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ガールズロードムービー「TOURISM」出演、遠藤新菜とSUMIREが語る映画におけるファッション

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Image by: Sumire wears all clothing TOGA PULLA.

『大和(カリフォルニア)』宮崎大祐監督による最新作は、現代の若者による観光を描いた『TOURISM』。優れてコンテンポラリーな本作に出演した遠藤新菜とSUMIREに、シンガポールでのゲリラ撮影、ふたり​の旅行スタイル、映画におけるファッションについて訊いた。

By RIE TSUKINAGA

前作『大和(カリフォルニア)』が多くの国際映画祭で上映され、ニューヨークタイムズに絶賛されるなど話題となった宮崎大祐。国内外から熱い視線が注がれる期待の新人監督である彼の最新作『TOURISM』がまもなく公開される。

『TOURISM』は、誰でも格安で観光ができるようになった現代の若者を描いたロードムービーだ。フリーターのニーナ(遠藤新菜)は地方都市で友人のスー(SUMIRE)、ケンジ(柳喬之)とシェアハウスをしている。ある日、ペア旅行券の抽選に当たったニーナは、スーと共にシンガポールを訪れる。初の海外旅行に興奮を覚えながらも、地元とあまり代わり映えしない風景には落胆ぎみのふたり。とはいえ、セルフィーを撮りながらの観光地巡りは快調に進んでいく。そんな中、チャイナタウンで携帯電話を失くしたニーナはスーとはぐれてしまう......。

©DEEP END PICTURES INC.

主演は『大和カリフォルニア』にも出演している遠藤新菜。監督の宮崎とはふだんから音楽や映画の話をしているそうで、今回も監督から企画の内容を聞いて、それならやりたいとすぐにニーナ役を買って出たという。

スー役のSUMIREは、共演を強く望む遠藤によってキャスティングされた。「これはガールズロードムービーだから、女の子ふたりがただ旅をするだけで画面に映えないといけない」と遠藤。「SUMIREちゃんならどんな場所に行っても映えるし、独特の雰囲気があるから絶対いいなと思ったんです」

私生活でもよく遊ぶというふたりだが、共演するのは『シスターフッド』(西原孝至監督、2019年)に続いて二度目。ナチュラルで親密感のあるふたりの演技は、『TOURISM』でも存分に発揮されており、時折挿入されるスマホ撮影のセルフィー映像と相まって、観客を没入させるのにも一役買っている。

今回i-Dでは、遠藤新菜とSUMIREに独占インタビューを敢行。シンガポールでのゲリラ撮影、映画におけるファッション、ふたりの旅行スタイル、そして一度見たら忘れられないあのダンスシーンについて話をきいた。

©DEEP END PICTURES INC.

自由な撮影方法

——『TOURISM』でのとても自然なやりとりが魅力的でしたが、おふたりの台詞のやりとりは脚本にもともとあったんですか?

遠藤新菜:他の現場にもあるような、それぞれの台詞が書かれた形の脚本はなかったです。方向性だけ決められていて、あとは口頭で「最終的にこういう位置に行くから」とか「次はこの建造物を見て」とか、描写的なことだけ言われていました。

SUMIRE:具体的なことは事前に知らされていなかったから、私たちは探り探りやるしかなくて。

遠藤:最初はわからないまま始めていましたね。撮影していくうちに徐々に察しがつくようになってきて、じゃあこうしてみようかな、とよけいなことをしてみたりして。監督の「こうなったらいいな」という構想と、私たちが自然に生み出す空気感がマッチしたときにOKになる感じでした。

——最初に日本でのアパートでの場面を撮って、そのあとシンガポールに向かったわけですよね。アパートでの何気ない会話もアドリブでつくっていった部分が大きいんですか。

SUMIRE:台詞はなかったけど、こういう流れでというのは、日本編ではわりと決まっていたと思います。

遠藤:フムスのくだりも決まってたしね。くじに当選した、と私がふたりに話す場面では、監督に言われたのは「くじに当たったよってふたりに報告してください」だけ。それで報告したら、柳(喬之)君が「あ、ペアなんだ。ってことはじゃあ...」みたいに自然に言ってああいう会話が生まれました。全体的には、やっぱり独特な現場の進め方かもしれないですね。

©DEEP END PICTURES INC.

——そういう自由度の高い撮影方法は他ではなかなかないと思いますが、おふたりにとっても初めての体験でしたか?

