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「自分の世界は自分の世界でいたい」アーティストmabanuaが求める音楽

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6年ぶりとなった待望のソロアルバム『Blurred』はどうやって生まれたのか? はたまた、mabanuaはどこから来たのか?

By Mitsutaka Nagira; photos by Houmi Sakata

Gotch(アジカン)、Chara、藤原さくら、大橋トリオ、矢野顕子、くるり、さかいゆう、5lack、米津玄師、SALU、向井太一、RHYMESTER、iri etc...。そういったアーティストに貢献しながら、自身が参加するOvallが活動を再開し、活動自体は活発なmabanuaだったが、一方で、前作『only the facts』(2012)以来、ソロでの新作や新曲を出していなかった。ちなみにmabanuaのソロは彼のパブリックイメージとは少し違っている。Ovallでのイメージもあり、ドラマー/ビートメイカーとしてネオソウルやJディラの話を振られがちなmabanuaだが、『only the facts』はヒップホップやR&Bというよりはインディーロック/ポップなサウンドの印象も強く、音楽性がとても幅広い。だからこそCharaや藤原さくらに起用されていたわけだが、だからと言って、近年のCharaや藤原さくらとの仕事からも最新アルバム『Blurred』のサウンドは想像ができるものではなかった。mabanuaが何を考えているのか、彼が心底求めているのはどんな音楽なのか、僕は全く予想ができなかった。

突如リリースされた『Blurred』は「予想外」と「らしさ」が両方詰まっていて、トレンドとは違うけど、今だから出てくる音が鳴っていた。そして、シンプルで、慎ましいけど、自信と自負に溢れていた。恐らくこのアルバムのことを知るには、mabanuaがどんな人なのか、どんな音楽家なのかを聞かなければ始まらない気がした。

—— 前作『only the facts』が2012年ですから、本作が出るまでけっこう時間が経ってますが、方向性としては遠くないサウンドですよね。

ファーストとセカンドほどの変化はないですね。

—— ファースト『done already』はヒップホップ感があって全く違うサウンドでしたね。

あの当時ってジャジーヒップホップの時代みたいな感じだったんですよ。だいたいみんなサンプリングのビートを入れて、ローズを入れて、ハンチング被ってラップしてるみたいな形式があったんですよね。自分に対して厳し目に言うならそれに乗っかってるだけみたいな感じでしたね。2006~2007年ごろって曲がダメでもそれに乗っかればある程度セールスは出せた。『done already』はそのブームが終わりそうになる2008年に滑り込みで出したアルバムなんで、気に入ってる部分はあるにはあるんですけど、自分自身みたいなものを追い込み切れてない感じがあったんですよね。

—— そこからセカンドの『only the facts』で全く違うサウンドになるはなぜですか?

ジャジーヒップホップに括られるのが嫌だったってのがあったかもしれないですね。元からジャンルが特定できないものを好んで聴いていて、10代のころだとミクスチャーロックみたいなのが大好きで、正統派のロックは聴かなかった。20代前半のOvallが始まる前くらいまでは、ヒップホップとロックが混ざってたり、レゲエとロックが混ざってるような音楽が好きだったので、セカンドはジャンルがあるようでないような感じの音で完成させたかったってのはありますね。

—— ファーストはラップだったんですけど、セカンドは「歌もの」になりましたよね。

もともとが歌で始まっているんですよ。ビートルズやミスチルでギターをはじめて、基本、歌があったんですよ。それがミクスチャーロック・ブームだの、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいなのが出てきて、ラップかっこいいってなって、ラップって何ぞやってなったときにバンドもやってたから、バンドのヒップホップって考えたときにアレステッド・ディベロップメントに行きついて、そこからザ・ルーツに行って、ディアンジェロやエリカ・バドゥとかの波が来てって流れだったので、ラップは自分の歴史のなかの一瞬なんですよ。2005,6,7年あたりに、ラップと歌が共存するネオソウル・ブーム(?)が来ていたんですけど、自分のなかでは、ラップよりも、中学生くらいのころに好きだった歌ものをやりたいって思ってたんですよね。

—— 以前、僕がOvallのインタビューをやったときに、ストリートで弾き語りやってた頃があるって言ってじゃないですか?

