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カリスマエディター、カリーヌ・ロワトフェルドがスニーカーを履かない理由

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カリーヌ・ロワトフェルドによって創刊された、ファッション誌『CR Fashion Book』初のインターナショナルエディションが、10月10日(水)に日本でローンチされた。創刊イベントにかけつけたカリーヌに、『CRファッションブック 日本版』のこと、彼女が見つめるファッションの未来について話しを訊いた。

By Kaeko Shabana

 

 カリスマファッションエディターとして、長年、モード界の歴史を作り上げてきたカリーヌ・ロワトフェルド。彼女は18歳のとき、モデルとしてこの業界でキャリアをスタートさせた。その後、仏版『ELLE』のエディター & スタイリストを経て、2001年に仏版『VOGUE』の編集長に就任。現在は『CR Fashion Book』のファウンダー & ディレクター、そして『Harper's BAZAAR』でグローバル・ファッション・ディレクターを務める。彼女の手がける誌面は世界中から注目を集め、カール・ラガーフェルド、トム・フォード、エディ・スリマンをはじめ、トップデザイナーから絶大な信頼を得てきた。そしてこの度、『CR Fashion Book』初となるインターナショナルエディションを日本でローンチ。そのブックサイニングイベントの数時間前に、ファッション界の生きたレジェンド、カリーヌ本人とのインタビューが実現。

『CRファッションブック 日本版』創刊号

──今回、『CR Fashion Book 』の初のインターナショナルエディションとして日本を選ばれました。創刊号のグリーティングでは、日本には紙媒体を尊重し、ファッションを心から愛する文化があるから『CRファッションブック 日本版』を創刊することにしたとおっしゃっています。この『CRファッションブック 日本版』が日本でどういった存在になることを期待されますか。

今回、日本で『CR Fashion Book』の初のインターナショナルエディションをローンチできたことを、大変嬉しく思います。そして、この機会に日本で成長できればと願っています。昔から日本人のクリエイティビティや、日本人デザイナーを尊敬してきました。日本には素晴らしい書店もたくさんあり、紙媒体を大切にし、尊重しているという文化的な背景がローンチに至った理由のひとつ。長年、日本には定期的に訪れていますが、東京では『CR Fashion Book』という存在が意義のあるものだと信じています。多くの日本人は、自分のファッションスタイルをもっているので、私の世界観や、自由な発想を参考にしていただければいいですね。日本と異なる文化では、どのような視点でファッションを表現しているのかを、読者に伝えられるとよいのではないでしょうか。純粋にファッションを楽しんで、夢を見てもらいたい。雑誌を見て、どのように服やメイクを楽しもうかというアイディアなので、みなさんのインスピレーションになれば素敵ですね。

──『CR Fashion Book 』を始めたきっかけを教えてください。

純粋にファッションが好きだということと、まだまだ伝えることがあると思って始めました。『CR Fashion Book』では、私は"編集長"ではなく"ディレクター"で、ウィメンズもメンズも両方手がけています。ポジション的には私は一旦ステップアウトしていて、自分のチームに任せています。もちろん全体の監修はしていますが、一歩下がってみているということが、新しいことかもしれません。また、今回のプロジェクトは将来的に違うことをやりたいので、一種の布石を今まさに作っている段階です。

──『CRファッションブック 日本版』創刊号のテーマは「迷信」でした。何か信じている迷信があればお話しいただけますでしょうか。

迷信はいろいろ信じています。祖母がロシア人ということもあり、ロシアでは迷信をすごく信じる文化があるので。今回、キム・カーダシアンや、パリス・ジャクソンなど、出演者にそれぞれ話しを聞いてみると、みんなさまざまな迷信を信じていました。たとえば古典的な「家の中で傘を開けてはいけない」というものから、非常にオリジナルなものがあり、とても不思議でした。また、日本の創刊号はUS版の13号にあたります。数字の「13」を不吉なものだと警戒している人もいますが、私自身、13はラッキーナンバーだと思っていて。12号から14号にして、13号をスキップすることもできましたが、あえてこの13号をやることで、幸運を運ぶと信じています。事実、念願であった日本版の創刊が叶いました。

──この一冊を通して、個人的に心に残ったストーリーはありますか。

いま頭に浮かんだものが、次回は違うかもしれないので、"これ"というものはないのですが......。ひとつ選ぶなら、ユニセフとのコラボレーションがとても印象的でしたし、いちばん伝えたいことです。今回、雑誌の売上の一部の収益がユニセフに寄付されます。カバーのジジ・ハディッド、ハリマ・アデンもユニセフの親善大使なので、ファッションを通してメッセージを伝えるという意味では、ユニセフの企画がいちばん心に残っています。