SUMIRE:自然に撮影するというか、変に決めてやるんじゃなくて、というのは他では経験がないです。でも現場で戸惑ったり不安を感じたりすることはまったくなかったですね。

遠藤:私は前作で宮崎監督のやり方は経験していたので特に衝撃はなかったんです。『大和カリフォルニア』も、脚本についてはもう少しちゃんとしたものがあったけど、基本的にはこういう進め方でした。ただスーちゃん大丈夫かなとちょっと気にしてはいましたね。私がいるから大丈夫よ、とも思いつつ。

SUMIRE:宮崎さんもああいう人柄だし、安心感の方が大きかったかな。

——シンガポールでは基本的にゲリラ撮影だったとうかがいましたが、特にハプニング等も起こらなかったんでしょうか。

遠藤:たぶん宮崎さんは強運の持ち主なんですよね。ちょっとくらいもたついてもなんだかんだ撮れちゃったり。普通はもっとあたふたするのかもしれないけど誰も特に焦ることもなく......まあ私たちも変わってるからなあ。

SUMIRE:みんな変わってるから普通の感覚がわからない(笑)。

遠藤:好きにやっていいんだって思えた方が楽だったし、こうしなきゃって考えず自由にできたので、ただもう楽しかったですね。

——途中、シンガポールのマーライオンのところでふたりが踊るシーンもすごくいいですよね。

遠藤:謎な場面ですよね(笑)。宮崎さんから、ヒップホップのビートメイカーのLil諭吉がつくってくれたビートを聴かせてもらったんですが、「これでどうしたらいいの...?」って感じでした。別に私たちはかっこよく踊れるわけじゃないし。カメラの後ろには現地の人や観光客がいっぱいいて、私たちが踊ってるのを見ながら「え、何?」って騒然としてて、本当にカオスな空間でした。

SUMIRE:あの場面は、見た人がそれぞれ感じてもらうしかないですよね。

遠藤:でも私、あそこのスーちゃん、すっごく好き。超まじめにやってるのがおかしくて。時々我慢できなくて笑っちゃったりして。

©DEEP END PICTURES INC.

新しい旅のかたち

——今回、遠藤さんはスタイリストとプロデューサーとしてもクレジットされていますね。

遠藤:脚本にはさすがに口を出していないんですが、キャスティングで、SUMIREちゃんと柳君のふたりが絶対いいって言ったのは私ですね。あとはビジュアル面のプロデュースを一緒にさせてもらった感じです。海外にも発信するんだったら本当にかっこいい画であってほしいなと思って、洋服を選ぶときは、日本ではあんまり主流じゃないブランドをあえて選んだりしました。US向けの視点でやりたくて、ちょっとヒップホップっぽい要素を入れてみたり。そういう格好をしてもSUMIREちゃんはまったく浮かないんですよ。実際に見たら結構やばいなって格好をしてるんですけど、さらっと着こなしてくれて。ちなみに服はほぼ私の私物です。

SUMIRE:映画でああいう服装をするってなかなかないじゃないですか。それってこの作品だからできることでもあるなと思って。自分でも、ふだん着るタイプの服とはかなり違うからすごく新鮮でした。

——専門の衣装さんがつくとどうしても映画っぽくなってしまう部分はありますよね。そういう意味でこの映画でのファッションは本当にリアルだなと感じました。

遠藤:その方が若い子ももっと映画に興味を持つんじゃないのかなと思っていて。どうせなら可愛い格好をした可愛い子を見たいじゃないですか。わざとナチュラルにするんじゃなくて、あえて異物感を残したような映画を楽しんでくれる子が最近は多いんじゃないのかな。スーちゃんもこう見えて好奇心旺盛なんですよ。

SUMIRE:こう見えて(笑)。

遠藤:なんでも挑戦してくれるんです。「これ着てほしいんだけど」って言うと、絶対NOって言わない。そこが彼女の強みだと思います。

SUMIRE:ふだんからよく服の貸し借りをしてるし、彼女の服を借りて着るのは自然と言えば自然でしたね。

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——この映画での旅のかたちもおもしろいですよね。ガイドブックを片手に行く観光ではないし、いわゆる自分探しの旅みたいなものでもないし。おふたりから見て、映画での旅のありかたについてはどう思われますか?

遠藤:実際に私たちがいきなり旅行に行こうとなったらこうなる気がする。

SUMIRE:迷子になったり携帯無くしちゃったり。でもなんとか旅が成り立つ。全体的に違和感は感じてなかったね。

——ちなみに、おふたりはどういう旅行のかたちがお好きですか?

遠藤:時間刻みには動きたくないんです。旅先では、遅めに起きて、明るいうちにわっと楽しんで、さっさとホテルに帰りたい。あそこに絶対行きたいとかそういうのは全然なくて、たまたまそこで見つけたもののほうが好き。誰のかもわからないけど超でかい墓を見つけた、とか、そういうわけのわからない衝撃の方が好き。

SUMIRE:私も旅行は好きですけど、たいてい一緒に行く人に任せちゃいますね。基本、自分で決められないので。決めてくれたらついていくよって感じで。

遠藤:そういうふたりで旅したからこういう感じになっちゃったのかな。遊ぶときも完全にノープランだもんね、私たち。

SUMIRE:どこに行くとか決めたりしないよね。とりあえず会って、お茶して、だらだらしてる。

遠藤:待ち合わせ時間もたいてい1、2時間は遅れるし。「今準備してるよー」「私もー」みたいなやりとりをずっとしてる。

Sumire wears all clothing TOGA PULLA.

