Fumitoshi Goto

アマゾン、リアル店舗増加の狙い

激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

在米28年のアメリカン流通コンサルタント

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■ネット通販最大手アマゾンのリアル店舗展開がこの1年で急拡大している。アマゾンのリアル店舗はダークストアを含めると547ヵ所にも上っている。
アマゾンが最初に始めた店舗展開は「アマゾン・ポップアップストア(Amazon Pop-Up store)」だ。ポップアップストアとは通常、期間限定の仮店舗のことであり、一般的にはモールなどショッピングセンターの通路や広間にカウンターやショーケースなどで仕切って出店するブース型のキオスクを指す。アマゾンは2年前、サンフランシスコ市内にあるウエストフィールド・サンフランシスコセンター(Westfield San Francisco Centre)にアマゾン・ポップアップストア(Amazon Pop-Up store)1号店をオープンして以来、モールなど52ヵ所の展開となっている。最近ではコールズ内にも「アマゾン・スマート・ホーム・エクスペリエンス(Amazon Smart Home Experience)」として出店しており、現在稼働しているロサンゼルスやシカゴのコールズ内の10店舗を含め、82ヵ所まで増やす見込みだ。なお約10坪となるアマゾン・ポップアップストアは同社が開発したスマートスピーカーのエコーや電子書籍用リーダーのキンドル、タブレットのファイア、ファイアTVなど各種デバイスを展示・販売している。
アマゾンは今月、ロサンゼルス近郊センチュリーシティのウエストフィールドSCにリアル書店「アマゾン・ブックス(Amazon Books)」をオープンした。2015年末にシアトル近郊にアマゾン・ブックス1号店をオープン以来、12店舗目となるリアル店だ。モールなど100坪~200坪のテナント出店となるアマゾン・ブックスはすべての書籍の表紙を正面に向けた「面陳(面陳列)」「面展(面展示)」陳列を採用している。またカスタマーレビュー数や電子書籍からのデータ、販売数などを参考にしたキュレーション(括り)展開の他、価格表示が一切されていないことなど、これまでの書籍チェーンとは全く異なる売り場となっている。アマゾンはダイナミック・プライシングを採用しており、需給状況に応じて価格が毎日のように変動している。そのため、店頭での価格表示が電子値札でもないかぎり不可能なのだ。決済がキャッシュレスということもアマゾン・ブックスの特長だ。クレジットカードやデビットカードのみの支払いで、現金決済ができないようになっているのだ。
アマゾンは大学のキャンパス内や学生街にピックアップ拠点を拡大しているが、一部に物販も行っている「インスタント・ピックアップ(Instant Pickup)」がある。ピックアップ拠点はアマゾン・ロッカーの他、返品用の宛先をプリントアウトする端末、梱包用デスク、梱包材、スタッフが常駐するアシスタント受付カウンターを備えている。インスタント・ピックアップはこれらの場所で注文から2分以内で商品をピックアップできるサービス。アマゾン・アプリから注文となるインスタント・ピックアップは、対象となる商品が自販機にあるような冷たい飲み物やお菓子、一部の家電製品やアクセサリー類の数百点だ。注文を受けるとピックアップ拠点に待機するスタッフがバックルームにある倉庫から商品をピックし、2分以内に注文商品をロッカーに入れるのだ。ロッカーにアクセスするバーコードを受け取った利用者はバーコードをロッカーのスキャナーにかざすことで自動的にドアが開きコーラなどをピックアップできる。インスタント・ピックアップは現在、カリフォルニア大学バークレー校のキャンパス内にあるピックアップ拠点(Amazon@ASUC Student Union)など6ヵ所で展開している。