それたぶん高1とか高2くらいですね。北浦和に地下道があって、そこで友達と二人でビートルズとかアコギで歌ってました。ミスチルとか、オアシスとか、渋めなものが好きだったんですよ。当時はミスチルも渋かったんですよ。「花 -Mémento-Mori-」とか。

——『深海』のころですね、たしか桜井和寿がレディオヘッドとか聴いてた時期で、全体的に暗いんですよね。

そうです。ドラムの音とかもぐっちゃぐちゃの汚い音だったりするから、当時はそれが気に入ってました。

—— ビートルズもオアシスもUKで。で、レディオヘッドもUKなんですよね。前から思ってたんですけど、mabanuaさんってUKっぽいセンスがかなりあると思うんですよね。

エンジニアの人にも同じことを言われました。「mabanuaさんはアメリカじゃなくて、ヨーロッパって感じだから」って、ヨーロッパ製のフォーカルってフランスのスピーカーを勧められたことがあったんですよ。「そっちの方がやっている音楽と合いますよ」って。

—— 生演奏のヒップホップをやるドラマーみたいなイメージがあるからアメリカっぽく思われがちですけどね。セカンドはUKというかヨーロッパのインディーロックやインディーポップみたいな雰囲気があるんですよね。フランスのタヒチ80が参加してる「sweetest things feat. Xavier Boyer from Tahiti 80」は正にその感じ。

タヒチ80も高校のときに聴いてて、インディーのバンドみたいなのが好きだったんですよね。当時、リボルボ(revolvo)っていうバンドがいて。「Sweetest Things Feat Xavier Boyer From Tahiti 80」のもとになったっていうか、ああいうフィーリングを探していたときにすごい聴いてたバンドなんですけど、それもアメリカじゃなくて、スウェーデンでした。

—— 新作もそうですけど、インディーロック/インディーポップ感があって、それってブルックリンのアヴァンギャルドなやつとかじゃなくて、もっとポップな感じで。例えば、ベニー・シングスと仲良さそうくらいの感じっていうか。

セカンドはベニー・シングスもちょうど聴いてた時期なので、それも残ってたのかもしれないですね。

—— で、セカンドと新作は割と近いですよね。僕が新作を聴いて思ったのは、mabanuaさんの音楽のなかにある変わらないものって何なんだろうなってことなんですよね。

人によってはポップスっていう人もいるんですけど、自分では、フォーキーな感じがずっとあると思うんですよね。なぜずっとあるのかなって考えるとOvallのメンバーでフォーク色が好きなのが俺だけなんです。ブラックミュージックは3人で共通しているけど、セッキー(関口シンゴ)とシンゴッチ(Shingo Suzuki)はジャズが根本にあるんですよね。二人とは違うところをやりたいと思っているから、ソロ活動ではこういうカラーを維持していたかもしれないですね。

—— 個人的にはフォークっぽいって聞いたときにホセ・ゴンザレスが浮かびました。

好きですね。ホセ・ゴンザレスのファンはそれかよっていうかもしれないですけど、映画『LIFE!』のテーマソングの「Step Out」が好きなんです。ああいう浮遊感がある質感が。それはタヒチ80にも言えるかもしれない。最近よく聴いているのはニック・ハキム。あの人はバークリーですかね、なんか専門学校の発表会みたいな映像が上がってて、それもすごくいい歌なんです。最近はCDを出すとインテリ感がどんどんなくなって、歌もあえて下手に歌っているような感じで、サイケデリックもあるし、ヒップホップもあるし、フォーキーさもある。アンノウン・モータル・オーケストラも好きなんですけど、あれも自分の中ではフォーキーに入りますね。

