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【インタビュー】NIRVANAのTシャツが20万円の価値をもった理由とは? -vol.3-

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2017年12月にリリースされたNIRVANAのTシャツブック『HELLOH?』。制作の中心となったのは、NIRVANA関連のTシャツを100枚以上所有する門畑明男。前回までで、NIRVANAを好きになり、カート・コバーンのコスプレをするようになり、そして、関連するTシャツを収集した経緯を紐解いた。今回は、いよいよ、収集したTシャツをもとに製作した本について聞く。

そして、門畑明男とともに製作したラボラトリー/ベルベルジン®︎、オフショア(offshore)の的場良平も、この本への想いを語る。

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カート・コバーンの幼少期のフォトプリント。

前回までで、NIRVANAを好きになった経緯と魅力、Tシャツ収集の過程をお伺いしてきました。カート・コバーンを好きになり、100枚ものTシャツを集め、そのTシャツをもとに、本を出版することになった経緯を教えてください。

NIRVANAのTシャツの値段が上がるのと同時に、この本をつくりたい、といつからか想い描くようになりました。「持ってるTシャツを売ったらヤバイよ」と人からいわれると、その前に、こういう本をつくれたら面白いのかな、と思うようになりました。

なるほど。では、どのような基準で、この本に掲載するモノをセレクトしたんですか? 門畑さんが収集する基準と同じように、オフィシャルもブートも問わず、90年代半ばくらいまでのTシャツであれば掲載されているのですか?

そうですね。ブートも載ってますね。活動期間を考えるとオフィシャルで、こんなに多くのTシャツを出してるとは思えないですからね。だから、基本ブートが多いんですが、ブートにも面白いものが多いです。

他には載せる載せないの基準はあったのですか?

僕が持ってるもので、20枚くらいは省いたんですけど、デザインがショボイとか、何となく本の質を下げると感じたモノは省きましたね。

では80枚くらいは門畑さんの私物なのですね?

そうですね。全部で133枚掲載しているんですが、80枚は僕の所有してるモノで、他は、いろんなかたからお借りして掲載しています。

本の構成の意図を教えてください。

『ブリーチ』(Bleach, 1989)『ネヴァーマインド』(Nevermind, 1991)とアルバムのリリース順に追っていけるようにしているのと、カート・コバーンが、幼少期から27歳で死ぬまでの変遷がわかるように意識してつくりました。あとは、1930年代のアイテムとは異なり、書けることがグラフィックについてだけなので、Tシャツ自体の説明を、それほどしないようにしました。

Tシャツ以外のカート・コバーンが着ていたアイテムも掲載していますよね?

それこそコスプレしていたときは、モヘアのニットは10枚くらい持ってました。全く同じ、というのは難しかったですけど、似た感じのは、買っていましたから、同じように掲載しています。

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米国の大手百貨店、J.C.Penneyが展開するストアブランド、TOWN CRAFTのコーデュロイジャケット。

カート・コバーンが着ていたコーデュロイのジャケットも本には掲載していますが、なぜTOWN CRAFT(タウン・クラフト)というメーカーのものだとわかるのですか?

〈古着あるある〉かもしれないですね。例えば、フェイクアルファの店長の沢田は、映画の『乱暴者』(The Wild One, 1953)が大好きなんですけど、ジョニーが着ていたダブルのライダースについて、めちゃくちゃ研究しています。普通、肩についている星のスタッズは、10ポイントでついているんですけど、映画でペロッとめくれているシーンがあるんです。それを見ると、1本で止まってるんですよ。つまり、後から打ち直してリペアしたことがわかるんです。また、腰に付いてるベルトはどこから始まってるとか、襟の角度とか、そういうのを全部調べて、完璧に把握してるんですよね。そういう諸先輩がたの影響もあって、カート・コバーンが好きなら、それくらい知っておかなきゃ、と思いました。このコーデュロイのジャケットも、たまたま、お店に入ってきて、ボタンの数と切り替えの角度、襟の大きさとか、全部カート・コバーンの映像と見比べてたんです。あとは、カート・コバーンが、このジャケットを着てる映像で、ちらっとインナーのボアが見える瞬間があって、そういうのを総合的に判断して、多分これだろうと。古着屋に入って得た知識の賜物ですね。

でも画像は荒いですよね。そこまで詳細にわかるものなのですか?

