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アマゾンと小売りの未来

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コンサルタント視点からアパレル・ファッションを分析

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1月16日の日経新聞に「アマゾンと小売りの未来」というタイトルで日本、東南アジア、アメリカの流通業に携わる3人の識者のインタービューによる特集記事が掲載されていました。

アマゾン・ドットコムの急成長が、既存の流通を脅かし、業績不振に陥る企業が増えて行く、いわゆる「アマゾン・エフェクト」をあらためて考える良い機会になりました。

ネットにも同記事が掲載されています。

日経新聞 アマゾンと小売りの未来

アマゾンは消費者とっては極めて便利なECモール、コンビニに次いで生活に欠かせないショッピングインフラのひとつとなりましたね。

しかし、良品計画の金井会長が言われるように

「アマゾンで働く人たちは『自分たちが小売業者だ』という意識は薄いだろう。(中略)アマゾンは膨大なデータを分析して新たな事業やサービスの開発にいかしている。たまたまビッグデータが集まる小売業をやっていて、小売りで儲(もう)ける優先順位が低い。だから低価格販売も可能となる。」(「  」内引用)

米アマゾン・ドットコム社の2016年度の決算書(FORM10K)に目を通すと
(単位10億円 $=120円換算)

◆売上高       2014   2015  2016
北米           6,100  7,645  9,574
インターナショナル  4,021  4,250  5,278
通販事業計      10,121 11,895 14,852
AWS            557   946  1,466
合計          10,679 12,841  16,318

◆営業利益      2014   2015  2016
北米           43    171   283
インターナショナル  -77   -84  -154
通販事業計      -34    87   129
AWS            55   181   373
合計            21   268   502

◆営業利益率    2014   2015   2016
北米           0.7%   2.2%   3.0%
インターナショナル  -1.9%  -2.0%  -2.9%
通販事業計      -0.3%   0.7%   0.9%
AWS           9.9%   19.1%  25.4%
合計           0.2%   2.1%   3.1%

世界で年商10兆円に迫るアマゾンの儲け=営業利益は

北米の通販事業ではわずか3%

日本が主力のひとつであるインターナショナル通販事業では長年赤字(売上対比2~3%分くらいの赤字)が続き

世界の通販事業合計では1%の営業利益も出していない状況 (2016年度営業利益率0.9%)

一方、急拡大で売上を伸ばし、売上シェア9%のAWS(クラウドレンタルサーバー)事業は25%の営業利益率で会社全体の75%の利益を上げているという構図です。

つまり、売上の90%を占める通販事業は薄利、あるいは地域によっては赤字でとにかくシェアを拡大し、別事業で儲けてその薄利をカバーしているというわけなんですよね。

そんな構造の会社が

アリックス・パートナーズ マネージング・ディレクター デビッド・バサック氏が言われるように

「アマゾンは価格や配達サービスなどで高いハードルを設定してしまった。他社が同じサービスを提供し、その上で利益を出すのはとても難しく、多くの小売業者が苦しんでいる。」(「  」内引用)

要は、アマゾンは通販の利益度外視で、

消費者を品揃えの豊富さ、価格の安さ、サプライズなサービスを次々に繰り出し、期待をどんどん高め・・・

既存流通企業の品揃えやサービスの旧態依然とした陳腐さを浮き彫りにし、後手を打たせ、

競合を次々に駆逐してしまうという戦略を持った企業なんですよね。

その点からすると、これまで流通革新を起こして勝ち組と呼ばれて来た企業、

低価格衣料の品質の常識を変えたユニクロにしても、

トレンドファッションの価格の常識を変えたZARAやH&Mなどの外資ファストファッションにしても、

彼らは本業で儲ける、営業利益をしっかり10%以上稼ぐことを前提にした革新であったのと比べると

利益度返しのアマゾンはある意味、掟破りであり、それゆえに、より強敵で、同じ土俵に上ろうものなら、ほとんどの企業は利益は出せない、ということなのです。

20年前のユニクロフリースブームから始まるSPAブーム、

10年前のH&M日本上陸から始まるファストファッションブーム、

これからの10年はその時よりも、競争は熾烈で、自社の立ち位置をはっきりさせ、商品やサービスを磨かなければいかない

商品そのものの価値を高めながら・・・スマホを操り、より利便性を求める消費者のために、コミュニケーション力やサービスを磨かなければならない時代。

寒波の気候に助けられたと言えるこの秋冬シーズンの業績回復に浮かれることなく・・・

流通業界は、今、危機感をもって革新を進めなければならない時代の真っただ中にいます。

身を引き締めて臨みましょう。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

齊藤孝浩

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