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【仕事の仕方】会社にはヒラメ族やイワシ族がたくさんいる

太田伸之

クールジャパン機構 代表取締役社長

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 先日、教え子の1人からメールをもらいました。簡単に言えば、いま職場で冷や飯を食っています、と。原因は、お客様のためを思って売場での改善を訴えたら、どうやら上司に「生意気言うな」と怒鳴られ、飛ばされたようです。社訓には「顧客第一」と書いてあるはずなのに、お客様は二の次って管理職、結構いますよね。本人にはショックな異動だったでしょうが、数字と経営者しか目に入らないおバカな上司はどこにもいるもの、運が悪かったと割り切りいまは大人しくしているしかありません。我慢していればそのうちおバカな上司の本質が社長にバレて異動になるでしょう、「ガンバレよ」としか言えません。

 別の教え子からは退職の挨拶が届きました。時代遅れの会社の方針に意見して周囲に白い目で見られ、やはりこちらも部署異動、我慢の限界だったようでキレちゃいました。世の中ビジネスの仕方はどんどん変化しているのに、経営陣は昔のビジネスモデルを改善する気がなく、下から改革案をあげても上層部に却下されるだけ。「新天地でガンバレよ」と返信しました。

 以前よりは増えたと言っても日本は転職を善しとしない国、大手企業は転職組少なく、いまだ新卒採用に重点を置いています。「同じ釜のメシ」って言葉も生きていますから組織内で我慢するのが美徳、バカバカしいから転職するって人はまだそんなに多くありません。でも思うんですよね、同じ釜のメシって、違う価値観の侵入者を排除することじゃないんだけど。前出の退職した教え子はきっと侵入者扱いのままその会社の空気に馴染めなかったんでしょう。

 数年前の一連の食品会社の不祥事、昨年の原発事故と電力会社の対応、そしてここ数日ニュースで大きく取り上げられている大津市のいじめ自殺事件、あるいは原発公聴会のやらせ疑惑もそうですが、どれも問題発生したら当事者はまず隠す、情報は開示しない、記者団の質問ははぐらかす、糾弾されると事実を小出しながら言い訳する、やがてことが大きくなるとやっと事実を持ち出し、最後はお詫び会見、なぜか同じパターンばかりのような気がします。社長が会見に登場する会社はまだマシな方、常務クラスが代理会見して非を認めているのかいないのかわからない説明をするケースは最悪です。

 日本の組織は基本的に下から上に報告、問題が起こった場合トップに報告が届く頃にはストーリーがすり替わっていることが多いとも感じます。だからでしょうか、会議は議論の場ではなく単なる報告会、みんなで意見を出し合って方向を決めて行くなんて組織は少ないのでは。あるいは、お客様や取引先からのクレームが上層部には届かない仕組みになっています。途中で誰かがもみ消しますから。

 幸い弊社は毎日お客様からのクレームは幹部全員にメール配信されます。サービスに対するクレーム、商品に対するクレーム、設備に対するクレーム、改善のご提案、中にはお褒めの言葉もレポートされ、クレームに対して関係部署はどのように対処したのか、あるいはどんな調査をしているのかも添えてあり、現場で日々どんなことが起きたのかよくわかります。多くの百貨店もクレームの幹部配信はしてるでしょうが、これって重要なことですよね。

 前の会社でも、お客様のクレームが毎週の役員会に上がる仕組みを作りました。クレームに対しては責任者が東京以外であってもお詫びに参上する、販売を中止して商品回収する、公的検査機関に商品検査を依頼して結果が出たらちゃんとお客様に説明する、いろんなケースがありました。社長就任時には「お詫び専用グッズ」を作らせ、「これを使わずにすんだら最高」と言いましたが、実際には何件かお客様にお届けしたようです。

 お客様から1件もクレームがないなんて商売はありません。ブランドで言えば、全国に数十店舗を構えていれば小さなクレームも含め何がしらかのクレームは頻繁に発生するものです。百貨店ならば、館内にたくさんある全ての係でクレームゼロのパーフェクトな商売なんて難しいでしょう。問題は誠意を持っていかに対処するか。クレームは対応さえ誤らなければ熱烈ファンを作るチャンスでもあります。クレームに誠意を持って対応したお陰で、怒り心頭だったお客様の気が晴れ、かえって熱烈なファンになってくださった例は少なくありません。

