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双子の黒人姉妹を撮る理由とは?写真家ミランダ・バーンズが現代社会に思うこと

微笑ましい写真作品を通して、黒人女性に向けられる誤解に疑問を投げかけるミランダ・バーンズ。彼女が双子の黒人姉妹を撮り続けた理由とは?

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現在22歳のミランダ・バーンズ(Miranda Barnes)の『Doubles』は、ポーズをとった黒人の双子姉妹を捉えた写真シリーズだ。そのひとつに、アーモンドのようにクリッとした目とバラ色の唇が印象的な女性が、姉妹の肩に顎を乗せて、微笑んでいる写真がある。肩が露わになったトップスを着たふたりは、ハッとするほど美しい。また別の作品では、まだ若い姉妹が庭を見ているが、ふたりとも髪を一部ブレードに編み上げ、揃って後頭部にゆるいバンを作っている。ひとりがもうひとりを後ろから抱きしめており、なんとも微笑ましい。そんな微笑ましさが前面に出た作品群だが、それは被写体がすべて姉妹だからというだけではなく、ファインダーのこちら側にいるミランダが、祖母とのあいだに特別なつながりを感じているからだ。ミランダの祖母もまた、双子の姉妹を持つ女性なのだ。「祖母と大叔母が一緒のところをわたしが写真に撮ることは叶わなかったけれど」とミランダは話す。「でも、このプロジェクトは、ふたりが一緒に写った数少ない写真に着想を得てはじめました」。残された数少ない写真の1枚は1978年に撮られたもの。芝生のうえに折りたたみ式のデッキチェアを起き、ミランダの祖母と大叔母の双子姉妹がそこに座って、カメラに向かい微笑んでいる。色褪せたその写真は、控えめで繊細----ミランダのポートレイト作品に共通する世界観だ。
しかし、この『Doubles』のテーマは、単に双子を撮ることではない。アメリカに生きる有色人種の女性たちに貼られたレッテルと誤解を問うているのだ。そこには、ステレオタイプで描かれがちな黒人女性たちの友情や姉妹愛(シスターフッド)が浮き彫りになっている。「このシリーズが、黒人のもつ愛と絆を映し出してくれると願っています」とミランダは言う。「そして、願わくば黒人女性の"ウーマンフッド(女性のあり方)"を」

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ブラック・ライブス・マター(Black Lives Matter)の運動は、どのようにあなたを写真へと突き動かしたのでしょうか?
2014年以前にも写真は撮っていたけれど、わたしがドキュメンタリーやフォトジャーナリズムに進んでいくのに、Black Lives Matterが大きなきっかけとなっていたのはたしかです。その後、何年にもわたって語り継がれるであろう抗議運動を記録するという発想に、使命感すら感じました。わたしが敬愛する若い写真家の多くも、あの運動をきっかけにして作品づくりの方向性を変えました。嬉しいことです。

繊細に黒人を表現している他のアーティストで注目しているのは?
最近になって、エリカ・ディーマンのシリーズ『Silhouettes』を見たんですが、その完全性に感服しましたね。ナケヤ・ブラウンの写真はすべて好き----彼女が打ち出している、黒人女性の髪に関する政治的側面への視点が好きです。ジョン・エドモンズの最新作品は、黒人男性とドゥーラグ(頭に巻くナイロン製の生地)を捉えているんですが、わたしはその作品群をずっと追い続けています。

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あなたの祖母は、このシリーズにどのような影響を与えたのでしょうか?
『Doubles』のアイデア自体、祖母から得たものです。彼女には双子の姉がいたんですが、その大叔母はわたしが高校2年生のときに亡くなりました。突然の死でした。亡くなる数日前に口論になって、それが大叔母との最後になってしまいました。このシリーズを続けている理由のひとつは、わたしが、大叔母とまた再び心を通わせ、最後の瞬間を塗り替えたいと願い続けているからなのだと思います。

『Doubles』に起用されている双子の姉妹たちは誰なのでしょうか? どのようにして彼女たちと出会うのですか?
さまざまな方法でスカウトしました。「黒人の双子姉妹を誰か知らない?」なんてメッセージを送って回ったから、それを受け取った友達は変に思ったでしょうね。でも、そんなメッセージが巡り巡って、『Doubles』の双子たちの多くを見つけることができたんです。でも、しばらくはまったく見つからない時期もありました。あまりに見つからないので、「もしかしたらニューヨーク周辺なら見つかるかも」と、Instagramで長い時間をかけて黒人の双子姉妹をハッシュタグ検索したこともあったぐらいです。そうやって見つけたのが、キンバリーの双子の娘、サラエとサライでした。その後、地下鉄で偶然にもタメイカという女性が連れていた娘のトーリーとタイラに出会いました。長い1日の終わりに満員のDトレインに乗っていたときのことでした。意を決してタメイカに話しかけ、「娘さんたちの写真を撮らせてもらえませんか?」とお願いしたんですよ。「報われた」と感じたのは、双子たちがこのプロジェクトに関わることをとても喜んでくれていると分かったときでしたね。

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黒人コミュニティにおけるシスターフッド(姉妹愛)というテーマを掲げることを重要と考えるのはなぜですか?
黒人女性が、怒りや嫉妬、憎悪といったように、シスターフッドとは真逆のイメージで捉えられ、歪められ続けているからです。わたし自身も「態度が悪い黒人女性」と勝手にレッテルを貼られているように感じたことが多々あります。そうしたイメージは、黒人女性に対するステレオタイプを強めるだけでなく、わたしたち黒人女性が自身に対して抱くイメージにも大きな悪影響をおよぼすのです。そういった間違ったイメージに意義を唱えるこのテーマは、わたしにとって重要です。

なぜマスメディアは、黒人女性をそのようなイメージで描くのだと思いますか? それはどうすれば変わっていくのでしょうか?
そうした、軽薄な"おきまり"のイメージが打ち出されてしまう原因は、たとえばメディアや制作現場で黒人女性が就いている仕事数の少なさを見れば明らかです。そのステレオタイプを払拭していくには、これまでとは異なる視座を頻繁に打ち出していく必要があるでしょう。

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「ウーマンフッド」はあなたの作品の核をなしているテーマですが、男性の双子の写真を撮って「ブラザーフッド(兄弟愛)」を写し出そうとは思わないのでしょうか? それも同じだけ重要なことであるように思えます......。
100%同感です。今年初めに、実は双子の兄弟も撮りはじめていて、4組を撮り終えています。今年中にはシリーズとして完成させたいと思っています。

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現在、他に取り組んでいるシリーズはありますか?
この社会の1%といわれる富裕層に焦点を当てたシリーズの制作を進めています。以前、『Land of the Free』というタイトルのプロジェクトを完成させたんですが、そこから派生した企画です。わたしが抱いている"アメリカン・ドリーム"への好奇心を満たすようなものになっています。

あなたの作品を見て、人々に何を思ってほしいですか?
見た人が世間やマスメディアが言うことに疑問を抱いてくれればと思います。写真を通して、メディアでなかなか描かれることのない人たちに対する社会の理解を高めていきたいです。

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Credits
Text Zio Baritaux
Photography courtesy and copyright Miranda Barnes
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.