ファッションマガジン

「ファッションもアートももっと刺激的に」NY発の反体制雑誌「Sedition」とは?

「ファッションもアートももっと刺激的に」NY発の反体制雑誌「Sedition」とは?の画像

ニューヨーク発の反体制雑誌『Sedition』。「ファッションもアートももっと刺激的に」と新しい雑誌を立ち上げた2人に話を聞いた。

ある雨の夜、餃子店や武道関連グッズ店、スパなどがひしめくチャイナタウンのディープなエリアで、雑誌『Sedition Magazine』のローンチを記念するパーティは行なわれていた。パーティ会場は、モット・ストリートに面した極細の店頭フロント・スペース部分----黒く塗った爪の先が欠けてしまった親指のような形のスペースだ。会場の壁には、ファッション・ページからドキュメンタリー写真、極めてセクシュアルなコラージュ・アート作品まで、『Sedition』を構成した荒削りなページがところ狭しと貼られ、フロアにはうごめくように白黒のジグザグが動く様を映したアナログのテレビが置かれていた。店先を歩く近隣住民たちはみな二度見してから通り過ぎたが、中には会場内でDJのサラ・アブニー(Sarah Abney)がプレイする80年代ニューウェイブ/ゴスのチューンに、思わず足が踊ってしまう年増の女性なども見られた。

20170214itma2.jpg

Photography Tyler Kohlhoff, Fashion Director Lana Lackey

そんなシーンこそが、この反体制カルチャー誌『Sedition』をエキサイティングにしている要素を如実に物語っている。地元にいながらも、どこか他に行くべき場所を探しているような、落ち着かない様子----この雑誌をパワフルなものにしているのは、それがチャイナタウンのストリートであろうと現在のファッション界であろうと、「自分が今いる場所を面白くする」というコンセプトだ。この雑誌の創始者である写真家タイラー・コールホフ(Tyler Kohlhoff)とファッション・ディレクターのラナ・ラッキー(Lana Lackey)にとって、『Sedition』創刊号は我が子のような存在だ。しかし、彼らは過保護な親ではない。切り貼りも製本もシール貼りもすべて手作業で行なわれ、ファッション・ページに使われている洋服はほぼすべてヴィンテージのデザイナー・クローズで、そこには大胆で、ゴージャスなアナーキーともいえる世界観が生まれている。ニューヨークのアンダーグラウンド・シーンから、ここまでフレッシュで刺激的な雑誌が誕生するのも久しぶりだ。

ラッキーとコールホフに、生前のアレキサンダー・マックイーンが自らの毛髪をタグに添えていた時代のAlexander McQueenの服について、歯に矯正器具をつけたカウガールたちの魅力について、そして次号の「夢のコラボレーター」について聞いた。

20170214itma3.jpg

Photography Tyler Kohlhoff, Fashion Director Lana Lackey

この雑誌を作る動機となったものは?そしてこの雑誌のテーマついて教えてください。

ラナ・ラッキー&タイラー・コールホフ:私たちはただドリーマーなの!写真やファッションについて、夢やアイデアがあったのよね。それを雑誌で実現してみようと----それがきっかけ。『Sedition』は「立ち上がり、権力を持つ組織や権力そのものを生み出すものに反抗しよう」という意味。その精神が、雑誌を作る上でのテーマで、舵取りの役割を果たしてくれてるの。

20170214itma4.jpg

Photography Lorenz Schmidl, Fashion Director Lana Lackey

パンクカルチャーは『Sedition』にどのような影響を与えていますか?デザイン面では、テープやラベルシール、コラージュ、ドローイング、そして印刷など手作り感が残る手法が多く用いられていますね。『Slash』などのZINEを彷彿とさせるものがあります。

ラッキー(以下L):『Slash』は最高よね。デボラ・ハリーが叫んでいる写真、あれが私の考える史上最高の表紙アート。私もタイラーもオレゴン州ポートランドの出身なんだけれど、ポートランドはZINEが盛んで、パンク会場のトイレにはZINEが積み上げられていた。どれもすごく安いか、タダのものもほとんど。中身は手書きだったり、写真もコピー印刷されたものだったりして。そういう温かみを感じられる世界観が好きだった。"手作り感"が残っていることで、作者を身近に感じることができる。『Sedition』では、コラージュで使った写真の子どもたちにとても親しみを感じたわ。その、出来上がったものを使ってまた新たな世界観を生んでいくというプロセスの中でね。そこで感じた親密で温かい感情を、読者にも感じてもらいたくて。読者がパーソナルな何かを感じ取ってくれたら嬉しい。

20170214itma5.jpg

Photography Tyler Kohlhoff, Fashion Director Lana Lackey

創刊号のコンセプト「楽園の暴動」についても教えてください。掲載されているファッション・ストーリーは、コンセプトとどう関連しているのでしょうか?