とにかくかっこいいものをつくりたい

——遠藤さんは若い人たちにも映画を届けたいとおっしゃっていましたが、それはこの作品にかぎらずふだんから抱いている思いなんでしょうか。

遠藤:よく考えますね。ファッションも、音楽も、全部がうまく融合したうえで超かっこいい作品がもっと増えていったら、映画自体の位置づけももっと変わるんじゃないか、みんなが、映画に対して「やばい、かっこいい」って思うようになるんじゃないか、と思います。私自身が、美しいものだけを見たいと思うからこうなっちゃうのかもしれない。結局、服も音楽も映像もストーリーも登場人物も全部がかっこよければ、それって最高じゃないですか。

——とにかくかっこいいものをつくりたい、と。

遠藤:そうですね、シンプルですけど、それが一番大事だなって。

——SUMIREさんは、こういうふうに映画を届けたいという思いはありますか。

SUMIRE:自分は女優業を始めてまだ短いんですが、役作りも大事だと思う一方で、その人自身が持ってる自分らしさみたいなものも演技に入れたほうがいいのかな、とも思っていて。それがうまく表現できたらいいですよね。

——そういう意味では、この映画には、ふだんのふたりの関係も反映されていますよね。

SUMIRE:でもただ単に私たちのプライベートを映してるわけじゃなくて、表現したいものはちゃんと表現しつつ、私たちらしさも自然に入れていくような映画ですよね。

遠藤:スーちゃんは、内側に強いものを持ってる人なんです。普通は自分なりの美的感覚を持っていたら表に発信したくなるのに、それをずっと内に秘めてる。それがすごくかっこいい。私はもともとプロデューサー視線というか裏方気質なところがあって、そういう人を見ると、もっとたくさんの人に見てもらいたい、こうすればおもしろく紹介できるんじゃないかとか考えたくなるんですよね。

©DEEP END PICTURES INC.

遠藤:この映画では、私が主演でスーちゃんが助演というかたちに見えるかもしれないけど、感覚的には全然そんなことなくて。スーちゃんも、柳君も、それぞれのキャラが絶妙なバランスで成り立ってる、チームで推したい映画だなと思います。

——おふたりとも、いろいろなタイプの作品に携わっていらっしゃいますが、俳優として、今後こういう作品に出ていきたいというプランなどはありますか。

遠藤:私はとにかく、やりたいことしかやりたくないんです。もう少し若い頃は、かっこよくないんだもんって理由でやりたくないなんて言っちゃいけないのかな、それが仕事ってものかな、と考えてる時期もありました。もちろん今までも特に我慢したって経験はないんですけど、私も今年で25歳だし、あれは最高だったな、という瞬間を増やす作業に入りたいなと思って。難しいんですけどね、女優さんって仕事でそれを全うするのって。やっぱり女優は作品に貢献しなきゃいけないし、自分よりも役が大事だったりするし。だからこそ、私はプロデュースやスタイリングをやりつつ、音楽も今後視野に入れていきたい。とにかくかっこいいと思うことだけをやろうって思ってます。

SUMIRE:私の仕事は、彼女より融通がきかない部分が場合によっては多いかもしれない。そのなかでも、ちょっとでも楽しい部分を見つけながら、自分が好きなように表現したり、行動できたらなあと思っています。絵を描いたりデザインするのも好きなので、女優もやりつつ、そういうクリエイティブなものもつくっていけたらなと思います。女優業に限らず、興味を持ったことにいろいろ挑戦していきたいです。

映画『TOURISM』は、7月13日(土)ユーロスペースほか全国順次公開

【映画情報】
『TOURISM』
出演:遠藤新菜、SUMIRE、柳喬之
監督・脚本:宮崎大祐
撮影:渡邉寿岳 編集:宮崎大祐 録音:高田伸也
スタイリスト:遠藤新菜 へアメイク:宮村勇気
音楽:THE Are Lil'Yukichi
助監督:田中羊一 プロデューサー:Aishah Abu Bakar 宮崎大祐
コー・プロデューサー:Lindsay Jialin Donsaron Kovitvanitcha 遠藤新菜
製作:アートサイエンス・ミュージアム シンガポール国際映画祭 DEEP END PICTURES
©DEEP END PICTURES INC.
2018/シンガポール・日本/カラー・白黒/77分/16:9/5.1ch

Credit
Photography Tetsuya Kumahara
Styling JOE(JOE TOKYO)

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