【連載:ファションショーの作り方 vol.3】ショーイメージを固める

doublet 2017SS Collection

 ファッションショーをやると決めたら、次に何をすればいいのか。連載3回目のテーマは「ショーイメージ」について。デザイナーが思い描くイメージをチームで共有し、ショー方向性を決めていくという作業で、ショー作りの一番最初のステップになります。デザイナーの井野将之氏はどのような青写真を描いているのでしょうか?「ダブレット(doublet) 」の最初のチームミーティングを覗いてみましょう。

【短期連載 vol.1】ファッションショーの基本
【短期連載 vol.2】"東コレ"デビューするダブレットとは?
【短期連載 vol.3】ショーイメージを固める
【短期連載 vol.4】スタイリストの仕事
【短期連載 vol.5】ショー音楽
【短期連載 vol.6】モデルに聞く10の質問
【短期連載 vol.7】ショー演出
【短期連載 vol.8】広報の仕事
【短期連載 vol.9】ヘアメイクの仕事

 2月某日、最初の打ち合わせは池ノ上のプトーカフェ (PUTTO CAFE)で行われました。

「どういったイメージのショーにするのか」を話し合うメンバーは、井野将之氏、スタイリストのデミ・デム(DEMI DEMU)氏、ヘアメイクのNORI氏の3人。このメンバーはルックの撮影メンバーでもあり、お互いのことを知り尽くした間柄だそう。「僕が買い出しをして、調理してくれるのがデミさん。それをNORIさんがいい味に整えてくれる」と井野が語るように、今回のショーでもチームで1つのものを作り上げていくようです。

 そもそも単独ショーは初めての「ダブレット」。NORI氏は「タカシ ニシヤマ(TAKASHI NISHIYAMA)」のランウェイのヘアメイクを手掛けた経験があり、デミ氏はポーランドのショーでスタイリングを担当したことはありますが日本では初めて。3人とも手探りではありますが、まずは井野氏が思い浮かべるイメージを共有していきます。

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井野:僕が思い描いているイメージは「年齢、国籍が様々なモデルを使い、各モデルのリアルさ、アイデンティティを表現して、ダサさの中に美しさが共存している」という感じです。

NORI&デミ:なるほど。

井野:メンズブランドですけど、ルックと同じように女性も入れたいんですよね。

デミ:プロモデルはもちろん必要ですけど、ドラァグクイーンやクリエーターなども混ぜてみたらいいかもですね。

井野:それいいですね!

 ちなみにブランドの規模が大きくなるとキャスティング会社経由でプロモデルをブッキングしますが、コストを抑えるため今回はプロモデル以外も起用していくことに。ルックブックの撮影でもモデルブッキングを担当するデミ氏のリストから3人でイメージに合う人を選んでいきます。

デミ:80人くらいピックアップしてきましたが、あのアイテムはこの人にどうですか?

井野:かなりパンチの効いたファッションをしてますね。

デミ:そうなんです。この女の子はボーイッシュな格好も似合うと思いますね。フォトグラファーなんですけど、ファッションも大好きなんです。

井野:この子ならオーバサイズで着てもらうといいかもしれません。

 「ダブレット」チームは、それぞれのモデルのパーソナリティーに注目。それぞれモデルの体型やルックスだけでなく、性格や趣味、交友関係などをリサーチし、その都度何を着てもらえばいいか、サイズ感、ヘアメイクはどうするのかといったようにモデルに応じて大まかなイメージを共有しています。

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 モデルの選定がある程度落ち着いたら次は、ショー会場のイメージも詰めていきます。「TOKYO FASHION AWARD」受賞者枠での参加ということで、会場は渋谷ヒカリエ ホールBに。会場でできることを精査しつつ、その中で何ができるのか話を詰めていきます。

井野:ヴィンテージ感というか本当にラフなショーにしたいんです。

NORI:それこそ前のブランドが使った椅子とかをそのまま使って、整頓されていない空間でショーをやれれば面白いかもですね。

デミ:いいですね、だったらよりラフでリアルなイメージを訴求するためにモデルの私物を混ぜるのも良いかもしれません。

井野:最高ですね!演出の関係で椅子のセッティングが可能かどうかは調整が必要ですが、そういったイメージでモデルのパーソナリティと「ダブレット」の服をうまく調和させたショーにできれば。

デミ:そうなるとシューズに私物が使えてスタイリングの幅も広がりですね。

井野:あと音楽も既にイメージがありまして、日常のノイズをミックスして気味の悪い曲をベースに、最後に誰もが知る"あの曲"を流し時が止まったような演出にしたいんです。

NORI:それは面白いですね(笑)。

 一見、雑談にも思えるような和やかなムードで2時間半の打ち合わせは終了。井野氏の大まかな構想をもとに、どんどんアイデアが膨らみ、モデルや会場、音楽など、ショーのイメージが具体的になってきました。これから、このイメージを具体的にしてショーの形を作っていきます。

次回はショーにおいてスタイリストはどんな役割を担うのか?スタイリング現場に潜入し、レポートしていきます。