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「どのブランドが一番良かったですか?」の答え

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東京のファッション・ウィークも後半戦に入った。そうなると、多くの人から「どのブランドが一番良かったですか?」と話を振られる。単刀直入に言うと、10月21日(金)の日程が終了した時点で、印象に残っているショーは「ミューラル(MURRAL)」だ。ファッション・ウィークの公式スケジュールに載るのは初めてで、いわゆるメジャーなブランドではない。どちらかと言えば、アンダーグラウンドなイメージを持っていたが、その浅はかなイメージは覆された。

午前中の渋谷ヒカリエという環境の中で見せた、陰鬱な「ダークファンタジー」なアイテム群。爽やかな陽光が射す屋外とは対照的に、不安定でダークな世界観を創出した。けだるいモデルに着用させたのは、ヴィンテージ調の素材を使ったシャツやドレス、刺繍を駆使したスカジャンなど、意外にもリアルに身につけられるもの。一部で、硬いエナメル素材や型押しレザーのトップスもあったが、うまく禁欲的なアクセントに効かせている。派手な演出もなく、観客の近くでショーピースを見せる形式にも好感を持った。

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デビューは2010年だが、もっと早くショーを行うべきだった。また、オフスケジュールでショーを開催したこともあるが、アピールは限定的だったのだろう。さらに知名度を上げるため、何らかの発信を継続してほしいとも思う。同ブランドの村松祐輔、関口愛弓デザイナーを持ち上げるつもりはないが、刺繍やレース、フリルを使ったアイテムでクールなバランスを構築していた。筆者の隣に座っていた女性からは「かわいい」と声が挙がり、続けて「(ミューラルは)どこで売っているの?」とブランド関係者に聞いていた。その一方で、ジャーナリストが好みそうなコレクションでもあり、バイヤー目線で見ると、ディテールを多用したアイテムの価格設定、サイズバリエーション、生産体制など、今後の展示会でチェックする項目も多くなりそうだ。

z_murral_2017ss_008.jpg>>MURRAL 2017年春夏コレクション

今年から三越伊勢丹グループで別注ラインの販売をスタート。有力百貨店と取引を行うことで、「ミューラル」が消費者とどう向き合うか楽しみでもある。ちなみに前述した女性は「かわいい」と言っていたが、筆者は「かわいい」とは思わない。ガールズカルチャーの表舞台に登場するブランドとは違い、その裏側の一隅を照らすコレクションに見える。このオリジナル性を堅持してほしい。

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市川重人