【インタビュー】サルバム デザイナー藤田哲平 異端児は世界で何を見たか

sulvamデザイナー 藤田哲平 Photo by: Vanni Bassetti

 「体が動かなくなって服を作れないなら死にたい」と話す「サルバム(sulvam)」デザイナーの藤田哲平。その表情にはゼロから服作りを叩き込まれたヨウジヤマモト譲りのスピリットと、身一つでブランドを成長させてきた気迫がにじむ。立ち上げから4年目となる今年、1月にイタリアのピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Imagine Uomo)で初の海外単独ショーを開き、そして2月にはLVMHプライズでセミファイナルの1人に選ばれた。逆境にも臆さず正面から挑んできた異端児は、世界のステージで何を見たのか。

■最初の反応はゼロ

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3シーズン目の2015-16年秋冬コレクション

ー2014年にブランドをスタートし、3シーズン目には海外出展と早いペースで進んできましたね。

 きっかけはTOKYO FASHION AWARD(※)の受賞で、海外についてはあれが無ければ今でもどうしていいかわからなかったかもしれません。パリで発表ができた時期がブランドとしてもかなり早い段階だったので、いいチャンスになったと思っています。

※TOKYO FASHION AWARD:東京ファッション・ビジネス活性化プロジェクトの一環で東京都と繊維ファッション産学協議会が主催し、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)の共催により2014年に創設。受賞者には、東京やパリのファッションウィークにおける新作発表やビジネスマッチングの支援など、年間を通じて継続的なサポートが実施される。

ーパリでの反応はどうでしたか?

 最初は一切反応がなく、成果はゼロ。マーケットに合わせて着やすさを考えて服を作ったら、それがいけなかったんだと思います。現地では「良いか悪いか」だけで、すごくリアル。それで、次のシーズンでは変に計算をしないで自分の感情だけで作るようにしたら、海外の取り引きが決まるようになりました。「これでいいんだ」とわかってきたんです。

ーマーケットインではなく、自身のアイデンティティを強く出すことだった。

 そうだと思います。その2回目のパリの展示会で興味を持ってくれたバイヤーは、後からNYのバーニーズの人だとわかりました。すぐ取り引きの話になった時に、バーニーズはヨウジヤマモトも取り扱っていることも知っていたので「実は元々ヨウジにいたんだ」と伝えると、「だから作れるんだね」という話に繋がったり。

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4シーズン目の2016年春夏コレクション

ー元ヨウジヤマモト、というキャリアは後から知られる形なんですね。

 キャリアよりも物が第一なんだと思います。バイヤーの買い方も日本とは違って、その店が思うサルバムを今シーズンはどう表現しようかとか、このブランドをどう売ろうかと考えながらバイイングしている印象で。それが日本の小売との違いじゃないかなと感じました。

■あの人に見てもらいたかった

ー2015年にはミラノの素材展「Milano Unica」で合同ショーを経験しました。

 「ミラノ・ウニカ」は、東京に来ていたヴォーグイタリアのSara Mainoさんに選んで頂いて参加することになりました。誰も知らないような僕の最初のショーを見て、評価してくれて。

【2015年7月25日のニュース】サルバムが9月ミラノの素材展で合同ショーに初参加

ー同じ年にヴォーグイタリアがドバイで主催した「Who is on next? Dubai」ではトップに選ばれました。

 その副賞がピッティ出展だったんですが、ディレクターとのミーティングで「まだヨーロッパでショーをしたことがない」と伝えたら、では是非やりましょうという話になって。でも一度、スキップすることにしました。それが1年越しで実現したのが、今回のピッティでのショーなんです。

ーピッティのショーはJFWのプロジェクトの関係もあったようですが、元々は実力で勝ち取ったものなんですね。

 でも、一つ残念なことがあって。先日亡くなってしまったヴォーグイタリアの編集長(故フランカ・ソッツァーニ)に、「Who is on next? Dubai」で声を掛けてもらっていたんです。授賞式でもたぶん生意気な態度だった僕に、「哲平はこのままで大丈夫だから安心しなさい」と英語がわかるようにゆっくり話してくれて、「ピッティのショーを楽しみにしているから」と。やっぱり、見てもらいたかったですね。

【2016年11月9日のニュ-ス】「サルバム」がピッティウオモ初参加、ランウェイショーで新作披露へ

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ピッティで発表した2017-18年秋冬コレクション

ー会場はレオポルダ駅舎跡でした。

 ヨウジヤマモトが昔、そこでショーをしたことがあって、同じ場所でやりたいと思っていたんです。前回はラフ・シモンズがやっていて、それを見た時に改めて自分は違うことをやる必要があると感じて。自分は常に色々なことに対して「違う」という思いがあって、それに対するアプローチがサルバムなんですが、今のピッティの空気感がこうだったらじゃあ僕はこうしたい、という気持ちが湧いてきました。

ー初めての海外の単独ショーとして、何か特別な考えはありましたか?

 東京で最初のショーをした時はブランドの自己紹介のような気持ちだったんですが、それ以降は毎回、自分がその時に思うことを表現しています。だから今回のピッティも気負わずに、僕がやりたいこと、表現したいことを素直にやったつもりです。これまでで一番、自由に気分や感情だけで作れたコレクションだと思います。

>>sulvam 2017-18年秋冬コレクション全ルック画像

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