ブロガー

美意識やセンスをメディアでカテゴライズして見せるのは難しい

どうも鳥井(@hirofumi21)です。

先日、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんが書いていた「どうしたらワタシが好きな日本酒を選ぶことができるのか?」というお話、これがとても納得しました。以下で少し引用してみます。

ヘンな例えだけど、マーガレット・ハウエルの白シャツのようなエヴァーグリーンな上質感、あるいはミナ・ペルホネンの手触りの良いラブリーさ、あるいは今一緒に服をつくっているenricaの柔らかな色気、そういう「上質さ」と「親密さ」が同居しているようなクオリティ。これが今のトレンド。

じゃあこういうお酒をつくれるのは誰なんだって話だよね。
答えは決まってる。いいファッションが理解できる「お洒落醸造家」さね。

新しい美意識の潮流をちゃんと身体で感じている、そういう人のつくるお酒がいいよ。

ということで、最近ちょくちょく聞かれる、

「どうしたらワタシが好きになれるような日本酒を選べますか?」

という質問に対しては「自分と世代の美意識の近い人のつくる酒がいい」とお答えしときます。

引用元:酒とファッションはよく似ている。トレンドという逃れられぬ宿命。 | hirakuogura.com

「自分の世代の美意識に近い人のつくる◯◯がいい」

これって、日本酒に限らず全てのジャンルにおいて今起こっていることだと思います。ファッションも、アートも、グルメも、音楽も、ありとあらゆる分野の選択という選択において、もうカタログに載っている商品を選ぶ時代じゃない

そのモノ自体のクオリティにこだわるのは一部のオタク層のみの楽しみへと変化し、ライトに楽しみたい層にとっては、全てが"人"の美意識やセンスに頼った選択になってきていると思います。

あまりにも選択肢が多すぎて、その選択基準自体も複雑になってきている時代だからこそ、その人の美意識やセンスが信用できるのであれば、全てお任せしてしまいたいっていう消極的な理由もどこかにあるのだとは思います。

「センスや美意識が信頼できる人のつくるもの・選ぶものであれば、提案されるもの包括的に信用したい欲求」という感じでしょうか。

美意識やセンスをメディアでカテゴライズして見せるのは難しい。

そうすると、その人がどういった価値観や美意識を持って、モノづくり、モノ選びをしているのかが非常に重要になってきますよね。ここが自分の「暮らし」を彩る上で一番の重要ポイントになるわけですから。

でも、これって見せるのがとても難しいんですよ。とくにこれをカタログのような従来型のメディアに落とし込んで見せるとなると難しい。なぜなら、美意識やセンスをカテゴリーやキーワードには落とし込みづらいから。

例えば、「パン屋さん」っていうカテゴリーをつくるのは簡単で、そこに「天然酵母」っていうキーワードを埋め込むのも比較的簡単です。ただ、たとえば「ジャムおじさんのような美意識を持っていて、無償の愛を込めてパンをつくっているパン屋さん」っていうカテゴライズはめちゃくちゃ難しい。似たような価値観でもやっぱり十人十色ですからね。

その人のセンスや価値観というのは、ある程度ストーリー化しないと見えてきません。強いていえばメディア自体が、そのカテゴライズそのものになるしかないのかもしれません。

「あなたは一体どんな人間なんですか?」というもっと根源的なところ。

たぶん、その人の頭の中を覗き込めるぐらい、日々の日常の中の選択を追わないと知り得ることが難しい部分なのだと思います。そして、惹かれる側の理由というのもかなり曖昧なもの。「なんとなくこの人のセンスが好き」ぐらいの話です。

ロジカルに捉えて「やっぱり俺はこの人の価値観が好きだ!」とはなりづらいですよね。例えば上記のパン屋さんの例で言うと、もしかしたらパンに対するこだわりだけがすべてじゃないかもしれない。

たまたまロングインタビューの中で語られていた「季節のなかで一番春が好きです。」っていう唐突な話から、その人の美意識に惹かれてしまい、その人のパンを選ぶようになるということだって十分にありえるわけで。

今のこの潮流の一翼を担っているのが、個人発信のTwitterやFacebookやブログ、そして最近ではInstagramだということなのでしょう。だから、そういった美意識やセンスの自己表現が上手い人たちは、自然と選ばれていくようになっていく。

あくまでも「作品」や「商品」というのは、価値観や美意識を晒すための一つの要素にすぎなくなってきていて、今一番必要なのは「あなたは一体どんな人間なんですか?」っていうもっともっと根源的なところ。

誤解を恐れずに言えば、全く同じ作品を作ることができる2人の職人がいたとしても、その持ち合わせている美意識や価値観によって、片方は即完売でも、片方は一生売れ残るというような現象が起きうるのが今の時代なのだと思います。

最後に

今日書いたような内容を踏まえて、じゃあメディアやお店がどのように対応していけばよいのか、それはきっと以前書いたような下記の記事のような話に行き着くのだろうなぁと漠然と思っています。

次の時代のセレクトショップがセレクトするのは商品ではなく、人。 | 隠居系男子

「スナック」と「ブティック」の話がおもしろい!スナックのようなウェブメディアを目指して。 | 隠居系男子

それでは今日はこのへんで。

ではではー。

鳥井弘文