小島ファッションマーケティング代表

三陽商会、復活のカギは百貨店にあり?

「バーバリー」を失い、リリーフと期待した「マッキントッシュロンドン」「クレストブリッジ」も苦戦する三陽商会は駅ビルやSC、ECや異分野に活路を見出そうとしているが、果たしてそこに'青い鳥'はいるのだろうか。

駅ビルやSCとてファッション関連はオーバーストアが著しく、ブランドの廃止休止や店舗の撤退が広がり、新設/リモデル商業施設ではファッション関連店舗が潮が引くように減少し、替わって食物販や飲食サービス、化粧品や理美容サービスの店舗が急増している。急減するアパレル・服飾関連では限られた勝ち組とて業績が不安定になっており、駅ビルやSCで成功体験の無い三陽商会に今更、勝機があるとは到底思えない。

三陽商会はものづくりのクオリティは高いが経営コストも高く、低価格が求められる駅ビルやSCでは不利を否めない。かつて駅ビルなどに展開した「スマッキーグラム」も低価格を強いられてODMに流れ、三陽商会らしい上質感を失って周囲のブランドと同質化し、14年春夏期を最後に廃止されている。
お手頃な価格と機動的な市場対応が必須の駅ビルやSCは、ものづくりに拘って開発リードタイムが長くコストも高い三陽商会が持ち味を活かして闘える土俵ではなく、かと言って機動的なODMに流れれば周囲のライバルと同質化して埋没してしまうから、アパレル氷河期が極まった今日、勝機があるはずもない。

『EC発若向けブランド』もアパレル系はもちろんIT系からも続々と斬新なビジネスモデルのベンチャーが参入しており、ノウハウの疑わしい大手アパレルの後発ブランドが離陸する確立は低い。『5年、10年先を見て異分野を含む様々な協業やM&Aも視野に入れる』との発言には当事者感覚を疑った。三陽商会の追い込まれた窮状では'今'を乗り切って存続の足場を固めるのが唯一危急の課題であり、5年も10年も先を語る情況にはない。

その一方、ブランドの廃止休止、売場撤収が広がってブランド不足に陥っている百貨店は残存者利益が期待出来る。とりわけ三陽商会が得意とする高品質やモード感が求められるベターゾーン、コンテンポラリーゾーンは20年30年と続く古手ブランドばかりで売場が陳腐化し切っており、単品感覚の新手ブランドが希求されている。

ベターゾーンやコンテンポラリーゾーンを支える新たな客層は働き盛りの40代~50代キャリア層(男女)で、機能性とモード感、きちんと感と品質感が揃った着回しの効く単品ブランドを希求している。それに応え得るのは欧州のファクトリーブランドだが、百貨店の衰退で販路が萎縮する中、バラエティも奥行きも限定され、日本市場のキレイ目シフトにも立ち後れ、需要に応えられなくなっている。

三陽商会が残された戦力を集中すべきは、限られた国内生産ラインを週サイクルで売場と繋ぐファクトリーダイレクトな上質単品ブランドだと断じたい。EC一体のオムニチャネル展開ブランドとして顧客ダイレクトな販路を確立するのは必然で、百貨店インショップがその一翼を担う事になる。非効率なトータル・コーディネイトを避け、メンズではパンツとシャツ、レディスではパンツとワンピースを通年の軸とし、ニットやカット、ブルゾンやジャケット、コートを季節展開するマルチライナーMDとすべきだ。

アパレル業界には'クリエイション'や'ものづくり'など一方的な付加価値創造を過信してマーケットのニーズや需給を顧みない悪癖があるが、アパレルビジネスの成否は需給関係で決まるのが現実だ。今回の三陽商会の挽回策も駅ビルやSC、20~30代の若者を志向するなど、供給過剰の真っ赤な海に特攻するものと危惧される。

「マッキントッシュロンドン」「クレストブリッジ」も決して魅力のないブランドではないが、「バーバリー」の巨大なマーケットを穴埋めせんとする需給のギャップがあまりに大きすぎた事が敗因だ。複数ブランドによる代替が現実的だったのではないか。リスクの高いアパレルビジネスは需給の利が要で、今回の挽回策を見る限り、三陽商会の経営陣はその教訓から何も学んでいない。

これ以上、試行錯誤を繰り返しては資本を消耗して行き詰まってしまう。それでは志半ばで会社を去って行った仲間達に申し訳が立たないのではないか。三陽商会の'青い鳥'はSCや駅ビルではなく古巣の百貨店に潜んでいるのだ。

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小島健輔