L:私にとってはとてもシンプルなこと----体制に揺す振りをかけるということ。美しい常夏の島に取り残された人々が輪になってどんどん正気を失っていく世界観。
T:それはニューヨークという街それ自体。ニューヨークを楽園とすれば、僕たちのような人間が暴動そのものだ。つまらなくなったファッションとアート写真雑誌のあり方を問いたくて----だから思うままの雑誌を作ったんだ。収められているストーリーには、楽園的ものもあれば暴動めいたものもある。

20170214itma6.jpg

Photography Devin Doyle

雑誌にはニューヨーク的な要素がたくさんありつつも、実際に存在しえないような、まさに楽園のような要素もあります。Los Charrosのカウボーイや、ゲイのSMイベント<Folsom Street>で撮られた写真シリーズなどは、どこかこの世のものとは思えない世界観を放っています。どのように主題やシーンを見つけていったのでしょうか?

T:僕たちは単に現実世界に生きる人たちに魅了されるんだ。ドキュメンタリーはとても重要な要素で、僕たちにとってもっとも大きなインスピレーション源。今後も、毎号でドキュメンタリー要素のあるページを作っていこうと考えているよ。『No Mag』や『Slash』といったZINEは、服の魅力をみせて、アートや音楽を作り出し、いわゆる"ノーム"と戦い、打ち崩していた。理想主義的なのはもちろん承知しているけど、理想を形にして見せるという姿勢が僕たちは好きなんだ。『No Mag』や『Slash』もドキュメンタリー要素を大切にしていたよね。フィクションもファンタジーもなかった。ファッション作品よりも、そういった世界観に僕たちは惹かれるんだよ。
L:Los CharrosとFolsom Street、それと日本のパンク・シーンを選んだのは、私が個性的なスタイル好きで、彼らの服装が好きだから。すごくインスパイアリングだと思う。カウボーイもSM好きゲイたちも日本のパンクスたちも、個々の夢や情熱を服装に反映させて、理想の自分を生きているでしょう?カウガールたちは、圧倒的なビジュアルだった。私は型破りな姿勢やタブーの世界にも興味があったんだけど、ベンジャミン・フレドリクソン(Benjamin Fredrickson)が、型破りな性のあり方を美しく撮って、そうした世界の実現に貢献してくれたの。

20170214itma7.jpg

Photography Benjamin Fredrickson

ファッション・ストーリーで、ヴィンテージのデザイナー・クローズを用いている点にも惹かれます。

L:子どもの頃、両親がレザーのアクセサリーを作るブランドを立ち上げて、母のクローゼットはいつも古着で見つけたお宝のような服に溢れていたの。それが、私とファッションの出会いだった。リサイクルショップで、店内に所狭しと並べられた服を見ながら、母はデザインというものの素晴らしさを教えてくれたわ。それが一生ものの情熱を生み、今でも私はヴィンテージについて勉強して、探し続けている。「読者が見たこともないようなアイテムを紹介して、讃える」というこの雑誌のアイデアはとても気に入っているの。「天上の生物」ページでは、Byronesque Vintageで買ったグレーのAlexander McQueenスーツを使ったんだけれど、そのジャケットのライニングにはプラスチックのポケットが縫い付けられていて、その中にはマックイーン本人の毛髪が入っているの。作品に自分の一部を残したマックイーンのコンセプチュアルな世界観が大好き。ああいうデザインは、きちんと後世に語り継いでいかなきゃいけないものだと思う。

20170214itma8.jpg

Photography Jeff Bark, Fashion Director Lana Lackey

今後の『Sedition』について教えてください。次号について何かしら秘密を教えてもらえないでしょうか?

T & L:まだ知られていない人の作品を印刷物として世に発信していくが楽しみだし、今後はニューヨーク以外の地域からのアーティストともコラボしていきたいと思っている。秘密?そうだな......次号では、僕たちにこの雑誌を実現させようと後押ししてくれたアーティストを特集するよ。アートやドキュメンタリーの限界を押し広げている人たち----時代の先を行っていて、僕たちがずっと憧れてきたアーティストたちをね!

@seditionmagazine

20170214itma9.jpg

Photography Sam Rock

20170214itma10.jpg

Photography Barett Sweger, Fashion Director Lana Lackey

20170214itma11.jpg

Photography Tyler Kohlhoff, Fashion Director Lana Lackey

20170214itma12.jpg

Photography Tyler Kohlhoff, Fashion Director Lana Lackey

Credits
Text Emily Manning
All images from Sedition Issue 01: A Riot in Paradise
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.