 今日のテーマはクレームではありません。仕事の仕方です。

 政財界に顔の利くある大手広告代理店役員のKさんに教わったことがあります。「会社にはヒラメとイワシがたくさんいるんだよ」と。ヒラメとは、上に目が付いている、つまり上司の顔色だけをうかがっている種族。イワシは常に群れをなす、つまり「横断歩道、みんなで渡れば怖くない」種族、1人では何もやらない、何もできない人のこと。前職でも「上の方を見るな、お客様の方を向いて仕事しよう」と口酸っぱく言いました。ブランドビジネスは体質的にどうしてもカリスマデザイナーや経営トップの顔色をうかがうヒラメ族が多く、本来真っ先にケアしなきゃいけないお客様は二の次になりやすいからです。こういう会社、カリスマが退くと崩壊するものです。

 業績分析をする会議でも、ヒラメ族は業績不振を認めたがらず言い訳三昧。天候不順のせいにしたり、商品が良くなかったと言い訳したり、問題が本当はどこにあったのか細かく分析しません。そして業績不振の店舗や部門のことには触れたがらず、業績が順調なところを説明したがります。営業の会議で「雨が続いたものですから」と言い訳する営業マンに「その店だけ雨が降ったのか、違うだろ」と叱ったものです。この会議を開く趣旨は、上層部が問題箇所を糾弾するためではありません。不振部門にどんな問題があったかを正確に調査分析し、これを短期的に、中期的に、あるいは長期的にどう改善するか作戦を話し合うための会議なのです。

 分析は個々のフィーリングで語ってもらっては困ります、ちゃんとデータ分析がなくてはなりません。店単位で言うなら、常連のお客様とフリーのお客様それぞれのお買上げ人数とお一人様あたりの単価、売上総額、それぞれの前年対比をまず調べさせます。仮に前年に比べて常連のお客様の人数が減り、客単価は上がったけれども売上増に結び付かなかった場合、売上減は主にどこに原因があったのか、それはこの先どう改善するのかあるいは改善できないのか。店長らベテラン販売員の異動が原因で常連のお客様売上が減少したケースもありますが、じゃあそれをこの先どうカバーするのか、いつになったら前年並みに戻せるのか、営業部門はどうサポートするのかを話し合わないと...。

 ブランド全体の売上不振ならば、どんなアイテムが、どんな価格帯が、どんな色系統や素材が動かなかったのか、主にどんなお客様タイプに評判悪かったのか、その問題点は翌月改善できるのか、それともシーズン中にはカバーできるのか、売れ筋商品の期中フォローは間に合うのか否かをみんなで議論する、これが本来の営業の会議。不振部門の糾弾でなく、それをどうカバーするのかをみんなで考える、だから「議論」がなくてはなりません。ただの報告会ではいけないのです。

 ヒラメ族やイワシ族の中には、改善策を自分が言い出して、もしもそれがうまく機能しなかったら責任をとらされるんじゃないかと保身優先、議論に加わらず傍観するだけの人もいるでしょうが、こんな輩が多いと組織は瓦解、業績は一向に上がりません。組織内での情報共有のためには報告会も必要ですが、問題点を徹底分析してみんなで改善策を議論する会議はもっと重要です。

 しかしながら、この「みんなで議論」をなぜか嫌がる人、日本には案外たくさんいますよね。会社のためを思って改善策を発言したら、「オレのメンツはどうなる、キミは発言しないでくれ」と幹部から忠告され、日がたたないうちに解任されたって話、いくつもあります。前出教え子たちのように、良かれと思って提案したら煙たがられて人事異動というケースも多いでしょう。でも、沈黙ヒラメ、様子見イワシ軍団に明日はないと思います。根拠を調べ、勇気を持って発言する人が多い会社は絶対に伸びますし、幹部はそういう闊達な議論ができる空気を組織内に作ってあげねばなりません。

 それにしても、優秀な人材が冷や飯食ったり、我慢できずに退職したり、同じ釜のメシが同じ水槽のエサになってる会社が増えてきたから日本経済は低迷しているのではないでしょうか。

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