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【インタビュー】ケイト・スペード女性社長が語る「成長のカギ」とは?(前編)

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2009年からケイト・スペード ジャパン社長を務める柳澤綾子さん。多くの顧客に愛されるファッションブランドとして成長を続ける同社で手腕を振るう柳澤さんは、ファッション業界でも注目を集める女性リーダーの筆頭格。今回は、ケイト・スペード ジャパンがどのように成長を遂げてきたのか、また柳澤さんのキャリアパスについてお話を伺います。

日本上陸20年。ケイト・スペード ジャパンの軌跡とは?

−まずはケイト・スペード ジャパン社についてお聞きしたいと思います。従業員数や店舗数は?

従業員は524名です。本部にはアルバイト、契約社員、派遣社員含め115名が勤務しています。店舗数は、全国88店舗で展開しています。

−「ケイト・スペード ニューヨーク(以下、ケイト・スペード)」が日本に来た時は、サンエーインターナショナルでの取り扱いからスタートですよね。

そうです。1996年にケイト・スペードが日本に来て今年でちょうど20年前になります。サンエーインターナショナルの中のケイト・スペード事業部という形から始まり、2009年にジョイントベンチャーになり、2011年の末に100%本国の子会社になったという経緯があります。

−柳澤さんが入社された頃のケイト・スペード事業部は、何名ぐらいだったのでしょうか?

私がケイト・スペードに携わったのは99年でしたが、当時は6名ぐらいです。アメリカもまだ20名ぐらいしかいなかった時で、創業者であるケイトとアンディ・スペードがいる、本当に小さい小さい会社だったのですね。ただ会社としてはこの「ケイト・スペード」というブランドを、100年も200年も残るブランドにしたいという強い思いを持っていて、より進化していくことになります。

そこからUSの本部はニーマンマーカスが100%親会社になったり、自分たちで買い戻したりといろんな変遷がありました。その後2007年にリズ・クレイボーンに買収され、ケイトとアンディが退社し、現在のCEO クレッグ・リーヴィットやチーフクリエイティブオフィサーのデボラ・ロイドらが携わり、そこからビジネスが大きく成長し、2014年にリズ・クレイボーンから「kate spade and company」となったのです。

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kate spade japan Co., Ltd.オフィス内観)

−それに伴いジャパン社も大きく成長してきたのですね。6名から現在524名、 店舗も約10店舗から88店舗と、成長は著しいですね。

特に2009年にジョイントベンチャーになり2012年に100%子会社になったのですが、その頃から成長が著しく、店舗数もですが、お客様のデータベースも増えてきて、オンラインもかなり急速に伸びていることも成長のひとつの理由だと思います。

−今扱っているカテゴリーのシェアとは?

全世界では30カテゴリーほど展開していますが、日本ではそのうちの20カテゴリーを扱っています。たとえばホームコレクションなどはまだ展開していないのですが、ハンドバッグとアクセサリーを中心に半分ぐらいのシェアがあります。その次はレディトゥウェアですね。

失敗を恐れない、柳澤さん流の仕事への取り組み方。

−柳澤さんはMDアシスタントとしてキャリアをスタートしたんですよね?

MDアシスタントといっても6人ほどしかいなかったので、はっきりいって何でもやっていました。営業、VMD、MD、さらに事業統括などを経験し、2006年事業部長となり、2009年から現職になります。

−転職によってキャリアアップする方が多い中、 柳澤さんは一社でキャリアアップされています。なかなかないケースだと思うのですが。

確かに少ないケースかもしれません。ただ、私の場合はUSの方の会社が買収されたり変わったり、私自身も事業部長になった翌年からジョイントベンチャーを創るための交渉に入ったり、100%子会社になってすぐに銀座店をオープンしたりと、これまでのキャリアの中で何もなかった一年間ってなかったのじゃないかと思うくらい(笑)、いろんな経験をしてきたと思います。退職はしていませんが、会社自体がジョイントベンチャーになったり、100%外資系企業になったり、それを考えると、一つの会社にいながらもすごくリッチな経験をさせてもらっているなと感じます。

−サンエーインターナショナルは日本の会社ですが、柳澤さんは、元々海外で育ったというバックグラウンドをお持ちで、そういう方が日本の会社でキャリアを積まれたことも珍しいのではないでしょうか。

