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【インタビュー】マドモアゼル・ユリアの戦い方とは?

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「私、別に東京を盛り上げようとなんて思っていないんです」と語る彼女は、DJでありミュージシャンであり、GROWING PAINSのデザイナーでもある。2017年秋冬コレクションに秘められた暗号には、現代を面白くサバイブするためのファーストエイドが隠れている。

彼女が東京でDJを始めたのは、16歳。まだ大きなイベントや深夜の時間に出られないティーンで、高校卒業後は美容学校の生徒として学業に勤しみこの先の自分の表現方法がどうなるかもさほど明確ではなかった頃。東京で生まれ、美容師の父と、大手アパレルでの勤務後スタイリストとして活躍していた母から生まれた2人娘の長女、マドモアゼル・ユリアは、東京のファッションシーンをありのままで体現する存在となるべくしてこの世界に降り立ったのかもしれない。自ら結成したパンクバンドに熱中する学生時代を過ごしながらも、マドンナやカイリー・ミノーグといったポップアイコンへの愛情を持ち、同時にヒップホップやロック、エレクトロなど多様な音楽性を解釈してきた。DJとしての活動を続けながら2008年には、自身がMIXを手がけた『NEON SPREAD』を発表。メジャーデビューを果たすと、彼女の名前は音楽シーンだけではなく、ファッションシーンにも鳴り響くこととなった。また、JUSTICEをはじめとしたED BANGERレコード界隈のクルー達、グラフィックアーティストのアンドレ・サレヴァなど、パリを拠点に全世界のファッション・カルチャーシーンを牽引していたアーティスト達と深い交流をもち、2011年にはフランスを代表するストリートアーティストのFAFIとコラボしたMV『GIMME GIMME』をリリース。国際的に注目を浴びることとなった彼女の人気は、日本・フランス・NY・ロンドンとファッションの大都市だけでなく、台湾や韓国など、アジア圏にも広がりをみせた。名実ともに、東京を代表する「No.1イットガール」として名を馳せた彼女は、ジュエリーブランドGIZAをローンチするなど、活躍の場を広げていく。しかし、当時のファッション業界は「ブロガー」「インフルエンサー」の大洪水。おしゃれが得意でフォロワーの数に一喜一憂するヴァーチャルの住人達と同列に並べられる、なんて風潮の流れを変えるべく、というよりも自分の目で実際に世界基準のファッションシーンをより幅広く深く体感・学習しようと、パリのファッションウィークに足を運ぶように。数シーズンも経たない間に、世界が新しい形で彼女を認識するようになる。H&Mの巨大なビルボードをはじめ、CHANELがウェブサイトで行なっていた、クリエイティブな女性を紹介するムービー「OUTSIDE CHANEL」(現在はINSIDE CHANELとしてココの映像を含む貴重なブランド資料のアーカイヴを開示している)で紹介されたりと、改めて彼女に注目が集まることになる。数々のメゾンブランドのパーティでDJやゲストとして誘致され、プライベートでリアーナやジェレミー・スコットと交流するなど、表舞台の人脈の幅を広げながらも、彼女自身はメジャーレーベルと決別し、自身が信じる「かっこいいものを作る」ことに固執した姿勢を続けてきた。満を持して2015年、ブランドGROWING PAINSを発表。先日行われた2017年秋冬東京ファッションウィークでは、Amazonが独自の目線で選ぶ注目ブランドAmazon Fashion "AT TOKYO"に選出され、初めてのランウェイショーを行った。東京が持つ文化や人、多種多様のユースカルチャーから派生する性質そのものを映し出す街、渋谷。煌びやかなネオンに構える薄暗い立体駐車場の中で行われたファッションショー。戦場とも呼べる現代社会に希望と豊かさを与える存在としてナースという女性像を打ち立て、40年代のクラシックなユニフォームにミリタリーやワークのエレメントを混入することで、現代的なムードを実現した。国際的な感覚と視野を持ちながら、東京という地に足をしっかりとつけて、自己表現を探求するマドモアゼル・ユリアに話を訊いた。

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まず、今回の40年代を舞台にしたコレクションのインスピレーションについて聞かせてください。

古着が好きなので、いつも気になる時代があるんです。旅からもいつもインスピレーションを得ていて、今シーズンは、ロンドンのV&A ミュージアムで見た40年代の服がすごく気になって現地で絵を描いたりしていました。それから、2013年あたりからミリタリー系のアニメが流行っていて『ガールズ&パンツァー』などもよく観ていたんですが、それがどこか頭の中にあったんでしょうね。でも、ミリタリーでレディスをやるならどこかに可愛い要素がないと、と思っていました。

看護師やメイドなどの「ユニフォーム」の世界観にユリアさんらしさを感じました。

いつもテーマを作りすぎちゃうんですよね。だから、現代のミリタリーテイストを入れたいと思い、コンバットシャツの要素などを取り入れました。私よりもオタク気質の妹に教えてもらって秋葉原のミリタリーショップにリサーチに行ったことも。服のディテールを凝視していたら、よほど興味があるとみられたらしく、日本兵の格好をしたお客さんが寄って来て解説をしてくれたり......(笑)

女性像と言えば、以前は楠田枝里子さんがミューズでしたよね。

もちろん、今も変わりません。楠田さんにショーに来ていただきたかったのですが、連絡先がわからなかったんですよね。それから、引田天功さん、YOKO FUCHIGAMIさんもお呼びしたかったんですがダメでした。

