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デザイン思考を組織イノベーションに活用する10の方法

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以前に英語版freshtraxで好評だったこちらの記事を日本語でご紹介します。

2013年の頭に、IBMデザインは自社の企業文化の変革を目的とした「IBMデザイン思考」と呼ばれるプログラムを開始した。これは、彼らの今までの技術中心の手法を、持続可能なユーザー中心設計へと変化させるものだ。IBMは彼ら自身をデザインに重きをおいた企業へと再編成するためにすでに100億円以上投資している。

"我々のチームには技術中心の考え方がしっかりと根付いていました。しかし我々はこの文化をやめ、ユーザーに寄り添うことを重視する文化へと変化したいと考えています。"

- チャーリー・ヒル IBMデザイン研究所CTO

言うまでもないが、IBMはデザイン会社ではない。ではなぜ彼らはこのように企業文化を大幅に変えようとしているのか?

デザイン思考というのは、スタンフォード大学教授でありIDEOの創業者であるデイビッド・ケリーが提唱し始めてからかなり流行した言葉となった。しかし、一般的なデザイン思考の定義は一つではないため、これをどう活用できるのかはっきりとした理解を持っていない人が多いのではないだろうか。

Idea CoutureのCEOであるアイドリス・モーティーは彼の著書「戦略的イノベーションのためのデザイン思考(Design Thinking for Strategic Innovation)」で、デザイン思考のプロセスを非常にわかりやすく説明している。彼は、革新的なパフォーマンスを求めている現代の企業に対し、デザイン思考の実用的な応用方法を紹介している。

イノベーションのスタートは組織変革から

デザイン的アプローチからコンサルティングを提供するbtrax社では、クライアントの戦略をどう改善するかというプロセスにおいてデザイン思考を活用している。その中で最も重要なのが、組織の改革である。

真のイノベーションを生み出すには、プロダクトやサービスの前に、組織自体がイノベーティブ出なければならない。そしてその変革にもデザイン思考を活用することができる。

そのプロセスから生み出された、これからイノベーションに取り組む企業において極めて重要な10の法則についてまとめた。

デザイン思考とは全てを "Why" から始め、最終的にイノベーションを創り出すプロセスである

- ブランドン K. ヒル btrax CEO

1.行動中心の企業文化

Actions speak louder than words/行動は言葉よりも雄弁だ。

「これからの課題解決には、学際的に物事を考えることができる人が求められるだろう。はじめに考え、そしてそれから解決策に取り組むのである。」と、アイドリスは説明する。

あなたの企業をよりイノベーティブにするためには、領域にとらわれない実践的な学びによるアプローチが課題解決において必要になるだろう。これがあなたのチームが直面している課題の本質を明確にし、様々なアイデアが思いつくようになる。

デザインは、どう見えるかではなくどう機能するかだ。

- スティーブ・ジョブズ

2.変化に慣れる

私たちの多くは最初の一歩を踏み出すことを怖がり、現状を維持することに慣れてしまっている。しかし今日の複雑で不明確な課題に取り組むには、新たな考え方が求められている。昔からの手法に頼っていたり、保守的で意思決定を先延ばしにしたりすることは、ただ状況を悪化させるだけだ。

筆者が5ヶ月前に日本を離れ、フィンランドに来たばかりの時は、見るものすべてが目新しく、全てが完全に私のコンフォートゾーンを超えていた(私にとって初めてのヨーロッパでもあった)。しかし、すべての経験を自分が成長する機会だと捉えるようになってからこれらの環境の変化を自然と楽しめるようになっていた。

チーム間で変化を恐れる感情をうまくコントロールすることで、同じようにリスキーな状況であっても、楽しくエキサイティングに思えるようになる。そのマインドセットがイノベーションを促進させるのだ。

全ては変化を遂げ、今も変化し、変化し続けるのだ。

- アイドリス・モーティー Idea Couture CEO

3.人間中心設計:人間による人間のためのデザイン

共感は、デザイン思考においてもっとも重要なプロセスの一つである。あなたが取り組んでいる課題はあなた自身の問題ではないので、ユーザーが普段何をしているのか、どうやって周りと交流しているのか、彼らに対して感情移入する必要がある。

カスタマーやエンドユーザーの身体的・精神的なニーズに焦点を当てるために彼らが物事をなぜ・どうやっているのかを多角的に観察し、ヒアリングをベースとした調査をすることが求められる。

スタンフォードのデザイン思考の入門編には「最も良い解決策は人の行動への深い理解から生まれるものだ」と書かれている。人々を観察することがイノベーティブな解決策につながる理解をもたらすのだ。これはまた、予測できない課題に対して取り組むチームを再編成する時にも応用できるだろう。

型がなくなった時に、新たな世界が姿を見せる

- トゥリ カプフェバーグ 反体制文化詩人

4.現在よりも未来を見つめる

これはスタートアップでない企業全般にとってとりわけ重要である。実際、多くの企業が急速に変化する社会についていけていない。

スタートアップや起業家精神を持った企業が持っているような社会に柔軟に対応していく能力を身につけるには、あなたのチームに今後を見据える力が必要であり、それが不確実なことだらけの未来に進んでいく時の助けとなる。

