Ota Nobuyuki

「雑貨の配置」と「女性目線」に着目 梅田阪急百貨店を歩いて

太田伸之

クールジャパン機構 代表取締役社長

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 先週日帰りで大阪の売場を視察してきました。あちこちで元部下の販売員たちと顔を合わせ、売場状況をあれこれヒアリング、大阪事情ある程度把握できました。売場の動向はやはり現場で働く販売スタッフに訊くのが一番、情報くれた皆さん、ありがとう。

 今回のお目当ては昨秋増床オープンした梅田阪急百貨店。平日の昼下がりなのに館内はお客様でいっぱい、この日歩いた他の百貨店とは比べ物にならないくらい込み合っていました。新しいビルなので天井は高く床はピカピカ、セール期間中ながら通路はすっきり歩きやすく、ショップの大半は見やすく、広いフロアを歩いていても気持ちいいし疲れません。女性のお客様ならたっぷり時間をかけてショッピングしたくなるだろうなあ、そんなワクワク空間でしたね。

 売場を歩きながら「この感覚、百貨店では久しぶりだなあ」、と。10年ほど前、ロンドンのセルフリッジが大改装した直後がちょうどこんな感じでした。改装前のセルフリッジは古臭くて面白みは全くなし、視察をパスしても良かったくらいの百貨店。でも改装によって同じお店とは思えないほど美しくファッショナブルに変身、売場を歩きながら衝動買いしたい気持ちを抑えて写真をいっぱい撮ったものです。新装梅田阪急にはあのときと同じような感覚を味わいました。

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 最も目を引いたのはコスメと雑貨の構成比率がかなり高いこと。婦人服売場にただ洋服が並んでいるという構図にはなっていませんでした。2階化粧品売場以外に、3階「うめはんシスターズ」にはメイクアップフォーエバー、ジルスチュアート、アナスイ、ポール&ジョーのコスメ、4階「うめはんジェンヌ」にはキールズ、アヴェダ、サボンなど、6階「プレミアムクローゼット」にも1階の雑貨売場にもコスメ関連グッズがあります。そして各フロアにはちょっとしたアクセサリーやバッグ、シューズの一角、どこを歩いてもコスメと雑貨が目に飛び込んできます。よくぞここまで集めて散りばめたと思います。

 2001年の銀座松屋のリニューアル時、私たちも1階化粧品売場以外にOLさん対応の2階にはコスメのセルフ売場を、ミセス対応の4階には高級化粧品のショップを導入したことがあります。特に2階セルフ売場ではテスターを多めに並べて「お客様に遊んでもらおう」、洋服だけ並べては売場全体に変化がなく面白くない、そう考えての配置でしたが、梅田阪急はもっとダイナミックにコスメを各フロアに並べていました。商品カテゴリー分類にとらわれない売場づくり、これはショッピングするお客様の目にきっと新鮮に映るのではないでしょうか。

 現在のバーグドルフ・グッドマンを視察するたび3階インターナショナルデザイナーフロアで感じることですが、パリ、ミラノ、ニューヨークコレクションの花形デザイナーブランド服をたくさん並べても売場にはフレッシュな空気が流れず、だからお客様の人影はいつもまばら、「格好良い洋服だけ並べても売場に感動はないな」、と。お客様も販売員の数も少ないので3階は写真撮りやすいんですよね。ところが、2階の特選婦人靴フロアは常時お客様と販売員がいっぱい、彼らの目線が気になって隠れ撮影のチャンスはありません。ライバルのバーニーズもサックスも同じ、人気デザイナーの洋服がズラリ並ぶフロアと特選婦人靴フロアとでは密集度に格段の開きがあります。

 現在私たちも銀座松屋の大型改装プランを練っている最中ですが、ニューヨーク有力店の近年の状況を頭に入れて議論しています。百貨店にとってブランド婦人服は重要な商材ですが、人気ブランドの婦人服だけ並べてもお客様が新鮮に感じる売場はできない世の中、雑貨やコスメ、アクセサリーの構成比率を可能な限りアップし、しかも各フロアに大胆に分散配置することがいまどきの売場づくりではないかと考えています。その点、梅田阪急の雑貨の配置は大変参考になりました。

 かつてニューヨーク西57丁目にあったヘンリ・ベンデル、当時は「モデルご用達」のオシャレな大型専門店として有名でしたが、洋服売場に突然食器やリビングアクセサリーが置いてあり、売場で宝探しをする気分になれたものです。商品カテゴリー分類の法則にとらわれず、一見無造作に洋服以外の商品を陳列することで意外性が生まれる、それが当時のベンデルの大きな特徴でした。あれからもう30年ほど経過しましたが、当時のベンデルの手法はいま再び評価されるべきだと思います。この場合、グレード分類、テースト分類を軽く考えるとただのゴチャゴチャした売場になってしまう危険性があります。そうならないために、そのフロアは、そのゾーンは主にどういうタイプのお客様を戦略ターゲットとして想定するのか、つまり顧客分類をこれまで以上しっかりやらないといけませんね。

 もう1つ梅田阪急で強く感じたこと。女性の目線、感性です。実際のところはわかりませんが、女性の等身大意見をかなり吸い上げたのではないでしょうか。百貨店マンだけで売場リニューアルを議論すると、どうしても効率重視、売上重視、そして交渉しやすい既存の取引先優先になりがちです。男性がブランドマトリックスを作ってショップの名前をフロアマップに貼付けていく、そう感じる百貨店リニューアルをこれまでたくさん見て来ました。そしてその大半はリニューアルの失敗。女性のお客様がどう感じてくださるか、どうすれば喜んでいただけるかのマーケティングと議論、これからの売場づくりではとっても重要な点だと思います。阪急の売場を歩くと、男性の存在をあまり感じないんです。これ、素晴らしいことです。

 梅田阪急はリニューアルオープンしたばかり、開店景気もあるでしょうが、売場で感じたワクワク感が失われない限りしばらくの間大阪で「ひとり勝ち」状態が続くのではないかと予測しています。ところどころ「なぜこのブランドがこのゾーンにあるんだろう」と疑問に感じた箇所はありますが、今回のリニューアルは「百貨店にはまだまだやれることがある」と教えてもらったようです。我々も見習わないと...。

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