──今回、『CR Fashion Book』を通してユニセフに貢献された以外に、個人的にチャリティー活動に参加されていますか。また、世界で起こっている社会問題で取り組みたい議題があれば教えてください。

個人的にはプラスチックゴミ問題に関心がありますし、エリザベス・テイラーが創設したエイズ研究財団のamfARを15年前からずっとサポートしています。やはりどうしてもファッションに戻ってしまうのですが、モデルが環境問題に取り組んだりと、いろんなところで活動を行っている人が業界でも増えてきました。それはファッションがメッセージを伝えるツール、媒体として、どんどん普及してきているからだと思います。いちばん最初にそういった活動をはじめたデザイナーは、ヴィヴィアン・ウエストウッド。そして、ステラ・マッカートニーは彼女自身がヴィーガンで、革や毛皮製品に対してずっと反対運動を行っています。ファッション界も倫理や、社会問題に対する意識が年々高まっています。私たちの業界は、恵まれた環境にあるからこそ、自分の時間やお金を費やして、人びとの目を開くような活動に従事することは、非常に重要だと考えています。

Carine Roitfeld by Hedi Slimane

──あなたのスタイルコードといえば、色は黒。タイトなトップに、ペンシルスカート、そしてスティレットヒールです。シック、セクシィ、挑発的。しかし、近年のファッション界では、ストリートやスポーツウェアが不動の地位を獲得しています。この傾向についてどうお考えでしょうか。

私個人としては、スニーカーを履くことはないと思います。ただ私の趣味ではないからですが、一方でその心地よさを感じてしまった後に、スティレットヒールに戻るのは難しいのではないでしょうか。モデル、大企業の社長、学生が、一度スニーカーという履き心地のいいものを履いてしまった後、窮屈な靴を履き直すというトレンドには戻らないと思います。事実、FacebookやAppleの社長ですら、大きな会議でカジュアルな服を着ています。彼らが、これまでのビジネスマンの象徴的なイメージを崩しているという意味では、当分はそういう傾向があると思います。そして、ストリートウェアが、今ではメゾンのアイテムより価格が高いものになっているのがすごく不思議で仕方がありません。たとえば、メゾンのスティレットヒールのシューズより、クリエイターのスニーカーの方が、値段が高いというありえない現象が起こっている。さらに面白いのは、最近いくつかのブランドが、ストリートウェアが流行する前のスタイルに戻ろうとしています。Balenciagaの2019年春夏コレクションのウィメンズのショーでは、スニーカーが登場しなかったし、デムナはクチュールに戻りたいと言っています。またCelineのエディ・スリマンも、ヒールを強く打ち出しました。このように、ストリートウェアトレンドに対するリアクションがありますが、彼らが勝つかどうかはまた別問題だと思います。

──少し抽象的ですが、ファッション業界で幸せだと感じるのはどんな瞬間ですか。

そうですね、まずは今夜の『CRファッションブック 日本版』のローンチイベントに大勢の人に来ていただき、この本を読んでもらえれば、私にとって幸せな瞬間になると思います。また、ショーを観にいったとき、どこか違う世界に自分を連れて行ってもらい、夢を見させてもらう瞬間は、ファッション業界でやってきてよかったなと思います。この業界に35年いますが、今も好きでい続けるということは、自分でもよい選択をしたと感じます。仕事を愛するということは、一般的には難しいことだったりしますが、私は自分の仕事を愛しているので、それも一種のラグジュアリーだと。まあ、この年齢になると好きなものを新しく探すのは難しいですし、ファッションを選んでよかったなと、今つくづく思っています。

──最後に、先ほど『CR Fashion Book』は次につなげるためのステップのひとつだとおっしゃっていましたが、次の目標や夢があれば教えてください。

あくまでも子どもの夢なんですけれど......5〜6年前からずっと考えているのは、香水のラインを作ること。これは私にとって新しい試みで、これまで雑誌を通してブランドを手伝う立場にいました。Chanel、Tom Ford、Louis Vuittonのキャンペーンなど、サポート役だった私が自分のブランドをもつという意味で、一種のレガシーを残す。ユニクロと一緒に取り組んだ単発的なものだけではなく、CRブランドとして、もしかしたら将来的に孫がこの「カリーヌ・ロワトフェルド」の香水をずっと守ってくれるかもしれない。それは私の夢にすぎないんですけど。夢は誰にでも必要なことですよね。

『CRファッションブック 日本版』
ハースト婦人画報社 定価 2,500円
www.crfashionbook.com/jp/

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