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2009年3月に東京で発表となった2009-10年秋冬シーズンの最新コレクションにおいて、強烈なインパクトを放つ20 体の作品が披露された。布や糸は一切使わず、美術系・服飾系専門学校の卒業制作から出た廃材やクズを材料に創作されたこれらの作品を手掛けたのは、ファッションデザイナーの山縣良和氏。
ロンドンの名門、セントラル・セントマーチンズ美術学校を首席で卒業し、ジョンガリアーノのデザインアシスタントを務めたという経歴を持つ同氏は、様々な表現活動の他、帰国後に立ち上げたファッションブランド「writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)」においてエモーショナルな作品を発表し続けてきた。昨年には自らが講師を務めるファッションデザインの教室「ここのがっこう」を開講するなど、ファッションについて深く考え、常に真摯に向き合っている。そんな山縣氏に、最新コレクションに込められていた思いや、ファッションの果たすべき役割、教育現場の改革、新しいものを生み出し続ける原動力などについて詳しく伺った。
■感情を揺り動かすファッション
東京の価値観にないものをつくり、自分の立ち位置を見いだそうと考え、原点を意味する"0点"をテーマに掲げたコレクションを制作しました。世界各都市で行われたファッションショーを見ても、多分一番クレイジーなことをやったのではないかと思います。しかし、ファッションを否定している訳ではありません。
「Graduate Fashion Show」というタイトルをつけた、この"0 点の卒業ショー"を原点とし、ここから変化していくといったファッションに対する感情の表現です。実際、様々な感想や厳しい意見も頂きましたが、「こういうファッションもいいんじゃないか」と共感して頂ける方々に伝わり、結果的にはコミュニケーションを広げることが出来ました。特に、90年代に発表された実験的な服を見ていない、今の若い世代や学生からの反応が大きかったんです。「新しい」「面白い」「こんなものもあるんだ」と、感覚でつかんでもらえたのは意味があることでした。

■そこに何かしら"今"の感覚があるかが重要
不器用でも、服の完成度が低くても、そこに何かしら"今"の感覚があるかが凄く重要で、僕は、もっと素直にその時代感を表したものを創るべきだと思っています。
日本の、特にリアリティのあるストリートファッションは注目されるべき存在じゃないかと考えていて、もの作りの技術面においては世界トップクラスだと思っています。しかし、ファッションデザインの多様性という部分では後進国的なイメージがあります。特に日本の服飾学校の教育の現場で、あまりファッションを感じないのです。僕は、ファッションは流行、様相だと思っているのですが、未来を担う若者に対して、その流行、様相の教育がどこまでできているかと言うと疑問が残りますね。最新のファッションデザインという"感覚"を、教育の中で感じ取ることが少なかったんです。
■学生や若い人たちの感覚を尊重出来るような環境を作りたい
元々僕は日本でファッションの専門学校に1年間通ったあとロンドンの学校に行ったのですが、両方の環境で特に感じたのは、ファッション教育の違いです。向こうでは、教育現場にちゃんとファッションがあったんです。学生が作っているものも格好良かったし、これは次に何かになるなと予感させる学生や作品に多く出会いました。それに、日本では企業と学生の間にも深い溝がある。「学生の頃に勉強したことは全部忘れろ」とか、よく言うじゃないですか。
歴史を振り返ったときに、誰が新しいファッションを創っているかというと、新しい価値観を生み出す、多くの若者だと思います。コアな部分での感覚的な正解を若者が持っていて、だったらそこをもっと育てていくような環境が必要なのに、いつのまにか学生の感覚が古くなってしまっている。
本来は当たり前のことなのですが、もっと学生や若い人たちの感覚を尊重出来るような環境を作りたいという強い気持ちがありました。 自分が教育現場に関わることによって、少しでも出来ることがあるんじゃないかと思い、立ち上げたのがファッションデザインの学校「ここのがっこう」です。
ものを作るにあたっての個々人における本質的な精神(コンセプト)を構築すること。他のファッション学校を否定するのではなく、あくまでも日本のファッション教育に足りない部分を補いたいと思っていて、補完し合える関係でありたいと思っています。実際、これまで授業を行ってきた生徒が生き生きとしていく様子を見て、手応えを感じてきています。
■価値観の転換期を迎えた今、ファッションの可能性を感じる
ここ100 年でいうと、シャネルやイブサンローランなど20 世紀のデザイナーは、まさにファッションデザイナーだったと思います。
スタイルや生き方、その存在そのものが時代の先頭を切っていたのです。単純に服をつくっていたわけではなく、ファッションをつくり、影響を及ぼしていました。本来のファッションの意はそうだと思うし、そうあって欲しい。ファッションが現象としての先頭を行って欲しいと思っています。
今、世界恐慌のあおり等を受け、様々なものの価値観の転換期だと思います。ファッション界も同様に変わらざるを得ない、変わるべき状況にあります。一握りのトップデザイナーしか発信出来ないという時代は終わり、今はインターネットなどを通じて誰でも発信出来る時代。混沌としている今だからこそ、ファッションの可能性を感じ、流行や文化を創造していきたいですね。
■仕事の流儀「100点をめざして中途半端になるよりも、振り切った0点のほうがいい。ただし、独りよがりにやるのではなく、誰に対してのメッセージなのか。常に対するものを考えていないと表現は伝わらない。」

中途半端なことはあまり好きではないですね。僕が今まで、普通からすると極端なもの作りを続けてきて感じる事は、批判もあったんですが、だからこそ、そこを求めてくれる人もどこかにいるということ。中途半端な事をするんじゃなくて、僕にとっては逆に振り切った方がやっていけると思うんです。
でも、人を無視していないというのが重要です。ただ自分のやりたいことをやればいいんだ、という独りよがりではなく、誰に対してメッセージを伝えたいのか。対するものを考えてこそがクリエーションで、そうじゃないと表現は伝わらないと思います。
僕はファッションがすごく好きで、これこそが原動力。人の心を揺り動かすような、そんなファッションをつくり続けて行きたいですね。
■プロフィール:山縣良和 やまがたよしかず
1980年生まれ。2005年セントラルセントマーティンズ美術大学ウィメンズウェア学科を首席で卒業。ジョン ガリアーノのデザインアシスタントなどを経験し、帰国後の2007年4月、株式会社リトゥンアフターワーズを設立。2009年春夏シーズンよりジャパンファッションウィーク(JFW)に参加。
ファッションデザインを「人間の様相、流行のデザイン」と捉え、教育、社会、文化、環境的観点を持ったコミュニケーションツールとしてファッションの役割を提案する。
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