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「いじめがイヤで、自分で脚を切ると決めた」両足義足で活動するアーティスト片山真理とは?

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両足義足で活動するアーティスト・片山真理さん。両足とも脛骨欠損という主幹を成す太い骨がない病気を持って生まれ、9歳のときに両足を切断しました。以来、その自分だけの身体を介した世界との関わりを、作品にし続けています。

2014年12月から2カ月にわたって、初めての個展を開いた真理さん。アーティストとして一つの区切りを迎えた2015年、「幼少の頃からの思い出、日常の現在、そして未来への希望へといったさまざまなレヴェルのものを、言葉にできない諸々の形象を通して繋げていく(アートアワード東京丸の内、2012)」と評された真理さんの作品をより深く知る「これまでの歩み」をインタビュー。連載形式でお届けします。

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姉と妹

妹はいま中学生。彼女を見ながら、いかに私が「ふつうとは違う」子ども時代を過ごしていたのかを、あらためて気づかれされます。妹と比べると、私は妹が出会う3分の1以下くらいの人たちとしか、子ども時代に接していなかったのではないかと思います。

まず外に出なかったし、運動もしなかったし、友だちと遊びに行くこともなかったし、塾にも行ってなかった。代わりに、お医者さんや看護師さんなど、大人との付き合いはものすごく多かったです。小児病棟にいても、私は特殊な事例だったので先生がたと関わることが多く、年齢が近い子たちと関わる機会はあまりありませんでした。

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入院中は院内学級に通っていましたが、2〜3人しか子どもはいません。その子たちも、心臓病など重篤な病気に罹っている子ばかり。ママから「◯◯ちゃん、亡くなったんだって」と聞かされることもしょっちゅうでした。私の病気は「生死をさまよう」のとは違いましたが、「生きるか死ぬか」という闘いをしている子たちとの関わりは、私にも、きっとママにも、その後の死生観に影響を与えたんじゃないかと思います。

ママは、私を本当に自由に育ててくれました。好きなようにしなさい、やりたいことをやりなさい――その方針は妹の子育てでも変わりません。何が違うかというと、妹はいろんなものに興味があって、なんでもやりたい。一方の私は、何にも興味がない。学校でも、休み時間は一人で漫画を描いていて、友だちと遊ぼうという気に全くなりませんでした。あと、妹には「自分でやるって言ったんだから、最後までやれ。やらないなら、今すぐやめろ」とめちゃくちゃコワい。私のときは、途中で何かをやめたいと言いだしても、そんなことは言われなかった気がします。もしかしたら、「しょうがないわよね」という気持ちが、ママにもあったのかもしれません。

お尻の穴が2つある!

最初の入院は鎖肛の手術。肛門と腸がつながっていないというもので、新生児疾患としては奨例数も多いものです。でも気づかないでいるとお腹がパンパンに膨れるので、すぐ手術しなければなりませんでした。

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鎖肛もあったし、左手の指も2本指、脚も見て分かるほどに内反脚。だからママは産んですぐは、私に会わせてもらえなかったそうです。お医者さんからは、「黄疸が出てるから、一回病院のほうで面倒見ます。何日かしたら再会しましょう」と言われていて、ママも「黄疸ならしょうがない」と思っていたようです。

生まれて10日目。「実を言うとあなたの子どもは奇形です」と切りだされ、初対面を果たします。でもママは「そんなことより、初めて会った我が子がかわいくて、脚や手のことは何も気にならなかった」と振り返ってくれました。

4〜5歳くらいまでは、鎖肛の影響で脚よりもお腹のことで病院によく罹っていました。保育園の頃にも、一度肛門を作り直す手術をしています。大きくなるにつれてずれちゃったのか、肛門があまりにもおまたの穴に近過ぎて......「ちょっとこれはいかがなものか」と。そのうえ、二箇所からうんちが出るようになってしまっていました。

いまでも、脂っこいものを食べ過ぎたり無理が続いたりしてしまうと、腸閉塞などを起こしやすく、入院することがあります。

「見ちゃいけないものを見た」

お腹の手術と平行して、幼少期には脚の手術も何度か行っています。内反脚がひどくても、最初は「矯正したら歩けるようになるんじゃないか」と、筋を切って柔らかくするなど、内反脚を治す手術をしていました。

補装具を使いながらも、4〜5歳の頃は駆け回って自分の脚で地面を感じることはできていました。けど、曲がった脚には変な負担が掛かるため、成長とともにガタがくるように。「これ以上は難しいかもしれない」ということで、離断手術を受けることになります。