入社したのは日本の会社ですが、私はケイト・スペード事業部で、本国とのやり取りが非常に多かったんですね。アメリカの本社は今でも従業員の約90%が女性です。当時も、今も沢山の女性ががママとして働いていて、「今から息子迎えに行って、サッカーの練習に連れて行ってくるわ」というように、子どもの用事をすませてからまた戻ってくるという働き方をしている女性をたくさん見てきました。そういうメンターというか、自分のロールモデルがいたということは私にとってとてもプラスに働いたと思います。

それから私の上司は男性でしたけどすごく珍重してくれたということはありますね 。 私みたいな人材を今後、次の世代にしなきゃいけないと、色々アドバイスをくれました。2人目の上司はご自身の奥様もお仕事をされていて、お子さんを保育園に送っていく役割を担っていました。だから、結婚して子どもを産んで育てていくことが大変なことを理解してくれました。ですから、私も働く女性としてキャリアを築くことが自然に面白いと思えたのです。これから、女性が活躍していくためにも、安定した環境を選ぶことも一つの選択肢ではないでしょうか。

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(kate spade new york 銀座店VIPルーム)

−比較的今は容易に転職ができてしまう時代ですが、一つのキャリアで実績を積んでこういう責任のあるポジションにつけることは素晴らしいことですよね。

最近はグリッドという言葉もよく使われていますよね。 グリッド(ぐっと握る)して、情熱をもって粘り強く忍耐力を持って目の前のことを続けていくという。私自身、忍耐だと思ってやってきたわけではないですが。

「チャンスが降ってきたら絶対に取りに行く」。失敗してもリカバーできればいい。

−20〜30代の頃はどんなことを意識して仕事に打ち込んできたのでしょうか?

チャンスは自分の来てほしいタイミングに振ってくるとは限りません。チャンスが降ってきた時には取りに行こうというのは常に思っていましたね。失敗することに対してそんなに恐怖心がないというか、何も捨てるものもないし、失敗したからといって、後でもう一回リカバーできればいいやっていう考え方が強いです。だからこのことは社員にも常に言っています。というのも今の私を作ってきたのはそういう精神ですし、今でもそれは気を付けています。それがなくなったら私、つまらなくなっちゃうかも(笑)って思うんです。

そのことを実践してもらうために、組織をフラットにしていますし、制度では社員だけでなく、派遣社員、契約社員、アルバイト社員など雇用形態を問わず誰にも参加できる公募制度を社内に設けています。

−正社員だけでなく、非正規雇用の方々にもチャンスがあるということなのですね。

私たちは社内公募制度と呼んでいますけど、どの部署にも才能が眠っているケースがあります。私たちのブランドを理解してくれて、ブランドを愛してくれていて、この会社が好きっていう人に、その才能を最大に活かせる場所を提供できたらすごくいいなと思うのです。あるポジションが空いたら手を挙げて面接受けて、英語などいろんなスキルを自分で磨いて、やってみるだけやってみようと。失敗したっていいのだからどんどんチャレンジしてもらっています。たとえば店舗スタッフが他の部署に異動したり、MDやVMD、セールス マネージャーや、イーコマース、HRといったポジションも、ほかの部署を経験してから現在の位置に異動してきた人たちも少なくありません。

−社内公募によって様々な可能性にチャレンジできるのですね。

専門的スキルが必要とされるポジションもありますが、 別にそれが絶対ではなく、きちんと試験、面接を受けて、本当にやりたいという気持ちを受け止めるというのが私たちの会社のカルチャーとしてあります。ですから赴任というケースももちろんあります。

−販売職の悩みとして結婚、出産、キャリアアップなどが挙げられますが、御社では色々なチャンスがあるのでモチベーションにもなりますね。

販売を極めることも一つのキャリアだと思っていて、スーパースペシャルな販売員を目指すということも一つですし、店長になりキャリアを積むことも選択肢の一つです。キャリアシフトを考えた結果、マネジメントがすごく好きで人のことに携わりたいと例えばHRを目指すのであれば、別の会社からスタートするよりも、やはり社内にいたほうがアドバンテージです。経営側としては、いかに才能を見つけ、従業員にチャンスを提供できるかが大事だと思っています。

後編に続く>>

「ケイト・スペード」というブランドにずっと携わりながら、さまざまな経営体制を経験されてきた柳澤さん。こうした経験をふまえたことで、現在の働く環境をよりよくするための制度を積極的に取り入れているのですね。後編でも、ケイト・スペード ジャパンの魅力についてさらにお話を伺います。