写真集はもちろんですが、今はウェブがあるので、それこそ、一挙手一投足、様々な角度で、いろんな写真を、めちゃくちゃ研究できますからね。他にも、襟のステッチもわかったりするんですよ。映像で本当にじっくり見て、これハンドステッチだなとか、何と無くわかるんですよね。

ハンドステッチでつくられたアイテムは、いつの時代につくられたんですか?

今でこそ、あえてハンドステッチでレプリカをつくることもありますが、当時は、ハンドステッチで縫われていたのは50年代までなんです。技術が発達して、ミシンで綺麗に縫えるようになると、あえて手間でしかない方法でつくるわけないですからね。そういうのも、判定するポイントです。

ハンドステッチかミシンかを映像で見ただけでわかるんですか?

わかりづらいですけど、ハンドステッチは、襟がボコボコしてるんです。それで、ミシンが入ってるか入ってないかわかるんです。あとはステッチの幅が広ければハンド、狭ければミシン。なんとなくわかりますね。

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1960年代に製作されたREVEREのモヘアニット。

なるほど。確かに特殊技能ですね(笑)。モヘアのニットも〈REVERE〉というブランドだ、と掲載していますね。

これは、たまたま、ラボラトリーに入ってきたんです。見比べたら、全く同じなのでは、と。他にもたくさんモヘアのニットを見てきましたが、あの柄で、あのカラーは、このブランドでしかないんですよ。ただ、〈リベレ〉と読むのかどうか、そこら辺は、まだわかってないんですけど。

アーガイルのモヘアのニットは、カート・コバーン好きがみんな似たようなものを買って着てましたが、このブランドのものだと、誰も知らないですよね。実際、カート・コバーンが脱いでタグが見える写真も見たことないし、判定しようがなかったですもんね。

あとは、ボタンの数とステッチ、それとニットの目の粗さですよね。そういうのは、古着を見ればみるほど、古着屋の経験を積めば積むほど、わかるようになります。例えば、これは50年代のアイテムだなとか、見た目の雰囲気だけで、おおよそは判定できるようになるので。

やばいですね。

この狐のワッペンが付いているカーディガンも、昔は本当になかったんですよね

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米国の大手百貨店、J.C.Penneyのストアブランドのカーディガン。

それこそ、ラボラトリー/ベルベルジン®︎に売ってるイメージがあります。

そうですね。僕が的場に教えました。たまたまフェイクに入ってきて、あっ、もしかしたらカート・コバーンが着ていたカーディガンかも、って買ったんですよね。それから、その後、10年くらい見たことがなくて、次に見たのがラボラトリー/ベルベルジン®︎に入ったときです。それで「カート・コバーンの着ていたカーディガンだよ」と教えてあげました。それから、ちょっと値段が上がったんです。15年くらい前は千円ちょっとで買えたんですけどね。ただ、僕が古着屋なので言いますけど、アイテム自体のクオリティーは全然良くないですから。カート・コバーンが着ていたからこそ、価値があるアイテムだといえますね。

網目も粗いし、チクチクしますよね。

アクリル素材なんです。だから洗濯機で洗えるカーディガンですね。

ただのラコステのパクリだと思ってました(笑)。また、赤と黒のボーダーのモヘアを着ていたのも有名ですよね。

これは、まだブランドまではわかってないです。ただ、モヘアで古着のニットっというだけで、基本的にレアなんですよ。それだけで掲載しています。

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1950年代のデッドストックのパジャマ。

では、カート・コバーンが実際に着ていないものでも、連想させるものなら掲載しているアイテムもあるのですね。また、パジャマも掲載していますよね?

そうですね。カート・コバーンが着ているパジャマは、襟にステッチの跡がないので、なんとなく50年代だなっていうのはわかるんです。あとは、カート・コバーン自身がスリフトで買い物することが多かった、と聞いているんで、もともと、モヘアのニットも60年代のものを着てるし、ネルシャツも、だいたい70'sっぽいのを着てるので、カート・コバーンが生まれる以前のアイテムを着ているイメージがありました。そういうのを総合的に判断すると、もちろん、柄もそっくりなので、この掲載しているパジャマを着ていたのではないのかと。正確には、このブランドだ、というところまでは、わかっていません。

この掲載しているパジャマはデッドストックですか?