その頃の写真はぜんぜんありません。自分の体を鏡や写真に映し出すことを避けていたんだと思います。脚を隠していない写真は、生後1〜2カ月頃のものはありましたが、その後のはぜんぜんありません。自分でも、鏡や写真など、客観的に見れるものには写らないようにしていました。

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「生まれたときから、見て分かるほど変形していた」という。

記憶に残ってるのが、4〜5歳のとき。玄関にあった全身鏡に、うっかり脚を映してしまったときのこと。素脚の自分を見た瞬間、ゾオっと鳥肌が立って、「見ちゃいけないものを見た」という、おどろおどろしい後ろめたさを感じたのを覚えています。もちろん自分の脚なので、ふだんから自分の目で見てはいるんですが、鏡のような客観的な視点で見れるものでは見ないようにしていました。
それ以来、「怖いもの見たさで見たいけど、思い出すだけで怖い」という日々が続いてました。自分の脚は、切るまで「何か怖いもの」として捉えてたんだと思います。

「こんなものがあったら、そりゃあみんな嫌がるよね」と、いじめやハブにされるのはぜんぶ脚のせいだ、という気持ちはありました。いじめがなかったら、脚を切るのも遅くなっていた気がします。

いじめのはじまり

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補装具を付けて生活をしていた。かなり圧迫させるため、ミミズ腫れやアザが絶えなかった。

小学校3年生のときに、いじめが始まりました。最初は地区の野球クラブに入っている男の子たちから。彼らは、いわゆるエリートで、「スクールカースト」でもトップにいるような子たち。「気持ち悪い」「汚い」「臭い」とか、最初は言葉の暴力からでした。私がプリントを配ると、指先でぞうきんをつまむように持つ。私が給食を配ると食べない。そんなベタなものに始まり、一人で歩いてると、数人でわざわざ走り寄ってきて円で囲み「きもい!」と口々に吐きかけて走り去っていくなど、どんどんエスカレートしていきました。私もしだいに、学校を休みがちになっていきます。

だけど、当時の担任の先生は、「男の子たちがそういうことやるのは、まりちゃんの目つきが悪いからだと思うの。もうちょっと優しい目をしてくれたら、その子たちもきっと分かってくれると思うわ」と私に指導。
それをママに言うとママもブチギレて、「もう学校行かなくていい!」となり、本格的な登校拒否になりました。

そんなタイミングで、ちょうどお医者さんから「脚を温存するか義足にするか」という話が出たので、「もう学校行きたくないし、脚も嫌いだし。手術をすることでふつうの靴を履けて、ふつうの見た目になるんだったら脚を切る」と私が決めたそうです。

「〜そうです」と言ったのは、私は最近まで、ママが脚を切ると選択したと思っていたから。
最近になって、おばあちゃんと昔話をしていたら、「あなたこそ、よく9歳で脚を切るって言ったわよ」と言うので、「ママが切るって決めたんじゃないの?」と尋ねたら、「違うわよ、ママは残したかったんだから。でも、『まりちゃんの意志を尊重する』って言って、『切りたいのか、切りたくないのか、あなたが決めなさい』って言ったのよ」と教えてくれました。

いままで、娘の脚を切るって決めるのはすごいことだと思っていたんですが、どうやらそれよりももっとすごいことをママはしていたようです。
私だったら、例えば妹が同じ状況だったら、「どうする? 切る? 切らない? 好きにやっていいのよ」なんて絶対に言えない。その話を聞いて、生まれたときからいつでもママは私の意志を尊重してくれていたんだなと、心底びっくりしました。

片山真理
Website:http://shell-kashime.com/

【プロフィール】1987年生まれ。群馬県で育つ。東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。9歳の時に両足を切断。以後、自身で装飾を施した義足を使用し、セルフポートレートを制作。現在、作品制作の他に音楽、モデル、講演など多岐にわたり活動している。受賞に、群馬青年ビエンナーレ'05(群馬県立近代美術館、2005)奨励賞、アートアワードトーキョー丸の内2012(行幸地下ギャラリー、2012)グランプリ。主な展覧会に「identity, body it. ― curated by Takashi Azumaya―」(nca、2010)、あいちトリエンナーレ(愛知県、2013)など。2016年、六本木クロッシング2016(森美術館)参加予定。

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