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【インタビュー】アーティスト カリ・ソーンヒル・デウィットと「攻殻機動隊」

【インタビュー】アーティスト カリ・ソーンヒル・デウィットと「攻殻機動隊」の画像

2017年春に公開予定のハリウッド実写版『GHOST IN THE SHELL』。その予告編プロモーションのために来日していたヴィジュアル・アーティスト、カリ・ソーンヒル・デウィットに、『攻殻機動隊』やデジタルとの付き合い方について話を訊いた。

1995年に公開された映画『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』――インターネットの黎明期にあって超先進的かつデカダンスな未来を描き、今でも根強い人気を博している。そしてその『攻殻機動隊』が2017年、ハリウッドから新たに実写映画化されるというのだ。国内での映画の予告編リリースに合わせ、オフィシャルTシャツのデザインを、カナダ生まれでロス在住のアーティスト、カリ・ソーンヒル・デウィットが担当した。フォトグラファー、グラフィックアーティスト、ファッションデザイナー、レコードレーベルの主宰など様々な顔を持つ彼は、もともと業界では知られた存在であったが数年前からカニエ・ウェストのツアーグッズをデザインして以降、一躍有名アーティストの仲間入りを果たした。40歳を過ぎて尚、SNSをこよなく愛し、精力的に活動する彼の仕事観や人との繋がり、デジタルとの関わり方を聞いてみた。

今回、オフィシャルTシャツのデザインを担当された映画『GHOST IN THE SHELL』についての印象をお聞かせください。

まだ実写化された映画は見ていないけど、アニメシリーズと漫画は全て網羅してる。90年代のクラシックな世界観が好きだね。先取りした未来と斬新な世界観が気に入ってる。

untitled-article-1479991955-body-image-1479992361.jpg本作では脳と身体が別離していて、記憶や繋がりが簡単に書き換えられてしまう世界が描かれています。これとは対極的に、あなたはコミュニティや人との人間的で温度のある密接したコミュニケーションを大切にしているように思います。

その通りだけど、誰とでも理解し合えるわけではない。誰かと一緒に仕事をするときは彼らと繋がりを持てることに一番の価値を見出して、ものづくりを進めていくんだ。人は遅かれ早かれ死んでしまうし、折角時間を費やして何かをするのであれば自分の大好きな人たち、通じ合える人とだけで心豊かに仕事をしたい。それこそがラグジュアリーなんじゃないかな。

どのような人となら通じ合えるのでしょうか?

血の繋がりは関係ない。両親や兄弟は好きだけど、もう二度と会いたくない親戚もいる。自宅に居候してる私の叔父のアンクルビッグと向かいに住んでる彼の親友ヘクターは、飲酒運転は当たり前で、家の前を美人が通りかかると興奮しておかしな仕草をしたり、家に入らず外にソファを置いて寝たりして、いつもメチャクチャなんだ。彼らのような少々クレイジーで個性的な生き方をしている人が好きだね。もちろん、写真家のピーター・サザーランドのように、実力のある人、僕が考える"本物"の人たちとも仕事をしていきたいとも思っている。

untitled-article-1479991955-body-image-1479992377.jpgアートワークのインスピレーションはどこから?

創作活動に対して野心的なものは持ち合わせていなくて、いつも自分を取り巻く身近なものからインスピレーションを得ているんだ。インスピレーションは僕の周りにいる友達のようなもの。アイデアが何度も脳裏を過ぎるようだったらそれを作品に落とし込むといった形だね。いつも興味深く注意深く様々なものを見たり、写真に収めたりしている。いつも視覚的な刺激を受けていたいんだ。ただ待っているのではなく、常に何かしらアクションを起こしたい。いま製作している服には日本の街中で見かけた看板をヒントにデザインしたものもあるんだ。

コラボレーションやプロジェクトを始めるとき、どちらからオファーを掛けるのですか?

場合によるけど、僕の周りにはクリエイティブな人がとても多いから彼らと話しているうちに何方ともなく、流れのなかで決まることが多いかな。今回は映画のプロモーション以外に、ミュージシャンのブレンダン・ファウラーと共にスタートさせたsome wareというブランドのイベントを日本で開催したんだけれど、彼も元々僕の友人で会話のなかで自然と立ち上げが決まったんだ。OFF-WHITEとのコラボについては、有名なブランドだけど僕はヴァージルのこともよく知らなかった。彼から突然オファーがきて実現したんだ。
それから、今どうしても一緒に仕事したい相手がひとりいる。北野武だよ、彼は今回の映画『GHOST IN THE SHELL』にも出演しているよね。先日開催されたプレハッキングイベントで会う予定だったんだけど、タイミングが合わなくて無理だった。彼の作る映画に役者として出演したいんだ。走り寄って銃を撃つだけの小さな役でも構わない。彼の映画で特に好きなのが『ソナチネ』。実はあの作品からインスパイアされた服もいくつか製作しているんだ。彼が元々コメディアンってことも、弟子が浅草キッドだってことも知ってる。僕は日本語がよく分からないから、彼が何を喋っているのか細かなニュアンスまでは理解できないけど、スマートな笑いを届けているんだろうなってことは伝わってくる。コメディアンのままでも十分名声を得ていたはずなのに、ヤクザ映画の監督になって、周囲の批判を気にせず、自分で限界を決めずチャレンジし続ける姿勢には、非常に刺激を受けている。

今回の来日で開催されたイベントはいかがでしたか?