—— ニック・ハキムってのはすごくわかります。Ovallの他の二人はセッションする人って感じがするんですよ。でも、mabanuaさんはソロだとベッドルーム感があるんですよね。あと、フォークって言っても、ループに近くて、展開しないんですよね。

プロデュースの仕事でAメロ~Bメロ~サビみたいなのとか、コード進行があるものはさんざんやってきたので、自分のソロアルバムでそういうものはやりたくないと思ったんです。無心で作っているとBメロに行ったから、サビに行ったからで、コード進行を変えたくないんですよね。「Blurred」もBメロでコード進行は変わりますけど、基本はどの曲も全部同じコードのループみたいな作りです。

—— それって、ある意味ではストイックというか。初期の『veneer』とかのころのホセ・ゴンザレスもそういうところがあって、打ち込みの音楽をギターの弾き語りに置き換えてて、基本的にはループなので、独特のクールな質感があるんですよ。mabanuaさんの新作もシンプルなループで、クールななかでどうやって変化を聴かせるかって音楽ですよね。

そうですね。そうするとメロディーをちゃんと作らないと面白いものにならないなと思ったんです。今回もそうだし、前回もそう。ファーストのときはそれがなくて、メロディーに対して時間をかけて考えるっていうのは基本的にはなかった。Charaさんの影響も大きいですけど、コードとか歌、もしくはアレンジっていうことをすごく考えるようになったのがセカンドからなんですよね。

—— アレンジってところで言うと、バンド感があまりないのも面白いですよね。演奏して自分でサンプリングしたり、多重録音したりしてて、人が出した音の質感だけど、人の存在が薄くて。

オケは誰も参加してないんですよ。前は鍵盤ソロだけカンちゃん(Kan Sano)にお願いしたりとか、いろいろやったんですけど、今回は作詞とフィーチャリングのボーカル二人だけで、誰も参加してないです。

—— へー。でも、人に任せるような場所がない音楽ですよね(笑)。

そうなんですよ(笑)。(origami PRODUCTIONSの代表の)対馬にはずっと言われてるんですよ。もっと人に頼ってもいいんだよって。でも、自分のなかで(テーブルの上にある二つのグラスを動かしながら)いちばん美しい距離感みたいなのを追求したときに、その距離を自分で決めるじゃないですか。このままこれと同じことをやってくれって人に頼んだときに、その人がこの通りやってくれてもなんか違うなって思っちゃったらて、また自分でやり直しちゃうんです。だから、最近わかったんですけど、人に任せられないんですよね。人を信用してないわけじゃないんですけど、自分の世界は自分の世界でいたいという志向が人一倍強いんじゃないかって。

—— 音を聴いたらわかりますよ。新作は音数も多くなくて、削ぎ落としてあって、もうすべての音に関して動かしようがないですよね。

この音は絶対にここのタイミングっていうのが決まってるんで、人に任せると余計に時間がかかってしまうというのもあるし。セカンドのときはこれって必要なのかなとか、ここの位置でいいのかなっていうのはあって、迷ったらそのまま残しといて、そのままリリースしたんですよ。でも、今回は迷った時点で消すようにしました。そういう作り方をしていたせいか音数がどんどん減っていって、あるべき音しかない形になったのかなと思います。

—— 新作は一人の、個人の音楽って感じがして。メロディーがあってビートがあって、それに合わせてここにこういうハーモニーを乗せましたみたいなセッション的な感じがなくて。全然違うプロダクションが絶妙なバランスで重なってる工芸品みたいなイメージ。「じゃ、その場のアイデアで音を乗せよう」みたいなセッション的な可能性がないんですよ。フィーチャリングのボーカリスト以外の他者がいない、すごく独特な音楽ですよね。

音楽業界に6年関わってきたなかで、自分だけの決定権で物事が決まらないことが当たり前になり過ぎちゃってて。いいと思っててもディレクターがダメって言ったらダメだし、俺が「これで行こうよ」って言ってもアーティストが「いやー」っていったら流れちゃう。(プロデュースをお願いされていても、クライアントはあっちなので)。そういう環境でやっていたからか、外界をシャットアウトしたいって気持ちが強くなっちゃったのもありますね。実は、その思いが強くなる前にアルバムの音源はほぼ作ってたんですけど、世に寄せすぎてるなって思って、データをすべて消したんです。

—— 寄せすぎてるっていうのは?

