法務博士の河瀬季とニシムラミカがファッションと法律を考えるサイト「FASHIONLAW.JP」

ストリートスナップの無許諾掲載は違法なのか

ストリートスナップの無許諾掲載は違法なのかの画像

「Fashionsnap.com」には多数のファッションスナップが掲載されており、これらは被写体の許諾を得た写真だ(上画像は「ストリートスナップ | Fashionsnap.com」のスクリーンショット)。しかし世の中には、被写体に無断でスナップを撮影し、サイト上に掲載しているサイトもある。
こうした無断撮影&掲載は、いわゆる「肖像権」を侵害して違法だ。実際に、無許諾スナップを掲載しているサイトが訴えられ、「違法」と判断された事件もある。
......と、簡単に言えれば良いのだが、実は、そう簡単には断言できない。「微妙」な部分を含む問題なのだ。
何故「微妙」なのか、「肖像権」を巡る議論や事件について、概要を解説しよう。


「SEX」プリントTシャツの「街の人事件」とは

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ファッションスナップと「肖像権」に関する一番有名な事件は、いわゆる「街の人事件」。DOLCE AND GABBANAの「SEX」プリントTシャツを着た女性が、あるファッションサイトに銀座で無断でファッションスナップを撮影されてウェブで公開されたところ、一部ネットユーザーから「SEX(笑)」ということで中傷を受けた事件だ。左は、同型と思われるショー写真である(参考:Dolce & Gabbana Spring 2003 Ready-to-Wear Collection Slideshow on Style.com)。


「肖像権」は不明確で「微妙」な権利である

「肖像権」は、言葉としては有名だ。「人には誰しも、自分の顔などに関する肖像権がある」などと説明されることも多い。
しかし、意外に思うかもしれないが、「肖像権」について定めている法律はなく、「肖像権」を正面から認めた最高裁判決もない。「法律も最高裁判決もないけど、しかし常識的に考えて人間には肖像権があるし、それを侵害したら違法だよね」と言われている......という感じなのだ。
そしてそうであるが故に、「どういう場合に違法になるのか」というのは、どうにも不明確で「微妙」な問題なのである。

無許諾掲載はなぜ「違法」と判断されたか

「SEX」プリントTシャツの「街の人事件」に戻ろう。
この事件では、無許諾掲載を行ったサイトは違法であると判断された。その判決は、

A: 一人の人間にピントを合わせて大写しにする写真は「街の風景」的な写真とは違うだろ
B: しかもこの女性が着てたのは「SEX」プリントTシャツだし

という旨を確認し、「だから、普通に考えてこの写真を無許諾掲載されるのは誰だってイヤだよ」という旨の判断を行っている。

「原宿にいる人に見られること」と「全世界に見られること」
......上記のBに関して、「いや、自分が気に入ってそのTシャツを着ていたのでは?」と思う人もいるかもしれない。しかし、地元では地味な服を着て原宿に向かい、原宿に着いてから着替える人のことを考えて貰いたい。「原宿の人に見られるのは良いけど、ネット越しに全世界の人に見られるのはイヤ」という問題だ。

スナップの無許諾掲載は「黒」なのか

この事件を踏まえた法律家の見解は、いまいち統一されていない。
少なくとも、「その服を着ている」と全世界に公開されたくないような服(A&Bの両方を言えるケース)ならば、ファッションスナップを無断で撮影&公開するのは違法......とは言えそうだ。
しかし、ファッションスナップ一般(Bとは言えないケース)について「無断での撮影&公開は違法」と言えるのか......となると、どうも「微妙」なのである。

もっとも、「無断で撮影&公開しても良いケースもある」としても、許諾を取っておく方が安全ではある。そして、仮に「法律的には無断でもOK」としても、道義的には許諾を取っておくべきだろうけど。