返品負担をどう減らす?米企業がオンライン専売ストアの返品窓口を設置

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■ソフトウェア大手アドビシステムズの調査部門アドビ・デジタル・インサイツ(ADI) によると、感謝祭週末の明けたサイバーマンデーの売上高は前年比12.1%増となる34.5億ドルとなった。オンラインショッピングの1日の売上高が過去最高を記録したのだ。一方、感謝祭翌日のブラックフライデーのオンライン売上は前年比21.6%増となる33.4億ドルとなり、モバイル経由の売上高は前年から33%増と記録的な伸びとなり12億ドルとなった。1日のモバイル経由の売上高がアメリカ小売業界で史上初めて10億ドルを超えたのだ。全米小売業協会が27日に発表した早期データによると、オンラインで買物をした客数は1億850万人と推計する一方で、実店舗の客数は9,910万人となった。消費の主戦場が実店舗からオンラインへと大きく変化しているのだ。しかし、オンラインでモノが売れるほど、返品も増えるジレンマがある。アパレルなら試着するなど、実際に手に取って確かめていないため、オンライン購入では返品が増大する。調査会社カスタマー・グロース・パートナーズでは、ネットで購入した衣類品や靴は、実に30%が返品されると試算している。オンラインでファッションを購入すると3品に一品の割合で返品となるのだ。オンライン専売ストアにとって、返品は頭の痛い問題なのだ。なぜならアメリカでは一般的に返品の送料は事業者が負担することになっているからだ。カスタマー・グロース・パートナーズによると年末商戦中、8割の事業者が返品送料を負担しており、1アイテムの返品につき5~7ドルのコストを強いられているのだ。そればかりでなくクレジットカードフィーや返品の際の人件費等で、さらに5ドル負担となる。したがって返品をいかに減らすか、また返品のコストをいかに軽減するかが大きな課題となっているのだ。
オンライン専売ストアの返品送料の負担軽減で、ユニークなスタートアップ企業がある。カリフォルニア州サンタモニカを本拠地にする「ハッピーリターンズ(Happy Returns)」は、ショッピングセンター内でオンライン専売ストアの返品を受ける窓口(キオスク)を展開している。サンタモニカ・プレースSCやウエストフィールド・トパンガSCにあるハッピーリターンズのキオスク「リターンズ・バー(Returns Bar)」は、その場で返品でき返金も受けられる。お客は返品用に箱を用意し、梱包し、宛先ラベルを貼ったりする必要がない。郵便局に行く手間もなく、リターンズ・バーに常駐するスタッフ「リターニスタ(Returnista)」に手渡すだけで返品が完了する。その場で返品するためリアルタイムでの返金となる。返品する消費者に手間やストレスはなく、オンライン専売ストアも送料負担が軽減される。そればかりではない。オンラインストアに客を奪われていたショッピングセンターも、返品目当ての客を集客できるのだ。ハッピーリターンズで返品を受け付けるオンライン専売ストアは女性向けの古着マーケットプレイスの「トレズィ(Tradesy)」、女性用プラスサイズ・ファッションの「エロクイ(Eloquii)」、ドレスシューズの「シューズ・オブ・プレイ(Shoes of Prey)」、男性向けアンダーウェアの「リッブド・ティー(Ribbed Tee)」、女性向けロードバイクウェアの「マシーンズ・フォー・フリーダム(Machines for Freedom)」の5社。リターンズ・バーがあるSCはサンタモニカプレースSCにウエストフィールド・トパンガSC、ウエストフィールド・サンフランシスコSC、シカゴのミシガンアベニューにあるショップス・アット・ノースブリッジ、ファッション・アウトレット・オブ・シカゴの5ヵ所となっている。
買い物の主戦場がオンラインに移る一方で、O2Oでオムニチャネル・プレーヤーのハッピーリターンズが今後、ショッピングセンターでの展開が拡大することが予想されている。

トップ画像:ショッピングセンター内に展開するハッピーリターンズのリターンズ・バー。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。小売業界の返品率は平均でおよそ8%です。実物を見たり確認できないオンラインストアでは返品率は急激にあがり約30%です。寛大な返品が小売店にプラスの結果を与えているとのレポートがあります。テキサス大学ダラス校から出されたリポートによると、30日間や90日間などの「返品期間」や、一部もしくは全額などの「返金額」、セール品など除外される「返品対象」、オリジナルの包装やパッケージ、値札の有無などの「状態」、ストアクレジットや代替商品の取り換えの「交換」の5つの条件で調べた結果、寛大な返品条件であるほど返品は増えるものの売上を増大させています。返品期間を延ばすほど「保有効果(Endowment effect)」で返品率が下がる傾向にあるのです。保有効果とは、自分が所有するものに高い価値を感じ、手放したくないと感じる心理現象のことをいいます。90日近くも所有していると保有効果が働き返品しにくくなるという結果です。

⇒別の調査では返品の手間がかからないほど、購入に対してもイージーになるとの結果があります。いつでも返品できる、簡単に返品できると消費者が感じれば、その店でより多くの商品を買ってしまうのです。オンライン専売ストアは消費者に返品時のストレスを与えたくはないのです。アマゾンではキャンパス内にピックアップ拠点を増やしていますが、実のところは返品(リターン)拠点なんですね。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校にあるアマゾンのピックアップ拠点に何度か足を運んでいますが、ピックアップする以上に返品している人が目立つのです。アマゾンはアパレル販売でもメイシーズを抜くことが予想されています。靴やドレスなどファッションをオンラインで購入すると30%の返品率ですから、ピックアップ拠点と称したリターン拠点がこれまで以上に必要となってきます。そこの目を付けたのがオンライン専売ストアの返品窓口のハッピー・リターンズです。マルチメリットのオムニチャネル業者といってもいいですね。

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カリフォルニア州立大学ロングビーチ校にあるアマゾンのピックアップ拠点。注文品をピックアップする以上に返品している人が目立っている。

⇒スーパーリージョナル・ショッピングセンターなどにキオスクで展開して、オンライン専売ストアの返品窓口です。ハッピーリターンズのビジネスモデルは「売り手良し」「買い手良し」「SC良し」の三方よしです(笑)。返品時に郵送用の箱を用意して梱包してラベル貼りなどの煩雑な手間がいりません。リターンズ・バーのキオスクに返品を持っていくだけでその場で返金手続きをしてくれます。オンライン専売ストアにとっても返品送料の負担を軽減できます。1アイテム当り5ドル~7ドルのコストはバカになりません。そしてオンライン専売ストアにお客を奪われていたショッピングセンターにとっても集客となるので福音です。返品しにSCに来たお客はSC内でランチしたり、他に何か買い物をすることもあるでしょう。ハッピーリターンズはマルチにメリットをもたらし、しかもオンライン・ツー・オフラインの流れをもつオムニチャネルプレーヤーです。返品対象となるオンライン専売ストアとSC展開が増えるのも時間の問題でしょう。
ハッピーリターンズをネット時代の近江商人といったら怒られますかね?

後藤文俊