アマゾンは、店舗展開とはいいがたいダークストア(dark store)の展開も行っている。店の中で買い物ができるインストア・ショッピングはない倉庫のダークストアとは、専用の駐車スペースがついた食料品の受け渡し専用拠点だ。アマゾンは今年5月、「アマゾンフレッシュ・ピックアップ(AmazonFresh Pickup)」を正式にオープンした。アマゾンのドライブスルー専用スーパーは「ドライブアップ・ストア(drive-up store)」「クリック&コレクト(click & Collect)」とも呼ばれ、利用者がネットで注文した生鮮食品などを、車から降りずに商品を受け取るサービスストア。アマゾンフレッシュ・ピックアップはアマゾンスタッフがダークストアで商品の選択と袋詰めを行い、予約した時間に顧客の車まで運んでくれる。手数料はなく最低注文金額の条件や制約もないが、利用できるのは年会費99ドルのアマゾンプライム会員のみとなっている。年会費99ドルのプライム会員の上に月々14.99ドル支払っているアマゾン・フレッシュ会員なら、注文からわずか15分で注文品を受け取ることができるのだ。アマゾンフレッシュ・ピックアップはワシントン州シアトルのソードー地区とバラード地区の2ヵ所の展開となっている。
一般公開が待たれているのがレジのないコンビニエンスストア「アマゾンゴー(Amazon Go)」だ。シアトル市内にある50坪程度のアマゾンゴーは人工知能とコンピューターヴィジョンを駆使することで、レジでの精算なしで食品を買うことができる。扱う商品は卵やミルク、パンなどのステープルズ商品にサンドウィッチやサラダ、コーヒーなどの飲み物、さらにアマゾン独自のミールキットやワインもある。アマゾンゴーは、改札のような入り口でスマートフォン・アプリにバーコードを表示させチェックインする。商品を手に取って店を出れば自動的に課金される仕組みだ。アマゾンは昨年12月にアマゾンゴーを発表したが、いまだにアマゾン社員の利用に限っている。関係者の話によると、AI(人工知能)を駆使したハイテク店舗なのだが、混み合うとシステムがクラッシュするため入場制限を設けているのだ。20人以上の来店では、お客のトラッキングが困難で、特定のお客が手に取った商品も判別できず、AIが機能不全に陥るとの話なのだ。今のところ、店内に数名のお客のみで、商品を手に取る動作もゆっくりという条件下なら問題はない。不具合が報じられて半年以上も経過しているが、まだ公開される目途が立っていない。
アマゾンのリアル店舗展開で最も店舗数が多いのが、今年6月に買収したホールフーズ・マーケットだ。ホールフーズは7月現在、アメリカ国内やカナダ、イギリスに465店舗を持っている。買収以降、ほぼ全ての店舗にはアマゾン・ロッカーを導入し、買収を記念して大々的な値下げも行っている。20代~30代のミレニアル層をターゲットに低価格で訴求する小型フォーマットの「365バイ・ホールフーズ・マーケット(365 by Whole Foods)」を中心に出店を行っている。365の3号店目となる365ベルビュー店は今月、閉鎖となったものの、サンフランシスコ郊外コンコード地区にある「ヴェランダ・ショッピングセンター(Veranda shopping center)」に7店舗目がオープン予定となっているのだ。時期は明らかにされていないが、NYブルックリンやロサンゼルス郊外ロングビーチ地区、ロサンゼルス近郊ノースハリウッド地区など18店の新規オープンを計画している。本体のホールフーズや365には、アマゾン・ロッカー以外にアマゾンのプレゼンスはあまり感じない。しかし今後はホールフーズ内でエコーやキンドルなどアマゾン製品の販売も可能であり、リアル店舗を生かしたオムニチャネル展開が拡大するのは確実だ。
数量限定となるセール商品を利用者に渡し販売が完了する、移動式ピックアップ拠点のトレジャートラック(Amazon Treasure Truck)も店舗に含めるとアマゾンのリアル店舗展開は550ヵ所以上となるのだ。