また、明確な結果を出すためのプロセスにおいて、曖昧な計画と不十分な情報に頼っていた企業文化を変えることができる。

これらを元に、あなたはブレークスルーポイントとなる新たなチャンスを得ることができるだろう。

5.活動的で前向きなカルチャー作り

Deloitte社の調査によると、イノベーティブな人々は携帯電話を毎日80億回以上チェックしていると言われている。だが、彼らの生産性は下がっておらず、むしろ少し上がっているのだ。

この結果から何がわかるかというと、「従業員にとって、生産的で有意義な心地よい空間とカルチャーをデザインすること」がイノベーションを生み出すということだ。

デザイン思考はどんな段階であってもあなたのチーム編成を助けてくれる。したがって、イノベーティブな戦略に基づいた組織の文化は従業員にとっても大きなインパクトを与えるだろう。

世界は、いつでも好きな時に好きな価格でものを得ることができる

- アイドリス・モーティー Idea Couture CEO

6.組織の中心を従業員に移行する

デザイン思考は、組織の中心を従業員にする手段である。今年のDeloitte社の調査において、人事部が一番高い価値を置かれている企業の回答では、人事が同僚よりもほぼ5倍以上の割合でデザイン思考を使う傾向があるという結果が出ている。

デザイン思考は、従業員の行動や期待値、価値、モチベーションやニーズを測ることにも役立つ。

採用においてデザイン思考を用いることは、人事担当者がただの「単純タスクをこなすスタッフ」から「体験の設計者」にもなり、企業にとって素晴らしい転換をもたらすだろう。

7.リスクを減らす

あなたがリスクを恐れていなかったとしても、デザイン思考は失敗の可能性を小さくしてくれる。プロダクトやサービス開発に障壁はつきものだろう。

開発過程において、技術や市場、競合、ユーザー、そしてサプライチェーンのような要素を関連付けて考えてあなたの組織をデザインすることは、新たな試みへのリスクを軽減させ、R&Dにおける投資利益率をあげる。

(参考までに:Strategyzerの創業者であるアレックス・オスタワルダーは、彼の企業でどうリスクテイクをしているかについて、「私たちは、R&D部門の予算の多くを新たな価値を生み出す事業・ビジネスモデル開発に割くよう促進している。」と言及した。)

8.意味づけをする

デザインプロセスにおいて、意味づけをすることはもっとも時間を使い、多様な議論を生み出す。この段階は問題の背景を認識し、ユーザーについてどんな理解をしているのか定義づける時間である。

これはあなたが今まで得てきた知識を有意義なものにし、ユーザーとチーム間で計り知れない価値のある共感を生み出す。情報を精査することは意味づけを可能にするとともに実行可能な問題を明確にし、このプロセスの中で強力な洞察をもたらす。

良い視点 (POV) ー「あなたが取り組んでいる問題への解決に向けて明確な意思表示をすること」は問題の本質へと焦点を当て、あなたのチームを刺激する。それはまた並行して意思決定を促し、強い文化を作ることになる。

ニーズを理解することは、デザインにおいてもっとも重要なことだ。

- チャールズ・イームズ デザイナー

9.企業のクリエイティビティレベルを上げる

アイドリスは、「事実上のデザインマネジメントは、創造的なマネージャーの邪魔をするが、間違った決断や無駄なリスクをとることを避けるよう強く主張する。」と指摘している。

デザイン思考教育は、よりやりがいのある経験をもたらし、一歩踏み出すことを奨励し、チームのメンバーと本音で議論できる開放的な雰囲気を作ることを可能にする。

これがあなたのチームを感情から惹きつけ、強固な「インスレピナリゼーション」と「センシビリティ」を生み出すのだ。

10.直感を戦略的にマネジメントプロセスに利用する

世界はより複雑になり、私たちの存在はより小さなものになっている。私たちは、変化の絶えない21世紀において、新たな経営方法を認識する必要がある。デザイン思考は、組織をクリエイティブにし、他の企業が真似できないような優位性を持つプロダクトを作ることを可能にする。

その実現のために、あなたは直感に従わなければならない。アイドリスは、組織理論学者のジェームズ・マーチとリチャード・サイアートの著書である「企業行動論(A Behavioral Theory of the Firm)」の中の一節を紹介している。「直感は真実であり、記憶は敵であり、経験は理論であり、自己は仮説である」と。

あなたの直感を戦略的にマネジメントプロセスに利用することで、あなたのチームを持続的にイノベーティブにしてくれる。

まとめ: 革新的なサービスは革新的な組織づくりから

今回は組織マネジメントにおけるデザイン思考の応用方法を紹介した。

しかし、これから先デザイン思考はプロダクト開発だけでなくあなたの生活にも今後応用できるだろう。デザイン思考をあなたの組織においてのプロダクト開発に利用するためには、強固な企業文化を築き上げる必要がある。この思考方法は、あなたにイノベーティブな視点とリスクをとることを恐れないマインドを教えてくれる。

目まぐるしい変化を遂げる世界で、予測不可能な課題に取り組むには、あなたは自分のチームをよく観察して、分野にとらわれないアイデアを大事にすることが必要である。あなたの周りを見たり聞いたりして得た情報を総合的に扱うことで分析的かつ感情的な思考方法を手に入れることができるだろう。