単純なところで言うと、○○っぽいとか、声ネタがあれっぽいとか、ここ数年よく使われてる手法みたいなのを無意識的に随所に使っちゃってて。出したら2、3年もたずに消えていく音になってると思ったんです。だったら、中学くらいからずっと自分の中で養ってきた好きな音楽、さっきの話で言うとフォーキーさとか、ジャンルレスな感じとか、そういうものを経たうえでの自分らしさが今あるはずで、一度、外界をシャットアウトして、自分の中に無意識にやったときに出てくる手癖とかフレーズ、そういうものだけで作るべきだと思ったのがここ2年。それでバーッと一気に作ったのがこれなんですよね。「流行りを無視して」とか「そんなの気にしなきゃいいだけじゃん」って周りは言うけど、その呪縛から逃れるのに苦労した2年でもあったというか。

—— いろんな意味でストイックにそぎ落としたんですね。

だからそぎ落としそぎ落としで。しかも一人でやってるから、果たしてこれでいいのかみたいなことも常に考えてて。「こういうサウンドなのに日本語で歌ってて、世の中にいいと思ってもらえるのか」みたいな不安はずっとあった。けっこうつらかったですね。

でも、さっき山手線に乗ってたら、いきなり横の席の人が「すいません、今、聴いてます。最高っす」とかスマホの画面を見せながら言われて、ちょうど『Blurred』を聴いてくれて、すげーって思って。何気ないことなんですけど、ここ2、3日で周りの反応を聞いて、緊張から解かれつつありますね。

—— いろんなトレンドなどをそぎ落としたり、一回リセットしたりしたから、その分、シンプルで、自分の核の部分がそのまま出てきててると思うんですよ。それはリズムもそうでしょうね。ギミックがなくて、かなりシンプルだけど、その音楽に最適なリズムが選ばれてる。

それも今までの反動だと思うんですけど、「今回よれてないですね」「ずらさないんですね」とか言われるんですよ、「もーーーー」みたいな。リズムで遊ぶっていうギミックが自分の中で少し嫌になってしまったところもあって、そういう人たちの期待に添いたくないと思って、ストレートにしたのももしかしたらあるかもですね笑 ドラムのギミックとか、Jディラ的なヨレって自分の音楽の歴史の中で言ったら、ほんの一部でしかなくて、そこだけすごくクローズアップされるから、こういう部分もあるんだよっていうのをもう少し知らしめたかったのもありますね。

—— あはは、わかります。とはいえ、ここまでフォーキーみたいな話が多かったけど、リズムに関しては、かなりブラックミュージックですよね。R&B、ソウル、ファンクっていう感じ。

ビートは黒くありたいっていうか、それはあったかもしれないですね。自分が追求したいのって、ほんのちょっとの、たとえばキックとベースが人間の感覚で測れるか測れないか微妙なくらいのズレみたいなところなんですよ。

—— ちょっとだけ後ろで、タメがあるって感じるくらいの。

そうそう。ストレートに聴こえるけど、なんでこれ気持ちいいんだろくらいのレベルが好きで。Ovallを再開して思ったのは、シンゴさんのベースって、自分が踏んだキックに対して同時に来ないんですよ。俺がキックを踏んだら、ほんのちょっとだけ後ろから入ってくるんですよ。キックをベースがマスキングしないっていうか、それってドラマーにとってはすごく気持ちがいいことで、自分のキックが増強されたみたいに、ブーンブーンって入ってくるあの感じがすごい好きで。そこの微妙な塩梅で俺のドラムに合わせてくるのがすごい気持ちが良いんです。再開したときに俺にはこのベースしかないのかなって思ったくらい。そういう部分がこのアルバムに影響を与えてるのはあるかもしれないです。

