放送局プロデューサー

服からデザインされた身体へ 予言者としてのデザイナー

服からデザインされた身体へ 予言者としてのデザイナーの画像

今回から始まったアマゾンによるデザイナー支援のイベント「アマゾン ファッション 01」に選ばれたユイマナカザト(YUIMA NAKAZATO)のインスタレーションを見た。

服自体は6月のパリオートクチュールコレクションで発表され、評判を呼んだものだが、1体増えた上にスタイリングも変えたため、同じルックは一つもないという。

最も違うのは、演出の形式だ。モデルが歩く演出ではなく、服にも使われているホログラム素材を張った半円柱状のボックスの中にモデルが立つ型式だ。モデルの姿がホログラムに反射され、幾重にも重なる。SF映画のエイリアンやアンドロイドが誕生するシーンを彷彿とさせる光景だ。

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今回のコレクションのインスピレーション源となったのは、アイスランドの地球外の惑星のような光景。演出の形式も、デザイナーの中里が氷の洞窟に入った時に、光の反射で自分の身体も不思議な色に染まったという体験を、見る人にも体感してもらいたいと考えた。こうした演出も相まって、画像で見ていたパリコレよりもさらにフューチャリスティックな印象が強まった。


服には、細胞をイメージしたという無数のホログラムのパーツが取り付けられ、その上にさらに3Dプリンターで製作された人工の腕がつけられている。中里は、「将来、デザインされた身体の上に、細胞のような服が作られるようになるかもしれない。そんな時代に向けてデザインしている。」という。

この話を聞いて、今週虎ノ門ヒルズで開催されていた「イノベーションシティフォーラム」で聞いたMITメディアラボのネリ・オックスマン准教授のプレゼンテーションを思い出した。

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デザインを専門とするオックスマン准教授は、パリオートクチュールコレクションで3Dプリンターなどを駆使した服を発表しているイリス・ヴァン・ヘルペンの協業者。最近ではビヨークのVR用ライフマスクをデザインしたことでも知られる。

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彼女の最新の作品の一つが「Mushtari」。TEDでもこの作品のことが触れられているのでご存知の方もいると思うが、合成生物学、材料生態学などの技術を使って開発された「身体上で光合成する服」だ。

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そのコンセプトは 惑星間航海の為の生命維持装置となる服。細い管が腸のように絡み合ってできている服だ。3Dプリンターで作られた管の中には、シアノバクテリアと大腸菌の2種類の微生物がいる。バクテリアが光合成で光を糖に変え、大腸菌が糖を消費することで生物燃料を生成するというメカニズムだ。彼女はこの他にも生体材料を使った様々な服を開発している。

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プレゼンの最後をオックスマン准教授はこう締めくくった。「デザイナーは今革命の真っただ中にいる。デザインと科学を架橋することができるのもデザイナーだ。デザイナーが次の世の中の占い師(予言者)になるだろう。」

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今回のユイマナカザトのインスタレーションは、「予言者としてのデザイナー」というオックスマン准教授の言葉を思い起こさせるものだった。果たしてデザイナーが身体そのものをデザインする時代は来るのか?

パリでの発表後、中里のもとには、建築、テクノロジーなどの異分野から協業の話が相次いでいるという。次はどのような未来を見せてくれるのだろうか?今後の展開が楽しみだ。

>>YUIMA NAKAZATO 2016-17年春夏コレクション

【放送局プロデューサー 小川徹の東コレ取材日記】
①新生ファッションウィークから01は起こるのか?
②2017SS東コレ取材日記② エモーショナルな2つのショー「キディル」と「ティート」

小川徹