そうなんです。これはお借りして掲載しているんですが、送っていただいて、箱を開けた瞬間、やばかったですね。ちょっと鳥肌立ちました。

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また、カート・コバーンがダニエル・ジョンストン(Daniel Johnston)のTシャツを着ていたのは知っていましたが、ポートランドの実業家が描かれた時計をしていたのは知らなかったです。

トム・ピータソンっていう実業家なんですが、この企業のTシャツを着ているライブシーンがあるし、この腕時計をしてる写真もあるんですよね。

なぜ、トム・ピータソンのTシャツや腕時計をしてるのですか?

調べたら、カート・コバーンが、子供の頃、この企業のCMのセリフを真似していたらしんです。それで大人になって、着てるんじゃないでしょうか。実際のところ、なぜ、これを着用していたかは、わからないですけどね。

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この掲載されている人形はなんですか?

〈クールエイドマン〉っていうアメリカのジュースのマスコットです。カート・コバーンが子供の頃に、このジュースが好きで、その粉末で、髪の毛を染めた、というのは知っていたんです。また、この人形を手に持っている写真も知っていました。そして、現在、ソロイストというブランドをやっているミヤシタタカヒロさん(元NUMBER(N)INEデザイナー)がこのマスコットを持っている、とわかり、お借りして掲載させていただきました。

門畑さんは、このようなTシャツ以外のアイテムも集めているんですか?

それこそ、コスプレをしていたときは集めていたんですが、ほとんど手放したんですよね。お金もかかりますし、しまう場所もないですし、Tシャツに絞った方が気持ちいいなと。

なるほど。また、この本には音楽の情報があまり掲載されていません。音楽業界の人は関わっていないのですか?

写真はユニバーサルさんに提供してもらいました。

例えば音楽業界のかただったら、カート・コバーンと実際にコミュニケーションをとっているでしょうが、そのような情報は、なぜ入れなかったのですか?

来日の際に演奏したライブハウスに、半券など、何か残ってないか、と電話したりもしましたが、何もありませんでした。主催者側に返却しているんでしょうか。つかめませんでしたが、そこは、重要ではなったんです。

NIRVANAの音楽の良さを伝えようとは思わなかったんですか?

このアルバムはこうでこういう流れで、とかは言われ尽くされてますし、僕の音楽の説明は、説得力がないだろうなと。僕なんかがいってもしょうがないですよね。

音楽ライターに頼む方法もあるかと。

そこは考えませんでした。そういう内容の記事を掲載しても面白かったかもしれないですね。

音楽とファッションがリンクして、より面白くなったんじゃないでしょうか。

そうですね。そこまで頭が回りませんでした。

NIRVANAの本質である音楽に触れないことで、音楽ファンから反発されるかもしれない、と懸念しましたか?

嫌なファンはいるだろうな、とは思いました。でも、自分が関わってなくて、この本がリリースされても、僕は気にならないので、そこは大丈夫かなと。

カート・コバーンは、ビジネスシーンに巻き込まれ、自分の思惑とは関係なく物事が決まっていくことを、とても嫌っていたようですが、もし、カート・コバーンが生きていてこの本をみたら、と想像したときに、しかも、NIRVANAでビジネスをするということに、罪悪感はなかったのですか?

たぶん嫌いだろうな、と思います。生きていたら、たぶん、文句を言う気がします。

的場さんはどうですか?

的場(以下M)それはあるでしょう。こんなのつくられたら、絶対嫌なはずです。「お前ふざけんなよ」と怒鳴られるでしょうね。

会ったら、唾でしょ。

M:会ったら殴られる。

でも、「やった! カートに唾かけられた!」みたいになるでしょうね。

なるほど(笑)。

でも、カート・コバーンにそう思われようが、それ以上に好きだったから本を出せましたね。カート・コバーンを見て感動して、カッコ良いな、と思って掘って、そうやって自分みたいな人が、この本が出たことによって、カート・コバーンについて、もっと知れますよね。そうなったら嬉しいです。また、カート・コバーンは、こういう本が嫌いだよね、とみんなわかってるはずです。だから、文句を言う人もいるだろうけど、あんまり気にしてません。やらなかったら、やらなかったで、なんで出さなかったの、と言われるでしょうから。

門畑さんの独断と偏見で構いませんので、実際にカート・コバーンって、どんな性格の人物だと思いますか?