トップ画像:サンフランシスコ市内にあるウエストフィールド・サンフランシスコセンター(Westfield San Francisco Centre)にあるアマゾン・ポップアップストア(Amazon Pop-Up store)1号店。
20171030amazon2.jpgロサンゼルス近郊センチュリーシティにオープンしたアマゾン・ブックス(12店舗目)。

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UCLA近くにあるアマゾン・ピックアップ拠点。

20171030amazon4.jpgシアトルのバラード地区にあるアマゾンフレッシュ・ピックアップ。

20171030amazon5.jpgレジなしコンビニエンスストアのアマゾンゴー。

20171030amazon6.jpgロサンゼルス郊外サンタモニカにオープンした365バイ・ホールフーズ・マーケット。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。アマゾンは26日、第3四半期(7月~9月期)決算を発表しました。売上高は前年同期比34%増となる437億ドルでした。売上高には買収したホールフーズの売上13億ドルが含まれています。約5兆円となるアマゾンの売上は買収効果もあり過去最高を記録しました。事業の柱を占めているネット通販は前年同期比22%増の264億ドルでした。アマゾンの売上は伸びていますが、積極的な投資姿勢は変わりません。純利益は2.56億ドルで、売上高に占める率はわずか0.6%です。アマゾンの売上高と純利益をグラフにすると分かりますが、売上高が右肩上がりになっているのに純利益はずっと横ばいです。売上の多くが投資に向かっているので利益が出ていないのです。利益よりも投資。投資とは将来の利益のために多額の金銭を投入することです。それがエントリー記事に挙げたリアル店舗展開でもあります。ホールフーズ以外のほとんどの店は黒字化していないと思います。

20171030amazon7.jpgアマゾンの売上高と純利益推移(四半期ベース)グラフ。第3四半期(7月~9月期)の売上高は437.44億ドルとなり、四半期ベースでは前年の第4四半期(10月~12月期)の売上高437.41億ドルを上回る過去最高となった。アマゾンの売上は伸びている一方で、積極的な投資で純利益は2.56億ドルしかない。売上高に占める率はわずか0.6%だ。投資とは言い換えれば実験であり、学習だ。実験から得られる洞察など、学習を積み重ねることでプライム会員により良い「体験」を提供できる。プライム会員の獲得により、フライホイール効果を生み出す。

⇒こういったアマゾンのリアル店は売上を上げるのを目的にはしておらず、プライム会員の獲得に役立っているのです。プライム会員が増えれば、アマゾンで購入する金額も必然的に増える仕掛けをつくっているのです。この仕掛けをアマゾンCEOジェフ・ベゾス氏は「フライホイール効果(Flywheel:弾み車)」と語っています。フライホイール効果はビジネスコンサルタントの大家、ジム・コリンズの書籍からベゾス氏が拝借したものです。ベゾス氏が描いていた成長のフライホイール効果とは、オンライン販売による「低コスト構造」で生み出した「低価格」とサービスを含めた「品揃え」が実現することで、より良い「顧客体験」を生み、顧客体験が「客数」を増加させ、サイト訪問者数に惹かれて「売り手」が増え、さらに「品揃え」が拡大し、そしてさらに「顧客体験」が上昇する、という循環し続ける成長の弾み車です。アマゾンはより良い「顧客体験」に、リアル店舗展開を含めようとしているのです。
後藤が心配しているのは日本の多くの小売店やチェーンストアです。勤勉さとデフレマインドでギリギリまで経費を削減していることで、投資はもとより教育など未来に向けた戦略が全くなされていないことです。多くの百貨店やアパレル店を含めアマゾンやネット企業にやられるチェーンは増えていきます。

20171030amazon8.jpgアマゾンCEOジェフ・ベゾス氏が描いた「成長のフライホイール(Flywheel:弾み車)効果」。成長のフライホイール効果とは、オンライン販売による「低コスト構造」で生み出した「低価格」とサービスを含めた「品揃え」を実現することで、より良い「顧客体験」を生み、顧客体験が「客数」を増加させ、サイト訪問者数に惹かれて「売り手」が増え、さらに「品揃え」が拡大する、そしてさらに「顧客体験」が上昇する、という循環し続ける弾み車だ。

後藤文俊

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