eクーポン、行き過ぎたパーソナライゼーションは不快?

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■大手チェーンストアのデジタルクーポンで集客に貢献しているのがターゲットのカートウィールだ。カートウィールはクーポンのような値引きを行うアプリで、リアル店舗のみ使用可能だ。アプリをダウンロードしたユーザーはフェイスブックのアカウントもしくはターゲットのアカウントから登録、ターゲットが提供する500~700アイテムのディスカウントを受ける。多くの商品が「アーチャーファーム(Archer Farms)」「アップ&アップ(Up & Up)」などターゲットのプライベートブランド(PB)商品で、多くが5%~10%の値引きとなる。昨年に引き続き今年の年末商戦でも毎日1アイテムの玩具が50%オフとなる販促も行う。カートウィールのような店への集客を目的としたクーポンを含めて、デジタル・クーポンは拡大の一途となっている。調査会社カンターメディアによると、2016年上半期のeクーポン数は前年に比べて23.4%増加した。またクーポン価値となるフェイスバリューも21.2%の増加となっている。eクーポンのユーザー数も二桁成長となっており、調査会社eマーケッターのデータでは昨年のクーポン利用者は9,260万人に上り、今年は1億人を突破すると見込んでいる。また、イギリスの調査会社ジュニパーリサーチ社は、電子クーポンの発行数は今後5年間で60%増加し、今年の2,240億から2021年には3620億になるだろうと報告している。eクーポンが増加する理由として、大手チェーンストアを中心に、個々人に向けて的を絞ってカスタマイズできるパーソナライゼーションが向上することが挙げられている。ただ一方で行き過ぎたパーソナライゼーションによる、ビーコン利用のクーポンプッシュ通知はプライバシーの問題にも抵触する。
大手チェーンなど小売店はお客の趣味・嗜好に合わせてeクーポンを使わせたいと考える。しかし今のところはまだ「パーソナライゼーションの塩梅」がつかめていないようだ。

トップ画像:ターゲットのカートウィール・アプリ。カートウィールはクーポンのような値引きを行うアプリで、リアル店舗のみ使用可能だ。大手チェーンストアのeクーポン集客で成功事例となっている。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。アマゾンで書籍か何かを閲覧すると、数日後にメールで「お客様が最近チェックされた商品からおすすめ商品をピックアップ」が通知されます。「そういえばチェックしたな」とリマインドされるのはいいのですが、微妙にイラっと感じることがあります。当たり前ですが、アマゾンで後藤がチェックしたデータが残るからです。アマゾンでは利用者に不快さを感じさせないように「チェックされた商品のなかでおすすめ商品」だけ送っているのです。「おすすめ商品」とは購入履歴から分析して後藤が購入しそうな商品を選んでいるのでしょう。したがってあまり不快に感じません。たまにクライアントから、米国内のビーコン利用について聞かれることがあります。店内に置いたビーコンから近くにいる客に情報発信し、クーポンなどをプッシュ通知ができる仕組みです。数センチからの小範囲での配信も可能となるため、ピンポイントでユーザーの行動のトラッキング等もできるようになります。

⇒ただビーコンによる集客事例はそれほど多くはありません。理由は幾つかりますが、一つはスマートフォンのブルーツースをオンにしている人が多くないことが挙げられます。ブルーツースをオンにするとバッテリー消費が多くなる上に、オンにするメリットがそれほどないからです。そもそも利用者が少ないから、店でのビーコン利用も広がらないのです。それにプライバシーの問題は、根が深いと感じています。場合によってはビーコン利用の情報発信もうざいと感じることもあるでしょう。例えばAの商品の近くを通ったからといって、A商品のeクーポンを通知してもお客に理由が分からず不審がることも考えられます。したがって効果的なパーソナライゼーションができても、その店とかなり信頼関係ができあがっているようなお客でないと難しいと考えられます。それがスタッフによるマニュアル対応とデジタル対応との違いです。顔見知りのスタッフから名前で呼ばれるのは嬉しいですが、デジタルなパーソナライゼーション対応では不快です。
クーポンもスマホにプッシュのデジタルではなく、人目につかないように袖の下からプッシュしてくれるアナログだとありがたいですが...それは無理か(笑)。

後藤文俊