—— 鍵盤のハーモニーとかっていわゆるR&Bとかゴスペルとかネオソウルとかの感じが全くなくて、むしろそっけなくロングトーンが乗ってるだけくらいの感じなんだけど、リズムだけはブラックミュージックなんですよね。その組み合わせがいいですよね。

去年の個人的なベスト映画が『ブレードランナー』で、その前の年に見たベスト映画がライアン・ゴズリングの『ドライブ』なんです。『ドライブ』のサントラに入ってるエレクトリック・ユースってユニットの「A Real Hero」が良くて。基本80'sっぽいんですけど、ちょっとチルでシンセもフィルターを開き切ってないほわーって感じの音で、ビートは80'sのリズムマシンみたいなストレートのもの。ああいう80'sのサウンドが自分のブームだったんですよね。

—— ところで、新作はメロディーに関しては、何かこだわったところはありますか?

切なさみたいなものっていうと軽い表現になっちゃいますけど、温度自体は高すぎない感じにしておきたかったんです。かといってずっと暗い感じでも嫌で。風景で言うと朝焼けとか夕方みたいな、明るくなりすぎないのをずっと保っていたいというか。だから、鍵盤を弾きながらメロディーを作っているときに、ここはメロディーが上がると明るくなるなってときは上に行かずにそのまま下に行ったりとか。メロディーの抑制をずっと気にしながらやってましたね。

—— 抑えつつも暗いのは嫌なわけですよね。

そこはオケでバランスをとるとか、少しコードで展開をつけて、バリエーションを持たせてあげるとかですね。展開がついて「ここで開けます」みたいな感じにしてます。

—— 明るくも暗くもないし、グルーミーでもないし、メロウでもメランコリーでもなくて。歌詞もそんな感じで、すげー悲しいでも楽しいでもないっていうか。あと、歌詞もモノローグっぽいですよね、言葉も過去形がけっこう多いし。

Charaさんの影響がすごく大きいですね。Charaさんも高校のころからずっと聴いてたアーティストなので。みんな『Junior Sweet』とか好きじゃないですか。僕はどちらかというと、ジェイムス・イハとやった『マドリガル』とか『夜明け前』が好きで。Charaさんに「『夜明け前』ってすごくいいアルバムですよね」って言ったら、「あの頃は暗いのよね」って言ってたんですよね。個人的にはあの二枚が好きで、明るすぎず暗すぎず、歌詞もネガティブなのかポジティブなのか、どっちにでも取れるような歌詞なのが、すごく好きなんです。自分もそういうのをやりたいってのは無意識にあったかもしれないですね。

—— ジェイムス・イハのソロの最初の『Let It Come Down』はそういう空気かもですね。

そうですね。たしかに。

—— 新作を表すちょうどいい言葉がなかなかないなと思って、いろいろ考えたんですよ。メランコリーとか、サウダージとか。

そういうどっちでもない質感がすごい素敵だと思ってて。でも、それは中途半端なものって捉えられがちでもある。だから、どっちつかずでぼやーっとしてるってタイトルの『Blurred』にしたんです。自分の音楽もそうだし、世の中もそうあってもいいんじゃないかって思いも込めて。

—— なるほど。mabanuaさんの歌い方もそうですよね。どっちの感情も出ない感じで。あれってどうやって録音してるんですか? マイクとの距離とか。

僕の声って、ロウがすごく多いみたいで、マイクに近づくと中低域くらいのもわっとしたところが膨らんじゃうらしいんですよ。だからある程度、距離を離して録ってます。今回、真空管のマイクを買ったんです。Toeの美濃さんにウィスパー(ヴォイス)をいい感じで録るにはどういうマイクがいいか聞いたら、「それは真空管に決まってるでしょ」って言われて。Charaさんも声を録るのに真空管マイクを使ってたんですよね。だから、歌の録り方は機材も含めて工夫してます。

