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新しい体験型パフォーマンス作品「MIRAGE(ミラージュ)」とは!?

2012年09月18日 11:00 JST

 2012年8月24日からの3日間、お台場の日本科学未来館でグラインダーマンと理化学研究所の主催による体験型パフォーマンス「MIRAGE」が発表された。1回約10分のパフォーマンスを1回につきひとりしか体験できないということもあり、予約が殺到。この貴重な機会に運良く体験することができたので、レポートする。

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 「MIRAGE」の核となるのは、理化学研究所脳科学総合研究センターの適応知性研究チームにより開発されたSR システム(Substitutional Reality System=代替現実システム)。このシステムに基づくヘッドマウント・ディスプレイとヘッドフォンを合わせた装置、通称「エイリアンヘッド」が鍵をにぎる。このエイリアンヘッド、パッと見た感じではダフトパンクを連想するルックス。開発チームのリーダーである社会神経科学者の藤井直敬氏が、山中俊治氏にデザインを依頼したもので、ヘルメット状のものを被ると、目線の位置にゴーグル型ディスプレイとライブカメラが取り付けられ、耳の部分にはヘッドフォンがセットされるようになっている。頭にセットしてみると、完全に視覚と聴覚をコントロールされる感じだ。この装置自体は大して重くないのだが、自分自身で外界の情報を直接察知することができないため、やはり普通の状態に比べると少々不安を感じる。

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 体験者は左右に回転可能なチェアに座り、ヘッドマウント・ディスプレイを係の人から装着される。念入りにフィット感を確認した上で、パフォーマンスがスタートする。ひとりのダンサーが目の前に現れて体験者に直接語りかけてくるのだが、最初の時点で自分の両手を見るように指示される。自分の両手をカメラ越しに動かしてみると、ちょっと不自然だが、紛れもない自分の手だということに安心感を持つ。不安になったら、手を見て動かしてみることが、この場合は肝心のようだ。そして、おもむろにパフォーマンスがはじまる。

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 ダンサーがひとり、左右の空間を縦横無尽に使って、ダンスを展開する。チェアとともに首を動かしながらダンサーの動きを追いかけてみる。いつしか、もうひとりのダンサーが空間に侵入し、ダンサーふたりのパフォーマンスが交錯してくる。ふたりの動きは素早い上に別々の方向へと拡散していくため、次第に目線で追い切れなくなり、そして、その動きが影のように繰り出される過去の映像と重なって、次第にどれが現実のパフォーマンスでどれが映像なのかがわからなくなってくる。確かに感じるのは、自分の両脇をダンサーが通る時の、空気を揺るがす気配と、腕にさわる髪の毛の感触だ。視覚と聴覚をコントロールされていても、触覚は残る。そのことに必要以上に安堵の思いを感じるのは、やはり自分の視覚と聴覚をコントロールされていることへの漠然とした不安があるからなのかもしれない。


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パフォーマンスを構成・演出・振付したのは、パフォーマンスグループ「GRINDER-MAN(グラインダーマン)」だ。現代美術を出発点に、演者と観客の相互作用を空間化する公演を発表するかたわら、須藤元気率いるダンスパフォーマンスユニット「WORLD ORDER」の舞台演出や振付協力など、近年、舞台空間にとどまらないめざましい活躍を見せている。今回のパフォーマンスは、彼らにとっても新たな試み。体験者ひとりに複数のダンサーとは、なんと贅沢なことだろう。パフォーマンスの最後では、エイリアンヘッド自体をダンサーが取り外してくれる演出も行われる。そこで、ちょっと驚くべき現実と非現実の交錯があるのだが、それはいつか体験するかもしれない読者のために、あえて説明はしないでおこう。パフォーマンスの最中に、ずっとヘッドフォンから流れてきたスタイリッシュなサウンドは、音楽家「evala」によるものだ。体験者を完全に外界からシャットアウトし、非日常の空間に没入させるのに一役買っていた。視覚と同じくらい、聴覚も重要なポイントだと感じる。

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  SRシステム自体は、サルの社会性を研究していた社会神経科学者の藤井直敬氏が、ヒトに対しても同様の研究を行うために開発を進めてきたもので、そもそもはこういったアートパフォーマンスに使用することは想定していなかったという。パノラマカメラによる全方位の記録映像と、モーションセンサーを用いることにより、SRシステムの体験者は、過去の映像であっても、自由に周りを見渡すことができる。そして、過去の映像を現実から地続きに体験することで、過去と現実の垣根が消え、まるで目の前で起きているように過去を体験できる。この技術を応用して、さまざまな脳科学的な認知実験が可能となったという。

 しばしば、私たちは客観的現実と主観的現実を取り違える。自分が知覚しているのは主観的現実なのに、それが他者とも同じ、ひとつの共有できる現実であるかのように考えるものだ。SRシステムの可能性は、さらに私たちの予想のつかないところに潜んでいるように感じる。

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取材/草野恵子