i-D magazine

世界初のジェンダーニュートラル・セレクトショップ「The Phluid Project」が目指すもの

i-D Japan

ファッションマガジン「i-D Japan」の日本版

フォローする:

NYのノーホー(NoHo)地区に革新的なセレクトショップがオープンした。ヒュルイド・プロジェクトは何を目指しているのか?

Mikelle Street

Photography Diahann Williams

 

ヒュルイド・プロジェクト(The Phluid Project)」はマンハッタンにある新しいセレクトショップ。おそらく世界初となるジェンダーフリーの服屋だ。「企業国家アメリカに奉仕し続けるよりもっと目的ある、生きるための理由が必要だと感じたんです」と、百貨店メイシーズやVictoria's Secretのようなブランドで25年以上働いてきたオーナーのロブ・スミス(Rob Smith)は言う。「ヒュルイド・プロジェクトは、若い人たちが自由でいられて、リアルな世界に声を届けられる空間を提供します。私が若いころ、こんなスペースがあったらよかったと本当に思いますね」

ノーホー(NoHo)地区にできたこのショップでは、洋服はスタイルによって分けられている。Gypsy SportやOak、Dr. Martensなどが、ショップのオリジナルブランドと並べられているのだ。「世界にはたくさんのジェンダーフリー・ブランドがあります。ほとんどのものは、5万円5やそれ以上の高価なもの。だから若い人にも手が届くようなものを探すのには苦労しました」。商品について、スミスはそう語る。ヒュルイド・プロジェクトが扱う商品は3500〜1万5000円程度で、そのほとんどが5000円前後。それらの服は特注で作ったジェンダーレスなマネキンにスタイリングされている。コミュニティから採用されたスタッフに、だれでも使える試着室、アイデンティティや社会運動についてのトークイベント。さらにはコミュニティを基盤とした団体のための無料のミーティングスペースも備えているヒュルイド・プロジェクトは、小売店の改革を始めるには理想の場所だといえる。

180525-1-20180303_003.jpg

ジェンダーに対して反旗を翻すファッションや「ジェンダーニュートラル」は単なるトレンドには留まらない。ふたつの性の枠を外れた着こなしを社会が理解し、受け入れ始めているのだ。「まだ男・女にとらわれている部分もある」と、元ファッション・エディターで現在はスタイリストとして働くデレク・グエン(Derek Nguyen)は話す。「エディターだったころ、ファッション撮影のために服を選ぶと、これは男性のタートルネックだとか、これは女性のタートルネックだとか言われたんです。僕はいつもそんなのバカバカしいと思って、そういうものは除外していました」。そんな些細なことと思うかもしれないが、こうした強固な二元論はいまだ根強く存在しており、例えば試着室のようなところで顕著に現れる。

「昔は、僕が列に並んでいると、男性の列に並んでくださいと言われることもあったり。すごく恥ずかしかった」とグエンは言う。「ときには、何かを買ったあと、似合わなくて返品することもありました。列に並んでも、もしかしたら拒否されるかもと考えてしまうから」。そうした不快感を売り場で経験した者もいる。

「10代から20代前半のころまで、"女性服"に惹かれていました」。南カリフォルニアのチャールストンで育ったメイクアップアーティストのデミ・ワシントンはそう話す。「トランスジェンダーとは思われていなかったけど、ストレートの店で買い物をするのは居心地の悪くて。Forever 21に行くだけなのに--服は大胆だけど、そこにははっきりと仕切りがありました。自分が"女の子の服"をほしがっているんじゃないかって、誰かに見られているように感じていました」。しかし、ワシントンとグエンもしだいに、「男・女」の外側にあるアイデンティティを発見していった。服を着るという行為を通して、自身を掘り下げていき、自己理解を深めていったのだ。「性の二元論に固定されたままのブランドがひしめく中で、社会が規定した"人はこうあるべき"という理想を取り除くというのは、僕にとってとても難しいことでした」。小売店がこうした理想をさらに推し進めているとグエンは指摘する。「だから僕の実験的アプローチは遅々としたものでした。こうした場所があったらもっと早かったのではないかと思います」。しかし、ヒュルイド・プロジェクトに何かを見出したのは、一部のコミュニティだけではない。

180525-1-20180303_001.jpg

「色や質感、そしてシルエット以外はほとんど何も求めていません」。アーティストでありミュージシャンでもあるドン・クリスチャンは、自らの買い物流儀についてそう語る。掘り出し物のほとんどは、リサイクルショップで見つけたもの。いつもレディス・コーナーから始めるのだという。「女性もののほうがたくさん見つかりますから」

「体格の良い人たちにとって、ジェンダーレスな着こなしがしやすくなったのだと思います」と、クリスチャンは続けた。

だが、デザインにおいてさえも繰り返される別の問題がある。「男性服と女性服では、ブロックが違うのです」服飾デザインの図面を参照しながら、デザイナーのクリス・ハリングは言うファッション工科大学の卒業生である彼は、従来のジェンダー感を抑えた服作りが認められ、2018年1月にFITデザイン企業家プログラムに加えられた。「そもそも身体のつくりが違いますから、どうしたら異なる体型の人に合う服をデザインできるかに挑戦しています。それがジェンダーレスということなのです」。ヒュルイド・プロジェクトは、こうした多くの問題に立ち向かおうとしている。

180525-1-20180303_004.jpg

しかし、このショップでは、こうした特別なマーケットにおいて確固とした地位を築いた大手ブランドや人気ブランドを取り扱っていない。現在、TelfarやEckhaus Latta、 Vaqueraは取り扱いブランドから外れている。ヒュルイドが求めているのは、ジェンダーに囚われていないブランドや、女性服の手法でメンズウェアをデザイン(またはその逆)しているブランドだ。例えば、Palomo SpainやWales Bonner。「こうしたブランドは、従来"女性向け"とされるものに近い、非常に美しい男性服をつくっています。そして、メンズウェアとしてランウェイを行っているのです」と、スタイリストのラフティ・ジャナイアは言う。

スミスは将来、ヒュルイド・プロジェクトでもTelfarやEckhaus Latta、 Vaqueraを取り扱えたらと願っている。「ジェンダーフリー」をテーマにしたトランクショーを開催したり、若い世代のデザイナーたちに自身のブランドを発展させていく手伝いができればと考えている。もっと有名なブランドはどうだろうか? 「値段の問題があるので、やり方を考えているですね。すごくあこがれるけど特権階級向けにならず、1着6万とか10万円とかする服しか買わない人たちに対抗した、限定アイテムをつくるとか」とスミスは話す。「そうしたブランドは、非常に高い値段設定をしています。それに異を唱えたいわけではありませんが、このショップの顧客にも敬意を払いたいのです」

「門戸は開かれています」。このプロジェクトに対して、ほかのブランドとどのように組んでいくかについて説明しながら、彼は言う。「このショップの存在を知った人たちが実際に訪れはじめている。そんな感触があります」

This article originally appeared on i-D US.

最新の関連記事

おすすめ記事

Realtime

現在の人気記事

    Ranking Top 10

    アクセスランキング