ディオールとクリス・ヴァン・アッシュ - Dior & Kris Van Assche -

 「ディオール(Dior)」でウィメンズコレクションのアーティスティック ディレクターに女性、メンズコレクションのクリエーティブ ディレクターに男性という構成は史上初。長く紡がれた伝統で初めてとなるアプローチでディオールはどう変わったのか。メンズ クリエーティブ ディレクターのクリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assch)は「ディオール オム(Dior Homme)」に就任して10年。クリス・ヴァン・アッシュとディオールの関係性をショートクエスチョンで探る。

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Q 東京には何度目の来日?

何度も来たことがありますよ。シグネチャー ブランドをやっている時にも何度か来日しました。最近はしばらく来ていなかったので、また戻って来ることができて嬉しいです。

Q 銀座にもよく来ていますか?

銀座にも足を運ぶことはあったのですが正直、地理的にはあまり詳しくありません。来日の際はコレクションの発表や何かのプロジェクトのために来日するので、スケジュールがいつもとてもタイトです。ただ、とてもダイナミックな街だという印象を持っています。このエリアの中心にブティックをオープンできることはとても素晴らしいですね。

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Q では、東京の中で好きな場所は?

渋谷です。通りを歩くだけで色々なものに感銘を受けますし、クールだと思います。個々のスタイルを観察するのが好きなので、さまざまな人が行き交っている様もとても興味深いです。

Q ディオールを理解するために一番最初にしたこと

ラグジュアリーブランドのメンズレーベルはどうあるべきか、まずはそこから考え始めました。アトリエからたくさんのインスピレーションを得て、就任時からテーラリングに集中しました。目指したのは「テーラリングとファッションの融合」です。今はストリートウエアやスポーツウエアが注目を集めますが、ディオール オムはテーラリングから生まれたブランドですからその要素は絶対に欠かす事ができません。

Q 自身が手掛けるようになって、ディオールはどのように変化した?

ギンザ シックス(GINZA SIX)のブティックを見てもらえれば、ブランドとして大きな変貌、成長を遂げたということを理解していただけるはずです。

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Q ディオールの創業者との関わりを考えることはある?

とても複雑な質問です。なぜなら、彼はメンズウエアを手がけていませんでしたから。ただ彼の直筆によるプリントを取り入れたり、花を愛する心は意識し続けています。今回のプレフォールコレクションは1947年にムッシュ ディオールが初めて行ったファッションショーで発表したカラー「ルージュ スクリーム(Rouge Scream)」に着想を得ました。当時のフランスで母国語ではなく英語を使って作品を発表するなど、"反抗的"だと思われた彼のアプローチは私にとっては大変モダンに思え、今回はその色を「スクリーミング レッド」と名付けてコレクションに落とし込んでいます。ですので今回のコレクションは、その点でもムッシュ ディオールへのオマージュでもあります。

Q コレクションは翌日に発売される予定

ディオールがこのような発表形式を採用するのは今回が初めてです。きっかけはハウス オブ ディオール 銀座(HOUSE OF DIOR GINZA)オープンのイベント開催でしたが、私自身もファッションにおいて日本と強い繋がりを感じていましたから不思議なことではありませんでした。日本は新しいアイデアに対していつも敏感ですから、こういった新しい施策に取り組むのには適している国だと思っています。

Q コレクションのインスピレーションはどこから

様々です。たとえば音楽の中でもニューウェーブといったように、数シーズンにわったってインスピレーション源として継続されるものもあり、それは特徴的かもしれません。「ディオール」は歴史あるブランドですからあまり格式的なインスピレーションをそのまま落とし込むことはしません。80年代にインスピレーション源があったとしても、スポーツと融合するように何か異なる要素を加えることで今の時代に合致したスタイルに仕上げています。

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Q 男性らしさと女性らしさの定義

難しい質問ですね。個々の性格によると思います。クリエーションの出発点としては、メンズファッションは男性、ウィメンズファッションは女性のこと、です。でもそう言いながらも例外は付き物です。だから定義しづらいのでしょう。私は男性と女性について考える時はいつも、ジェンダーよりもパーソナリティについてをクリエーションの焦点にしています。

Q 女性デザイナーによる新生「ディオール」について

マリア・グラツィアは素晴らしい仕事をしていますから、次のコレクションが楽しみです。

Q 星座と言うキーワードは女性の心を掴みますね。クリスの星座は?

私は牡牛座です。ただ、占いはあまり気にしません(笑)。

Q ファッション業界のトップを走り続けるために必要なことは

予測不能であること、フレッシュであること、常に進化し革新し続けることです。今、年間で4コレクションを発表していますが、絶え間なく進化させて、創造し続けています。

Q 自身のブランド休止について

時期的にも経済的にもインディペンデントなレーベルを継続し続けることは困難でしたし、最善を尽くすに必要な要素が足りていないと思ったんです。自分が求める最高のコレクションを発表できないのであれば保留という選択も悪くはない。自分が再び最高だと思える時まで、待つことにしたんです。

Q あなたが確立したディオール オムらしさとは

テーラリングとファッションの両立です。伝統とモード、どちらかを選ぶのではなく両立させているということ

Q では最後にディオールを一言で表現すると

ディオールはコントラストを大事にしているブランドですからとても複雑です。ムッシュ ディオールはメンズウエアの生地でフェミニンなドレスを作っていましたし、一方で花を取り入れたドレスには強い構造を持たせました。私の仕事においても伝統とスポーツ、音楽とストリートというように共存し合っています。ソフトとハードの融合が常に成立しているのがディオールなんです。ですから、強いて言うなら「コントラスト」なのかもしれませんね。

(聞き手:高村 美緒)