだ10年という若輩者だが、それでもここまで続けられたのは、自分たちの力以上に、アンリアレイジを感じて、アンリアレイジについて語り、アンリアレイジに袖を通してくれる人が多く存在してくれたお陰だと思っている。これからも、ブランド像を多くの人と共有できるような、みんなでつくりあげていくブランドでありたいと思っている。それぞれの中の「アンリアレイジ像」がより膨らんでいくことを望んで。

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【2】アニバーサリーイヤーに行ったことは?
10年の節目ということもあり、今年はなるべく多くの仕事をしようと思っていた。年に2回のコレクション、神戸ファッション美術館での「感じる服考える服」展、現代美術館での「FUTUER BEAUTY」展、インドでのショー、「I.T BEIJING MARKET COMME DES GARCON」でのインスタレーション、大阪店・仙台店の同時オープン、液体レンズのアドレンズ社やファイナルファンタジー天野喜孝氏とのコラボレーション、「あんりあれいじぴゃるこ」のオープン、これまでの軌跡をまとめた本の出版と展覧会の開催など。多くの仕事をしたが、どれも全力でやりきった気持ちでいる。

【3】なかでも印象が強く残っていることは?
本の出版と展覧会の開催。半年毎に更新され、半年経てば売り場からも記憶からも忘れられていくファッションサイクルの中で、消失してきた過去の作品をしっかりと形に残し、自分たちの歩んできた道を示す場所が必要だと思ったため実施した。通常、ファッションショーや展示会というファッション業界のみのクローズされた土俵で発表してきた自分たちの作品を、多くの人が手に取る「本」と、誰でも観る事ができる「展覧会」で発表することで、ファッション界以外の多くの人に作品を観てもらえたこと。印象深かったのは、まだファッションに足を踏み入れていない小さな子供が、はしゃいで喜んでいる姿を会場で観た時。

【4】ブランド創立から現在までで、最も嬉しかったことは?
今年、10年の道のりを本と展覧会というかたちできたこと。

【5】逆に、つらかったことは?
真のつらさを感じたことはない。自分の服が誰にも気付かれず全く売れない時代もあったが、その時代はその時代でとても充実していた。自分の夢であったこの生業ができているだけで充分。その道にいる限りは、何がつらいのかは分からない。

【6】この10年間で最も記憶に残っているコレクションは?
2006年春夏シーズンに、神田恵介と共に東京タワーで行ったコレクション。はじめての東京コレクションだったこと、憧れの東京タワーでショーを行ったこと、僕をこの道に導いてくれた師・神田恵介と共に服を並べて発表できたこと。服のクオリティーこそ未熟だったが、このコレクションが一番自分としては好きなコレクション。

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【7】デザイナーをやっていてよかったなと思えることは?
作りたい服が作れた時。その服が売れた時。その服を着た人が日常の景色に入り込んできた時。

【8】デザイナーになっていなかったら?
洋服と出会っていなければ、何も熱中するものはなかった。デザイナーを志さなければ、親が公務員なので親と同じ道に進んでいたと思う。

【9】ブランドの来年の目標は?
今年で10年。今回の展覧会と本の出版は、過去10年の軌跡を回帰するような一つの節目となるが、それは過去を賛美するものではなく、これからの10年を築くための作業として必要だった。彫刻家の舟越桂さんが、「その距離が離れすぎてまたぐのが難しくなってしまった敷石と敷石の間に、後から来てもう一つ敷石を置いて行くような作業」と言ったことがある。ファッションの先人達が築いた道の先頭に新たに石を置いて行く作業も重要だが、先人達がのこして行った石と石の間、その隙間に自分たちに石を置いて行くような作業を今はやってみたいと思う。その隙間が埋められた時に、はじめて道の先頭に石を置き、世界で闘いたい。


【10】ブランドとして次の1年で挑戦したいことは?
世界への挑戦。


【11】デザイナーとして次の1年で挑戦したいことは?
他ジャンルにいる自分が心底好きな人との協業作業。まだ誰も手をだしていないジャンルへ自分たちの洋服をぶつけてみること。

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【12】来年はどんな1年にしたい?
超低空飛行を続けたい。

【13】ブランドをいつまで続けたい?
神田恵介がこの道にいる限り。

ANREALAGEデザイナー森永邦彦
1980年東京都生まれ。早稲田大学、バンタンデザイン研究所卒業。「ブランド名はA REAL(日常)、UN REAL(非日常)、AGE(時代)、を組み合わせた造語。 2003年から活動を開始。「神は細部に宿る」という信念のもと作られる色鮮やかで細かいパッチワークや、人間の身体にとらわれない独創的なかたちの洋服が特徴。