遺書でも、わかると思うんですけど、ちょっと卑屈で、言葉の裏返しが結構ある人なんじゃないかな、と想像しています。ただ、それも、逆に純粋すぎるからそうなってしまうのかな。だから、誰かに何かをするように促されることを、極端に嫌がったんでしょうね。
あとは、もともと理想が高すぎて、そこに追いつけないどころか、ドンドン離れてしまって、ドラッグにハマったんじゃないでしょうか。例えば、カート・コバーンが、日記などの最後に、Kurt CobainのCをKに変えてKurt Kobainと書くときがあるんです。普段はありのままの現実を綴っているんですが、たまに、頭の中で考えた理想を、実際にやったていで書くときがあります。そのときは、最後のサインをCからKに変えていたんです。確かに、カート・コバーンが想い描いた理想は、本当にカッコ良い話ばかりなんです。最もわかりやすいのが、ファースト・シングルを出す前に、「Love Buzz」というカバーをリリースしているんですけど、作詞作曲がそのサインになってるんです。あの曲がすごい好きで、こういう曲をつくれるアーティストになりたい、という願いが込められいたんじゃないでしょうか。でも、実際には作詞作曲は自分ではしてない。だから、偽りの自分がつくったことにしたんだと思います。

的場さんは、実際にカート・コバーンって、どんな性格の人物だと思いますか?

M:スゲエ、ナイーブなかたなんじゃないですかね。今回、本を出したタイミングは、生誕50周年、というお祝いも兼ねています。だから、僕らファンに勝手に祝われて本までつくられて、ありがた迷惑って感じですよね(笑)。

また、カート・コバーン自身もTシャツが、すごい好きなんだろうな、という印象があります。自分のバンドのTシャツは着てないけど、例えばSONIC YOUTHだったりMUDHONEYだったり、仲間のバンドのTシャツは着ていますよね。仲間愛じゃないけど、もしかすると、そのバンドを自分が着ることで盛り上げよう、としてたんじゃないでしょうか。
また、カート・コバーンが自分でつくったTシャツのグラフィックは、センス抜群ですよね。カッコ良い、と洗脳されちゃってるからかもしれないけど、音を知らなくても、カッコ良いTシャツだな、と感じるはずです。

なるほど。的場さんにとって、それほどまで、想い入れのある他のバンドはいるんですか?

M:ないですね。それくらい威力があるというか、アイコニックだからこそ、こういう本がつくれるはずなんですよ。ただ、あくまで、僕らは関係者でもなく、単なるファンなんで、いろんな人の力を借りて、説得力のある本にしたかったんです。だから、僕は門畑が持ってないモノを、持ってる人から借りたり、あくまでサポーター的な役割で、この本をつくりました。そもそも、本をつくる資金繰りもそうです。

クラウド・ファンディングで資金を集め、出版にこぎつけたんですよね? なぜ、そうしたんですか?

単純に資金がないのと、あとはクラウド・ファンディングならつくろうとしてる段階で宣伝にもなるかと。また、一緒に関わり、つくってくれる人が増えたのも大きいですよね。普通は、見る側、CDを聴いてるだけだなのに、好きなモノをつくる側、提供する側になれるのは、魅力的なんじゃないでしょうか。僕は本当に、ただ、多くのTシャツを所有してるだけで、好きの度合いは、みんな変わらないはずですよね。だからこそ、みんなでやりたい、という想いが強かったですね。

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なるほど。最後に、これまで、NIRVANA、カート・コバーン愛と、この本の製作秘話を聞いてきましたが、門畑さんにとってカート・コバーンより好きなものってあるんですか?

実は、カート・コバーンより、ルパン三世のほうが好きです(笑)。モンキーパンチも全部集めていて、アニメも70年代の緑のジャケット時代から、全部DVDで持ってます。

やっぱり、古いもの、しかも収集するのが好きなのですね(笑)。ありがとうございました。