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40年代と現代、女性らしさにスポーティなムードとまさに「ハイブリッド」に多要素を混在させてますよね。

自分はデザインをしているけれど、デザイナーじゃないといつも思っていて。というのも、学校で洋服の勉強を本気でしてきたわけではないから、そういう方々とは同じようには作れない。でも、他のアプローチでも、面白い服はできると思うんです。私自身、自分らしく服を着るために、いつも改良したり着方を変えてみたりしているので。だから、自分で着方を変えられるデザインにすれば、着る人のパーソナリティが出せていいんじゃないかと思ったんですよね。

そこで、パンツやスカートについたジップやホック、アウターについたハーネスで、2WAY・ 3WAYで着られるような多機能性をもたせたんですね。それらの部品やデザインにパンク的なムードを感じました。

全く意識はしていないんですが、たくさんの人にそう言われました。自分のルーツがパンクバンドなので、ついつい出ちゃうのかな。ビッグメゾンの話になりますが、COMME des GARÇONSなどはいつもあの世界観の中にパンク要素がありますよね。Vivienne Westwoodなんて、大好きすぎて高校時代はそればかり着ていたし、パンクはきっと根底にあるんだと思います。

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コレクションを作る時に女性像を立てるなど、コンセプトを打ち立てるのは、DJ的な感覚だともいえるのでしょうか。

そうですね、実際プロジェクト的な感覚でやっている部分はあるかも。今回のショー制作もまるでMVを作っているような感じでした。トラックはこの人、演出はこの人、と自分がすごく信頼しているアーティストたちを巻き込んでキャスティングしたので、とても面白かったです。

音楽を手がけたA.G.COOKさんとはどのような交流があったんでしょう?

私がファンすぎて(笑)。ショーをやるのでお願いしたいと周りに話していたら、今回、映像を制作してくれたリヨ(・ネメス)ちゃんが友人だということで、紹介してくれたんです。彼は自身でレーベルを運営していて、そのクルーには私も大好きなソフィーというトラックメーカーもいるんですが、彼の周りで面白ことが起きているというのはいつも感じていました。以前にCHANELが韓国でショーに楽曲を使用していたのを覚えていたのですが、実はショーに参加してくれたモデルのジョッシュの彼女がA.G.COOKの幼馴染味だったという意外な繋がりもありましたね。

国外のアーティストとの仕事に難しさなどはありませんでしたか?

彼の作品を信じているから、コレクションの内容だけ伝えてほぼ丸投げ状態でした。最後にスタイリングを組んで、コレクションの中身がはっきりと見えた時点で少し疑問が湧いたんです。その疑問には触れずに「こんな感じですがどう思いますか?」とショーのルックなどを見せたら、『あ、そういう感じね』と、3日前にも関わらず速攻で直してくれたんです。理解がある人で本当によかったです。

海外のセレブリティとの交流から受け取るインスピレーションはありますか?

私が見て来た有名な人たちって、みんな人として超いい人で、ひとりも嫌な人がいないんですよね。当たり前のことがきちんとできて、人としてよくできた人ばかり。もしかしたら、日本にしかいないとその感覚って意外にわからない人が多いんじゃないかな。私もこれからも、色んなところに行って、色々な人にたくさん出会いたいし、情報交換もしたいし、好きなものもシェアしたい。それに、私の仕事はDJや音楽、服も作ったりと様々なことをしているので、いろんな人のサポートが必要で自分だけではできない。だから、もし国際的に活躍する立場になっても、彼らのようにありたいです。それにみんな自分の好きなことに本当に一生懸命。ずっとやりたいことを純粋にやっていくと次のステップになっていくというのは、自分にもリンクするし、ブレずにいたいと思います。

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海外と比較して日本のファッションシーンをどう捉えていますか?

パリに行くといつも熱気がある。何かが起きていて、みんなその目撃者になりたいという熱意を感じます。でも今の日本って一歩引いてる。現場よりも「ネットでチェックしよう」という風潮がありますよね。私は、10年位前にオオスミ(タケシ)さんが初めてPHENOMENONのショーを行った時、その場にいられたことがすごく嬉しかったことを今でも覚えています。別にみんなで東京を盛り上げようとはあまり思っていなくて、私も当時のように何かハプニングを起こして、みんなに楽しんでもらいたいです。そういうことを続けていれば、勝手にいろんなことが起こるんじゃないかな。パリにいる「自分たちでゲリラしてやろう」みたいなアイデアとパワーに溢れた人たちのように、私も今後、形にとらわれず自分の世界観を伝えていきたいです。

今回のテーマでもある「戦場とも呼べる現代社会」について聞かせてください。

NYに行くといつも『ここには住めないな』って思うんです。人々の競争意識が強すぎて、自分がついていけない。今は、情報が多いし、一分一秒新しくて、トゥーマッチと思っている人も多いんじゃないかな。知らないことが知らないところで起こっているのを謎に把握していけなくてはいけないという状況が、まるで戦争みたいだなと感じたことがテーマにつながりました。

様々なプラットフォームを通した自己表現から伝えたいこととは?

これを伝えたいっていうのは特になくて、やりたいからやってるんですよね。でも、やるとなったら全部本気。中途半端にやりたくないから『今だ』って思った時に球を打つし、無理だなって思ったら選ばない。そのスタンスで今年は音楽も作りたいなって思ってます。

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@mademoiselle_yulia

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Credits
Photography Ko-ta Shouji
Text Yuka Sone