京都精華大学ファッションコース講師 / 批評家

【ゆるふわ東コレ日記4-3】──継続することの大切さ

【ゆるふわ東コレ日記4-3】──継続することの大切さの画像

「とんぼせんせい」というイラストレーターをご存知でしょうか。彼のコンセプトは「三本の線を引くだけでどこにでも現れる」。三本の線で描かれた目と口を特徴とし、その線のみで様々なイメージをハッキングしてしまう作家です。シンプルながら一度見たら忘れられない作風ですが、おそらくその活動の最初期は、冗談のような作品だと思われがちだったのではないかと想像されます。しかし、その作風を粘り強く続けることでいまや売れっ子のイラストレーターとなっています。そのとんぼせんせいのことを思い出したのは東コレ2日目の「キディル(KIDILL)」のショーです。「いやいや、テイストも何もかも全然違うじゃん」と思われるかもしれませんが、僕が考えたのは「継続性」についてです。

今シーズンのKIDILLの服はどんな人が着ていそうなのか想像もできますし、マーケットとしての需要はあるのだと思います。しかし、HIROがKIDILLへと名前を変えてから3シーズンくらいは、もう少し大人に向けたストリートウェアが提案されていたように思います。テイストが変わったことについての理由はわかりませんが、ひょっとしたら売上があまり取れず、元々のターゲットだった世代へとシフトし直したのかもしれません。ビジネスをやる以上、「いま」売れることは重要ですし、それ自体は間違ったことではありません。でも、今、あるいは今後デザイナーの提案したい服がもし最初の数シーズンのようなものなのであれば、もう少し続けてもよいのではないかな、とも思いました。

イメージが定着するのには時間が必要です。どんなジャンルでも、新しい作風はなかなか受け入れられません。既に顧客やファンがついている場合には尚更です。とはいえ、ビジネスに成功した人のインタビューを読むと、皆口を揃えて「最初は売れなくて辛かった」というようなことを言います。しかし、そこで継続しなかったら成功することはありません。もちろん、継続してうまくいかなかった人もいるでしょう。そこでやめるか、継続するか、その判断はとても難しいと思います。

多分、このレポートでは前日に発表されたコレクションについて書くことが求められているのでしょう。けれども、現在と未来のことを考えるには、やっぱり過去は必要です。そんなことを少しばかり主張したくて、あえて一昨日のことについて書いてみました。

>> KIDILL 2017年春夏コレクション

【ゆるふわ東コレ日記】
4-1──主体と環境
4-2──主体と環境(その2)

蘆田裕史