小島ファッションマーケティング代表

変貌するデニム事情

ライトオンやマックハウスからジーンズメイトやマルカワまでジーンズカジュアルチェーンの低迷が続いているが、その一方で今春夏はダメージ・デニムやダンガリーの緩いワイドパンツが人気を呼んでいる。一見は相反する動きをどう説明すればよいのだろうか。

売れ筋リストに上がってくるデニムアイテムを検証してみると、ダメージ/キレイ目を問わず今風の緩いワイドパンツばかりで、数年前に流行ったストレッチのスリムパンツは一部に残るだけで、二昔前に流行った細身のセレブジーンズはもちろん、履き込んだ風合いを愛でる前世紀のワークジーンズなどまったく出てこない。当然ながらジーンズにもトレンドがあって過去のウエアリングや価値観は使い捨てられていくのだと会得されるが、ジーンズカジュアルチェーンは何故、トレンドの波を乗り換えていけないのだろうか。

ジーンズのトレンドは根本的価値観が12年、機能やウエアリングが6年、加工などの面やシルエットはほぼ3年のサイクルで変化して来たように見える。セレブジーンズの12年間の後、リーマンショック前後からのローカルカジュアルの失速を経て主流は機能やシルエットを低価格で訴求するSPAジーンズに移り、我が国では'ノームコア'から'ゆる抜け'スタイリングへ移る隙間に加工デニム復活の短い山があったのではないか(米国市場では無かった!)。

かつてのデニムは'ジーニング'というワークカジュアルの域を出なかったが、'セレブデニム'を契機にキレイ目からダメージまで面もTPOも広がり、今世紀に入っての低価格ジーンズや高機能ジーンズの普及によってウエアリングの際がなくなり、今やどうにでも化けられるファッションアイテムのひとつとなった感がある。それゆえ今風の'ゆる抜け'シルエットに載せたトレンドディティールとしてのハードクラッシュが享けているというのが今シーズンのデニム事情なのだろう。

今秋は久方振りにデザインと装飾が復活し、ボディフィットなシルエットも一部で戻って来る。古典的なアメカジやジーニングには逆風が強まる一方、トレンドとしてのデザインデニムや加工ディティールは手を替え品を替え登場するに違いない。ジーンズカジュアルチェーンも'ジーニング'というウエアリングの枠を超えて身軽にストリートトレンドを追えば存分に羽撃けるのに、今更、何に拘っているのだろうか。

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小島健輔