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【インタビュー】ブランド「THREE(スリー)」が愛される理由

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2009年、スキンケアとメイクアップのブランドとしてスタートしたTHREE。自然に敬意を表した誠実なプロダクト、そしてスタイリッシュなデザインやクリエイティブな発想力で、多くの人を魅了している。THREEの魅力は、メイクアップ商品はもちろんのこと、クレンジングオイルやフット&レッグトリートメントオイル、オメガ3脂肪酸をはじめ機能性に着目した自然由来のサプリメントなど、時代の少し先を行く商品アイデアにある。真摯に製造されたプロダクトはリリースのたびに大ヒットを記録し、そのたびに私たちはまたTHREEの虜になっていく。彼らが私たちの心をさらに鷲掴みにしたのが、2013年の10月にオープンした青山店だ。コスメ販売・スパ・ダイニングを兼ね備えたこの革新的なショップは爆発的な人気を博し、追随するショップも多くみられた。THREE青山店が、なぜこんなにも多くの人のインスピレーションとなったのか。それは、これまでのビューティショップの概念を覆す、自由な発想に基づいていたからだろう。"どう見られるかではなく、何が自分に心地よいのかを自分なりのペースと方法で見つけ、美しく輝いてほしい"というブランドの思いを裏付けるように、外見的な化粧だけではなく、良いものを食し、心地よくケアすることで、内面から美しくなるという"包括的(ホリスティック)な美しさの捉え方"を、THREEはいち早く提案してきた。

"自由な発想で常に新しい価値観と概念を生み出すブランドでありたい"THREEのフィロソフィを形にするためのヴィジョンの礎を築いたのは、ディレクターのRIE OMOTOの存在が大きい。激しくも情熱的な彼女の人生から導き出されたアイデアの数々がブランドに力強さと美しい色を加えている。デヴィッド・ボウイやセックス・ピストルズに魅了され19歳でロンドンへ留学したRIEは「その時『i-D』を知って、ファッション・カルチャーの世界に感化されて、メイクアップ・アーティストという存在を強く意識した」と当時を振り返る。帰国後、岡山で自身の美容院を立ち上げて数年後、メイクアップ・アーティストのLINDA CANTELLO(リンダ・カンテロ)のメイクアップ・セミナーに参加。リンダに「仕事をしたいならパリに来たら?」との誘いに即決、渡仏翌日からミラノコレクションに同行した。「とにかく、やるっきゃないって感じ」で、3年間パリでキャリアを積み、その後NYへ渡った。90年代を代表するトップクリエイターたちと肩を並べて世界中のファッション誌で活躍していた彼女は、現在も第一線でその世界を広げているトップメイクアップ・アーティストだ。めまぐるしくも華やかで、本物だけが生き残れる世界。魑魅魍魎にまみれ一輪の花を咲かせる彼女に、3周年のアニバーサリーパーティを控えたTHREE青山店にて話を聞いた。

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THREE青山店は食やスパなど、美に対する多角的なアプローチを提案していますが、その世界観はどのように生まれたんでしょう?

私たちは、化粧品屋としてプロダクトを作って提供しているわけですけど、私たちのミッションはそれだけではないと思っています。スパでは精油を使って内側から美しくなることを提供しています。サプリメントなども取り扱っていますが、それは食べるものはとても重要だと思うからです。このREVIVE KITCHEN(リヴァイヴ:再生の意)のコンセプトは「食べてもらって、綺麗になってもらう」ということ。ライフスタイルもそう。暮らしも含めて、綺麗に生きられる提案のひとつをできたらいいなと思っています。

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ビューティとライフスタイルを紐付けた提案にいち早く着眼したんですね。RIEさん自身は、いつからオーガニックや自然なものごとを意識した生活をされているのでしょうか?

NYに住むようになって変わりました。もう20年くらいになりますね。まず健康でいるということ、なぜかというと旅が多いんですね。ロケとかで、とんでもないところに行くことがあるんです。ジャングル行ったり、砂漠に行ったり。疲れて到着してものんびり休む間もなく、朝早くから撮影がある。体力勝負なんですよね。そういったことから、食べるものはもちろん、サプリメントやワークアウト、体を鍛えることが必須になりました。ヨガはワークアウトに加えて瞑想など、精神を鍛えることにもつながっているし、デトックスをする人たちが20年前にまわりに多かったので、いい刺激を受けたんです。今はデトックス方法やサプリメント、ワークアウトもさまざまなものがあって、楽しめながら綺麗になれていいですよね。

THREEの商品は時代のニーズに合っていることがその素晴らしさだと思います。中身はもちろんですが、デザインにもこだわりが感じられます。

そうですね、形のないものをつくるということは戦いですね。ブレないでいたいと思うし、どんどん進化していかなきゃいけない。スキンケアはオーガニック等、素材にこだわりたいので、当時の"白くて丸い"ふんわりとしたオーガニックのイメージから、新しい価値観を作り出そうと考えました。私は自然や地球のことにとても興味があって、こだわっていたんですけど、結構ロックな人間なので、他人からは違和感があったのかもしれないですね。もともと、私はオーガニックでもすごくモードでいればいいっていつも思っていたので、それを形にしていきました。オーガニックでも、角ばったスリークなボトルに入っているその掛け合わせが面白いと思っています。

最前線で活躍するメイクアップ・アーティストでありつつ、ブランドのディレクターもされていますね。仕事とクリエイティブを両立させるのは難しくないですか?