とても楽しかった。僕の好きなGR8で、家族みたいな雰囲気のなかでイベントを開催できて良かった。オーナーの久保さんは、まるで生き別れた兄弟みたいなんだ。いい人だし面白いし、本当に大好きな人。彼との出会いは1年ぐらい前のパリ・ファッションウィーク、稲妻のような出会いだった。

日本での『GHOST IN THE SHELL』のプロモーションイベントには、あなたの他に、ビッグラブレコードのはるかさん、ドクターロマネリの3人がメンバーとして活動されていますよね。皆さんはどういったご関係なのですか?

僕のレーベル、TEENAGE TEARDROPS を取り扱いたいと、ハルカからメールが来たのが知り合ったきっかけ。そこからメールフレンドの状態が2年ほど続いたんだ。レコード屋で働いている人は大体男だろう? だから初めは彼女のことを男性だと思ってたんだ。2013年、彼女の運営するビッグラブレコードで日本初個展を開催した。オールドイングリッシュフォントをお店のロゴに使ってくれたのは彼女たちが初めてなんだ。その頃からアーティストとしての知名度も上がってきて、日本でもファッション関係の人たちとも繋がるようになってきた。ロマネリはLAに住んでいることからの長い付き合い。InstagramにLA界隈の人たちだけで構成してるDMのグループがあるんだけど、そこに僕が彼女をメンバーに追加したんだ。そこから僕を通じて3人が繋がった。ロマネリはアーティスト活動のかたわら、コンサルタントとして様々なプロモーションも手掛けている。今回、彼は本映画の予告プロモーションを担当していて、そこに自分たちが呼ばれたんだ。

untitled-article-1479991955-body-image-1479992339.jpgこの映画のオリジナルが公開された90年代のカルチャーについてはどのような印象をお持ちですか?

自分自身が一番やんちゃしてた頃だからか、あまり好きじゃないんだ。嫌いというわけではないけどね。基本的に"今"を大切にしている。『GHOST IN THE SHELL』と『AKIRA』以外は、アニメや漫画も大して好きじゃない。皆は「90年代のヒップホップは黄金期だった」なんて言ってるけれど、今の方がよっぽどカルチャー的に豊かな時代だと感じている。ヤング・サグ、フランク・オーシャン、ソランジュ......、ずっと聴いても飽きない良質な音楽が毎週リリースされているんだ。ファッションで言えば、J.W.アンダーソンやGucciのアレッサンドロ・ミケーレなんか本当にすごいと思う。過去を振り返って、良き時代に思いを馳せるのは簡単だけど、自分たちの時代すなわち"今"に目を向けることに価値があるんだ。最新のカルチャーを知ることは言語を習うことと同じようなもので、いつも新しいことを追いかけていないといけない。その学びを止めてしまう人がどんなに多いことか。僕と同年代の人たちは、インターネットや新しいテクノロジーに対して理解できなくなっていて、それ自体から学ぶことを止めて目を背けてしまっている。彼らは新しい言語として学ぶことをしないが、そんな風には絶対になりたくない。僕らの親世代は、TVやゲームが頭を悪くすると言ってきた。今だったらInstagramが頭を悪くすると言うだろうね。それは彼らが新しいツールを使いこなせていないが故の発言だ。そっちの方が愚かなことだと思う。今日を生きることにワクワクできるのは幸運なことだね。リアルな繋がりは大事だけど、インターネットを活用するのには抵抗を感じないし、上手く使えていない人が多いとさえ感じるね。どんなものにでも良い面と悪い面があるのは当たり前だから、アップした写真に「いいね!」がつかなくて落ち込んだりするのではなく、ポジティブな面だけを見て付き合っていくべきだと思う。今後も全く違うことにチャレンジしていきたい。2017年は新しい経験を積んで、実験的な年にしていきたいね。

お気に入りのInstagramアカウントは?

@bichon_tori 、韓国のトイプードルのアカウント。完璧なヘアスタイルでしょう。イベントにも呼べば良かったと後悔している(笑)。

最新号のマガジンのテーマが「愛」ですが、あなたにとって「愛」とは?

もし誰かのことを愛しているのだとしたら、それは独占欲からくるものではなく、その人がその人らしく生きることができるよう勇気づけてあげること。それは男女間の愛だけではなく、家族や友人、全ての人に向けた感情だ。仕事に対してもドライに向き合うのではなく愛を持って行動したいね。

Credits
Text Yuuji Ozeki
Photography Shoot Kumasaki
Special Thanks Interview Location FONDA DE LA MADRUGADA