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ユニクロやディーゼル...販売員を正社員化する理由は?

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最近、ディーゼルやユニクロなどの大手アパレル企業が、契約社員の販売スタッフを正社員に転換する方針を打ち出している(参考:ディーゼルジャパンが販売員を正社員化 4月から | Fashionsnap.com)。現に「契約社員」として働いている人たちが、販売の仕事はそのままに「正社員」になるというのはどういうことなのだろうか。

契約社員と正社員の法律上のちがい

意外に思うかもしれないが、「契約社員」や「正社員」は、法律上の分類ではない。法律的に言えば、「期間が決まっている社員」と「決まっていない(無期限の)社員」というような区別になるのだ。そして両者は、以下のような点で異なる。

1: 正社員は辞職の自由がある

「辞職の自由」と言われても「?」となるかもしれないが、特に大事なポイントは、ヘッドハンティングとの関係だ。正社員のヘッドハンティングはしたい放題、されたい放題ということ。一方で契約社員は、契約期間内はやむを得ない事由がない限りやめられず、自分の都合でやめる場合は損害賠償を請求されることもある。原則は期間満了まで働く必要があるのだ。

2: 契約社員は契約更新時に失職する危険がある

法律上、契約期間の上限は1年が原則。それ以上雇用関係を続けるには契約を期間満了ごとに更新していくこととなる。更新するかはお互いに自由。ここに失職の危機がある。
ただし、労基法の改正により、昨年から、契約の更新期間が5年を超えたら無期労働契約とみなされるようになった。これは正社員になるという意味ではないものの、企業側から契約期間満了を理由とする契約の終了はできなくなる。

重要なのは契約条件のちがい

一般的には、「正社員はあらゆる意味で契約社員より保護されている」というようなイメージがあるかもしれない。でも、法律上の立場の違いは上の2つくらい。法律上はどちらも「労働者」にあたるので、労働基準法等の労働者を保護する規定はほぼ同様に適用される。大きな違いを生んでいるのは、それぞれの契約条件だ。
多くの企業では、福利厚生や賞与、昇給、退職金などの契約条件で正社員の方が有利。一方、契約社員の方が個々の契約が柔軟で、時間や期間など自由な働き方ができる。生き方次第で一長一短だが、労働条件が悪いと言われるファッション業界において、昇進や昇給が期待できる正社員への転換は、一般的にはハッピーなニュースだ。

ディーゼルやユニクロは何故「正社員化」をするの?

ユニクロが掲げるのは、長期的な人材の確保や生産性の向上。スタッフの定着による採用コスト抑制、習熟したスタッフによる生産性の向上が見込まれる。
一方、ディーゼルは、採用競争力を高め優秀な人材を効率的かつ迅速に確保する目的。管理職や専任職、本部スタッフへのキャリアパスも用意する。
どちらも目的は人材の確保。福利厚生費など人件費の増加は免れないが、優秀な人材の確保によるパフォーマンスの向上に期待しているのだろう。一般論として、長く働くには正社員の就業条件の方が適していると言えるし、そうした人材を求める企業が「正社員化」を行う、ということだ。

管理職になると残業代を貰えない点に注意

ただし、注意点もある。企業は法律上、原則として管理職には残業代を支払わなくてよいのだ。正社員になってキャリアは右肩上がりでも、トータルで貰えるお給料はそうはいかない......となる可能性もあるので、この点には注意。

(執筆:ニシムラミカ / 監修:河瀬季)