私の性格上、「やっぱり極端なことが好き」なんですね。陰と陽なんですけど。そういうもので、同じでないことをやることが好きなんです。毎日9時に会社行って5時までいるのは1ヶ月もたないかも(笑)。普通の社会じゃ生きていけないだろうなって思います。ニューヨークでやっているメイクアップ・アーティストの仕事は、洋服なりのコンセプトに沿ってモデルを綺麗にして作品を作るわけですよね。そこにフォトグラファーがカシャとシャッターを押して全てが収まる。さまざまな人の力がそこに入っていくわけです。モデルを変えて"イメージ"をつくるんですよね。一方で私がTHREEでやっているのは、"リアルウーマンに日常生活のなかで綺麗になってもらう"ということで、考え方が異なりますね。メイクにしても例えば「今年はパープルが流行る」と知って、それをランウェイや撮影で使えばとてもオシャレで綺麗だし、洋服にも合うんですけど、毎日の生活のなかでパープルのリップを気軽に付けられることってないじゃないですか。顔色も悪くなるし、もう10代じゃないから、なかなかできない。そういう"私たちが綺麗に"っていうことをTHREEではやりたいんです。リアルウーマンが時間のない中で、ほんの何分間で簡単に綺麗になるためのプロダクトを作っているんですよね。メイクアップの仕事は、3時間かけてメイクしても5分の撮影が終われば終わり。それはそれで良いんです。それはまた違う物であり、片方でやっていることをもう片方でいかせる。私にはそのバランスがすごくいいなと思っています。

メイクアップ・アーティストになったきっかけがロンドンで手にした『i-D』だとか?

岡山出身なんですけど、当時は美容師をやっていたんです。メイクに興味はあったけれど、それがちゃんと職業になるというのを知らないまま、ロンドンに行きました。『i-D』が大好きでいつも見ていて、メイクアップアーティストという仕事があるんだというのはそのとき、初めて意識しました。今はニューヨークに住んでいますが、一番好きな街はやっぱりロンドンですね。なぜかって責任感や現実味、しがらみが増えてくるとその街をピュアに見られなくなるじゃないですか。私からすると「大都会の東京に住んで素敵だなあ」って思います。でも東京に住んでいる人は「ニューヨークに住んで素敵だな」って思いますよね。それは、そこでの生活がその人の現実になってないからだと思います。私はロンドンにいたときに、仕事を一生懸命にしようとか全然考えてなくて、大好きな音楽を聴くためにとにかくいろんなギグやクラブに行ったり、当時はパンクの兄ちゃんがまだいっぱいいたので、毎日街を歩くことですごい刺激を受けました。お金はなくても苦にならない時ってあるじゃないですか。そういう時期にロンドンにいたから、余計ロンドンが好きなんだろうと思います。その頃が一番なんにも考えていませんでしたね。スポンジが空の状態で、そこに水が入ってきてキュッとなった感じがします。

行動力がありますよね。リンダさんに誘われてすぐパリに飛ばれたそうですね。刺激がありましたか?

ありましたよ。ロンドンとは違う刺激ですね。パリに着いた次の日にミラノに行って、トム・フォードになったばかりのGUCCIのショーのメイクに入ったんです。97年だったかな? 今まで見ていたモデルたちが目の前にいて、もう吐きそうでした(笑)。でも「やるしかない!」みたいな。「昨日来たばっかりだからできません」なんて言えないし。「やるしかない」ですよね(笑)。

嫌なこともあったのでは?

もちろん、楽しいことばかりじゃなかったです。ロンドンではそんなに人種差別されたことはなかったんですけど、パリに行ったら「このー!」って思うこともいっぱいありましたね(笑)。パリではあまり友人もいなくて大変でしたけど、そのとき受けた刺激は計り知れません。今から思えばものすごい人と普通に仕事をしていたんだなって。だからパリは良かったんだと思います。

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さまざまな時代を経て、現在はニューヨークにお住まいですが、THREEからは1月にメンズラインが発売になります。いま、性別を超えた価値観やフェミニズムが多く語られていますが、"ジェンダーレス"についてどう考えますか?

とっても良いし、遅いと思う。メイクをしたい男性も女性らしく振舞いたくない女性も、ゲイもレズビアンも、男だけど女になってしまった人、なりたい人など本当にいろんな人がいます。「Them」と呼ばれる彼らの立場がきちんと確立するべきだと思います。ゲイの方って、自分が男で生まれて自分がゲイだって思ったときに"怖い"と思うそうです。人と違うことや、これからのこととか。それをカミングアウトするのかとか、ものすごく勇気がいることだと思います。だからニューヨークやサンフランシスコといった仲間がいるところに集まるんですね。同性の結婚も少しずつですが、ニューヨークや渋谷で認められるようになってきて、男の人がメイクをしようが、女の人が男性の格好をしようが、それはそれでもう大アリで、良いことだと思います。

日本をはじめ台湾、タイ、香港とアジアにも進出しているグローバルなTHREE。世界で戦っているRIEさんから、これからを担う若者たちへのメッセージをお願いします。

そうですね、私が言えることは「失敗を恐れるな」ということ。計画を立てるのは素晴らしいことですけど、計画を立てすぎてそれが邪魔になってそれができないこともいっぱいある。私が若いときは計画なんて立てたことありませんでした。その日、太陽がこう昇ったからこうか、みたいな。なんというか動物的な感覚ですが、人間はもともと動物なので「心の叫びを聴け!」ってことですかね。自分が本当は何をやりたいのかを感じて、失敗してもいいから行動に移す。失敗してもまた立ち上がればいいんだから。

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Credits
Text Yuka Sone
Portrait Photography Ko-ta Shouji