小島ファッションマーケティング代表

デザイナーも"服が売れない理由"をわかっている

 先週木曜日朝刊の朝日新聞文化欄は『手が届く上質求める時代』と見出して編集委員の高橋牧子さんが高田賢三氏やクリストフ・ルメール氏にインタビューした記事を掲載していたが、クリストフ氏の『最近、服が売れないのはファッションのシステムや作り手の感覚が現実社会や人々の気持ちから大きく離れてしまったからです。』という発言を知って、何だか私と同じような事をデザイナーの方も感じているんだと意を強くした。未だクリエイションだものづくりだと消費者を見下ろすような感覚を脱せないギョーカイだが、優れたクリエイターは見識も全うなんだと認識を新たにした。

 同じ記事の中で高田氏は『最近は飾り気のない"ノームコア"が流行中ですが、女性がきれいな色柄を着ていると街が華やいで活気が出る。そこがファッションのいいところです。』と発言していたが、実は17AWは"ノームコア"から一転してデザインと色柄・装飾が溢れるファッション大復活のシーズンになりそうなのだ。

 当社が毎シーズン、国内の客層別スタイリング変化とブランド別売上数字を検証して来シーズンのマーケットを予測し、客層別/デリバリー別にスタイリングMDを組み上げる「MDディレクション」の17AW版がこのほど完成して明日27日からクライアントへの解説が始まるが、そこには"ノームコア"に始まって緩い着こなしと機能性要求が高まった過去6シーズンのユーティリティ志向が白日夢だったかのようなデザインと色柄・装飾が溢れるファッション・ワールドが広がっている。

 着こなし易さと機能性、コストパフォーマンスの要求の前にすっかりストイック('貧乏臭く'と言ってもよい)になってしまったファッションが一転して華々しいデザイン性・装飾性を志向するなど??と思われるだろうが、これまでもマーケットはほぼ6シーズン毎に反転して来たのだから、ブリグジット的反転があってもおかしくないし、ファッションの躁鬱は景気とズレる事もある。

 過剰供給とお値打ち感の劣化で'価格崩壊'に瀕するファッション流通だが、来年は貧乏臭さに飽きたマーケットが躁転して過日のインバウンドのような徒花が期待出来るかも知れない。『喉元過ぎれば何とやら』と抜本的問題を先送りしてはインバウンド一過後の百貨店のような暗転が避けられないから、あくまで数シーズンの一過性ファッショントレンドと捉えて頂きたい。

小島健輔