Fumitoshi Goto

店舗数を全く増やしていないチェーンストアの非常識な成功事例

激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

在米28年のアメリカン流通コンサルタント

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■それまでのチェーンストア理論の考え方を止めて成長している企業がある。チェーンストアではまずは店数を増やすことだと教えられる。店数を増やすことで価格交渉力を上げていくのだ。店数を倍に増やすことで交渉力も倍にする。店舗を倍々に増やして交渉力が倍々となれば、販売価格を下げられるようになる。価格を下げれば競争力が増し、さらに店舗を増やせるという考え方だ。チェーンストア展開による規模の経済性の追求は、ネットで買い物ができる時代にはそぐわない。チェーンストア展開が時代に適さくなっているため、大量閉店に追い込まれるチェーンストアが後を切らない。チェーンストア理論の考え方を止めるということは、店舗を増やすことによる規模の経済性の追求をしないということだ。オムニチャネル・リテーリング化で成功しているホームセンター最大手のホームデポはその典型事例だ。
ホームデポの2016年度(2017年1月29日)の国内店舗数は1,977店だった。7年前の1,976店だった2009年度から1店舗しか変わらない。一方、ホームデポは2001年~2005年まで毎年100店舗以上を新規に出店していたのだ。過去5年以上にわたり店舗数は変わらないが、過去5年間の既存店・売上高前年比の平均は5.6%の増加なのだ。しかも無理な値下げを行っておらず粗利益率は34.2%と高いレベルで推移している。ホームデポは新規に出店をせず、設備投資の多くをITなどオムニチャネル・リテーリング化に注力しているのだ。他社に先駆けホームデポは昨年度、ネットで購入した商品を店から配達する「ボドフス(BODFS:Buy Online Delivery From Store)」を全店に導入した。アプリ経由からもボドフスで簡単に注文できるようになったのだ。これにより売上950億ドルのうち5.9%がネット売上になっているのだ。ネット売上が増大するばかりでなく、店の売上につなげているのがホームデポがオムニチャネルで成功している要因となっている。
それを支えているのが「ボピス(BOPIS:Buy Online Pickup In Store)」と「ボス(BOSS:Buy Online Ship to Store)」だ。ボピスでは利用者が店に在庫としてある商品をピックアップしにくることであり、ボスはフルフィルメントセンターから店に配送し、利用者にピックアップしてもらうことになる。ボピスとボス、さらにネットで購入した商品を店で返品する「ボリス(BORIS:Buy Online Return In Store)」と合わせてネット注文の約45%が来店するようになっているのだ。利用者の一部がお店でついで買いをおこなうので、既存店ベースの伸びを支えていることになっている。ホームデポはオムニチャネル化の投資でもシステムやハードの導入だけでは終わらない。カスタマーサービスにも注力をしているのだ。店舗スタッフの実働の約60%を接客時間に当てられるようバックオフィス業務を極力省く措置をとったのだ。ミーティングやメール報告、報告書の作成など不要なバックオフィス業務を削減し、売り場での接客を重視したのだ。
オムニチャネル化でも競争力の源泉になるのはカスタマーサービスなのだ。技術が進んでも、小売で必要とされる人間同士の触れ合いとなるハイタッチサービスはハイテク時代だからこそ強調されるべきところなのだ。

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ホームデポの店舗数の増減と既存店ベースの推移グラフ。ホームデポの2016年度(2017年1月29日)の国内店舗数は1,977店だった。7年前の1,976店だった2009年度から1店舗しか変わらない。一方、ホームデポは2001年~2005年まで毎年100店舗以上を新規に出店していたのだ。過去5年以上にわたり店舗数は変わらないが、過去5年間の既存店・売上高前年比の平均は5.6%の増加となっている。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。日本はアメリカより5年~10年遅れています。チェーンストア理論を学んだ経営者のなかには、いまだに「まずは100店。とにかく100店。次は200店を達成し、その次は500店」という店を増やすことを重視した考えの人が多いと思います。一方、数年前からアメリカで起こっているような地殻変動を日本でも感じてくる時は必ず来ます。「店を増やしても売上が結びつかない」というこれまでになかった問題に直面することになります。そればかりか新しくオープンしたお店も儲からなくなり、不採算店が増えてくる、という今までの常識が通用しなかった時代が到来します。そんな方には、当社でアメリカの成功事例を学んでもらい、考え方をアップデートしてもらうことになります。あなたがスーパーマーケット経営者であってもエントリー記事にあるようにホームデポの事例を考えてもらうのです。成功事例以上に学びになるのがチェーンストアによるオムニチャネル化の失敗事例です。

⇒失敗の本質は、間違いを犯すときの当事者の心理にあります。なぜそのような心理になったのかを経営者の視点で解き明かすのですね。第三者として理解するのは簡単なんですが、当事者になると客観的な心理が働かなくなります。だから間違いを起こすときの経営者心理を、アメリカ小売業の失敗事例から強く記憶してもらうのですね。幸い人は「耳を傾け、そこから学び、利用するのは、肯定的な情報よりも否定的な情報であることのほうがずっと多い」のです。しかも自分の失敗ではなく他社のしくじりなので、「自己防衛」が働く、自分で自分の失敗を判断するよりも簡単なのです。失敗事例の学習は繰り返すことで記憶をさらに強められますから、自分が当事者になったときにこそ生きた教訓となるのです。何度か当ブログで強調していますが、アメリカ小売業は莫大なお金をつぎ込んで私たち日本人に大いなる学びを無料で提供してくれているのです。成功事例と同様に失敗事例も心理から学ぶべきなんですね。
「アメリカから学ぶことはなくなった」と言い切っていた人は現在、どう思っているのでしょうか。

後藤文俊

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