放送局プロデューサー

都市を変えるファッションの力

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ファッションウィークが終わった。毎シーズン感じることだが、ホッとした気分の一方、名残り惜しい気持ちも大きい。

東コレ常連ブランドが、発表の場を海外に移したり、発表時期を前倒しする中、内容が危惧されていた今回のファッションウィークだったが、終わってみれば、新たな魅力的なブランドとの出会いもあり、日本のブランドの層の厚さを実感した。さらに、継続して参加しているブランドが、ガラリと作風を変え、世界のファッションと真摯に向き合い、勝負しようとしている姿にも感銘を覚えた。その一方で、公式スケジュールに載っているのに、その意味がよくわからないイベントもあり、運営の難しさも露呈した。

デザイナーたちの言葉を聞いていて、一番感じたのは、イライラしていたり、憂鬱な気分だったり、怒っていたり、するデザイナーが多かったことだ。服が売れないこと、若い人たちのファッションの関心への低下など、ファッションを取り巻く状況は厳しい。さらに、海外で始まっているSee Now Buy Nowの動きや、世界の主要コレクションの中で最も遅い開催時期の問題など、ファッションウィーク自体の変革期がやってきているのは、デザイナーたちの言葉からも感じ取ることができた。

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デザイナーたちの作り出す服と彼らが発する言葉以外に、取材で楽しみにしていることがある。それは、東京の街を普段とは違う視点から見ることができることだ。渋谷ヒカリエ、表参道ヒルズという2つのメイン会場だけでなく、デザイナーたちは、自分の表現したい世界観にあった様々な場所を発表の場とする。今回もライブハウス、教会、地下駐車場、公園、路上など、様々な場所が会場に選ばれ、足を運ぶ度に、こんなところがあったのかという発見があったり、見慣れた場所に最先端のファッションが出現することで、街が魅力的に変化する驚きを感じたりした。

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最も印象的だったのは、すでに多くの人が語っているが、10月19日にストリートファッションの聖地、原宿の通称とんちゃん通りで開催されたコーシェ(KOCHÉ)のショーだった。

ストリートスタイルフォトグラファーのシトウレイが、原宿のストリートからキャスティングしたモデルたちが、手をかけて作られた豪華な"ストリートウェア"を着て、セレクトショップから飲み屋まで雑多な店が立ち並ぶ細い路上を歩く姿はとてもカッコよかった。パリと東京のストリートをミックスしたかったと語るデザイナーのクリステル・コーシェの意図が見事に伝わってきた。

特に40人以上のモデルたちがランタンを持ち行進するエンディングは、優れた映画や演劇を思い起こさせる力強いもので、優れたファッションと街の持つ力の相乗効果を実感した。

>>KOCHÉ 2017年春夏コレクション

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最終日の10月22日には、再開発のため閉鎖が予定されている渋谷のみやした公園でファイナルファッションショーとして、渋谷の街並みや山の手線を背景に4つのショーが開催された。

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これまで東京ニューエイジとしてグループで発表してきたアキコアオキ(AKIKOAOKI)とケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)の2つのブランドは、それぞれこれまでと作風を変え、より大人な印象になった。独り立ちして、更に成長するという決意が感じられたショーだった。

>>AKIKOAOKI 2017年春夏コレクション
>>KEISUKEYOSHIDA 2017年春夏コレクション

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二人の師匠にあたる坂部三樹郎のミキオサカベ(MIKIOSAKABE)も先々シーズンから見せ始めたヨーロッパのファッションとの真っ向勝負の路線を発展させ、「時代感がないのが時代感」という坂部がたどり着いた実感に基づき、70年代から90年代までの様々な年代のフォルムを混ぜ合せたコレクションを展開した。

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ショーが始まるとクレーン車に積まれたライトが点灯し、公園がランウェイに変貌する。同じみやした公園で行われたショーとしては、坂部と共にファッション学校「ここのがっこう」を主宰する山縣良和が、4年前に行った「リトゥンアフターワーズ」のショー以来の興奮を味わった。

>> MIKIO SAKABE2017年春夏コレクション

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今回のファッションウィーク期間中は、4年後の東京五輪に向けての文化プログラムが本格的に始動する時期にあたり、様々なイベントが行われていた。

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10月20日、六本木ヒルズで、記者発表とキックオフイベントが開催されたカルチャービジョンジャパンもその一つ。これまで別々に動いていた様々な分野のクリエーターと産官学がタッグを組み、日本の文化を発展させていこうという団体だ。具体的には、東京五輪に向けて20万件も実施される文化プログラムの司令塔となり、人選や内容作りの手助けをしていくという。今年のリオ五輪の閉会式でのハンドオーバーセレモニーもこの団体のネットワークがあって実現したという。

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資料を見るとファッションも一分野として位置づけられている。会場には、各分野のクリエーターやインフルエンサーが集まり、一つの大きな流れが動き出そうとしているのを感じた。

さすがに1964年の東京五輪の時期のことはわからないが、今の状況は、1980年代の状況とも近いように思う。バブル景気の中で、東京の街は再開発によって大きく変貌を遂げ、評価はわかれるところだが、音楽、アート、演劇、ファッションなど様々な文化も花開いた。東京コレクションが始まったのもちょうど1985年だ。ファッションウィークが開催されている渋谷の街はその中心の一つとして、大きく発展した。

そして、今渋谷の街は再び大きく変貌しようとしている。渋谷駅の再開発はもとより、区役所や、東急、西武、パルコなどの大型商業施設も建て替えをする。その中でどんな文化を発信していくのかも議論が始まりつつある。

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ファッションウィークは一義的にはビジネスの場、優れたファッションをビジネスにつなげていく場だ。しかし、ファッションのもたらす力、発信されるクリエイティビティが、都市にもたらすインパクトは、まだまだ捨てたものではない。

メインスポンサーも変わり、転換期を迎えた今回のファッションウィーク期間中、毎日訪れるヒカリエから見える渋谷駅の工事の風景を眺めながらそんなことを考えた。

【放送局プロデューサー 小川徹の東コレ取材日記】
①新生ファッションウィークから01は起こるのか?
②2017SS東コレ取材日記② エモーショナルな2つのショー「キディル」と「ティート」
③服からデザインされた身体へ 予言者としてのデザイナー

小川徹