—— 歌い方は前作とそんなに変わらないけど、質感が明らかに違うなと思ってました。

前回は1万円くらいのコンデンサーマイクで録ってたんですよ(笑)。でも、それだと高域が録れない。録れても耳に痛いところしか上がってこないから、ミックスが大変すぎて。でも、今回は○○万円くらいのマイクで録ってます。だから、ミックスもやりやすかったですね。どこまでEQで持ち上げても持ってこれるくらいにすごく録れてました。

—— 録ったあとって加工してます?

特別なことはしてなくて、ダブルで録って、ちょっとリバーブかけるくらいですね。

—— へー。mabanuaさんのボーカルって、一つのスタイルが完成されてる感じがするんですよ。

基本はダブルで録るってのが自分っぽくなるのかなって思いますね。

—— 今回、聴いてて思ったんですけど、Charaさんが歌いそうなメロディーがけっこうありません?

あると思います。

—— でも、Charaさんが歌ったら違うんですよ。Charaさんが歌うのは「Call on Me feat. Chara」だけだよなって感じなんです。他の曲はCharaさんが歌うと強すぎるなって思ったんですよ、同じウィスパーだけど、曲に対してエモーションが強すぎるなって。今回の曲はmabanuaさんのクールで平坦な感じがちょうどいいかもなって気がしたんです。

俺、エリオット・スミスが大好きなんですよ。エリオット・スミスって声を張りそうで張らないんですよ。張り上げないと歌えないようなメロディーでも絶妙に張り上げ過ぎずに歌ってる。彼もダブルで録ってて。そういうのが無意識の内に自分の中にあったものなのかなって思いますね。Charaさんっぽさもそうなんですけど、無意識的に出てたんじゃないかなと。

—— 確かにメロディーだけでちょっと不思議な感情を出してたりするのは、エリオット・スミスとか、ジョン・ブライオンが書いたシンプルなメロディーの曲と共通するものがあるのかもしれないですね。

ジョン・ブライオンも好きです。好きなアルバムのプロデュースがジョン・ブライオンだったりすることも多くて。

—— mabanuaさんはアメリカでもヨーロッパでもないし、ブラックミュージックでもフォークミュージックでもない感じっていうか。でも、最近、R&B枠にされてる人でもあまりザ・ブラックミュージックな感じの音楽を作らない人が多いじゃないですか。フランク・オーシャンもそうだし、モーゼス・サムニーとか。

エイドリアン・ヤングとかもそうですよね、映画音楽っぽいと言うか。

—— たしかに。エイドリアン・ヤングは本当はモリコーネとかニーノ・ロータとかも好きそうな感じですよね。そういうタイプのブラックミュージックって昔からありますよね。例えば、フォーク混ざってるテリー・キャリアーとか、ビル・ウィザーズとか。だから、mabanuaさんの音楽も自然にブラックミュージックの変種として聴けちゃう気もするんですよね。

僕はマイケル・キワヌカが好きなんですよ。あれってテリー・キャリアーの流れを今の感じでやってそうな人ですもんね。彼もイギリス人なんですよね。

—— だから、『Blurred』って、mabanuaの音楽の核にあるどっちでもない感じみたいなものをすごくうまく表した形容詞になってると思います。

mabanuaの3rdアルバム『Blurred』の初回生産分のみの限定盤LPは12月05日(水)にリリースされる。

mabanua tour 2018 "Blurred"
■ 福岡
11/1 (木) BEAT STATION OPEN 19:00 / START 19:30
■ 東京
11/14 (水) 渋谷 WWW X OPEN 18:30 / START 19:30
■ 大阪
12/14 (金) Live Space CONPASS OPEN 19:00 / START 19:30

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