小島ファッションマーケティング代表

一部商品の陳列は「お客様第一」か?

某百貨店で買物していると、陳列している商品のサイズ違いは仕方ないにしても、陳列してない色・柄・デザインがストック室から次々出て来る事を何時もながら不思議に思う。その度に販売員が探しに行って帰ってくるまで結構な時間を要するから、随分と不合理なやり方ではないか。

こんな不合理が生じるのは、販売効率が高く多数のブランドを詰め込んでいるため各ブランドが商品を出し切れず一部の商品しか陳列出来ないからだが、それならデザインと色は全部揃えてワンサイズだけ陳列すれば良いと思うが、それを許さない「陳列マニュアル」が存在するそうなのだ。

その「陳列マニュアル」に拠れば、ワンスパンに陳列出来る枚数を限って『一型につき○色○サイズまでしか出してはいけない』と規定しているとか。恐らくは奇麗に見える事を優先しているのだろうが、顧客の選択幅を考えても販売プロセスを考えても随分と不合理なルールだ。そのせいで、販売員は顧客に『陳列していない色や型が他に在ります』と説明し、顧客の要望に応じて逐一、ストック室まで探しに行かねばならない。その間、販売員は接客から離れて物流作業(ピッキング)を強いられ、顧客はひたすら待たされる。そんな空白が無ければ、顧客は他の商品を買う時間があっただろうし、販売員は別の顧客を接客する事が出来たかも知れない。いっその事、販売員にタブレットを持たせてECサイトから総ての品揃えを見せて接客すればよいのにと思ってしまう(高島屋とオンワードの取組が始まっているが一般化するのだろうか)。

ストック室は接客プロセスのブラックホールであり、販売機会を損ない、在庫が眠り、果ては様々な不祥事まで引き起こす'魔界'だから存在しない事が最良だが、どうしても必要なら販売員がストック室に消える時間は最小化されるべきだ。それには売場の陳列と補充のルールを現実的に定め、多数のブランド売場が並ぶ百貨店などではストック室の在庫出入り管理とピッキングは物流のプロに任せて販売員は売場を離れる事が無いようにすべきだ(2016年5月9日付け当ブログ「ストック室に消えないで」を参照されたい)。

「陳列マニュアル」にせよストック室の運用にせよ、百貨店には顧客の利便と購買プロセスを損ない販売員に無用な労働を強いる悪しき慣行が山積されたままだ。ECでの買物が広がるにつれ、不合理に満ちた百貨店のアナクロな慣行を不便・不快に感じる顧客が増えている。そんな根本的な問題を改善する事無く時々の時流を追ってスタンドプレーを重ねても何も解決せず、顧客の離反は止まらない。「お客様第一」「販売員支援」は建前に過ぎないのだろうか。

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小島健輔