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Netflixの人気ドラマ「The OA」製作打ち切りの理由、監督がファンにあてた手紙を公開

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Netflixがカルト的な人気を誇るドラマ『The OA』の製作打ち切りを発表。ネットでは早くも製作再開を求める署名運動も始まっている。そんななか、本作の脚本・監督・主演を務めるブリット・マーリングがインスタ上で、ファンにあてた手紙を投稿。そのテキストの全訳を公開。#SaveTheOA

By Sogo Hiraiwa

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2019年8月5日、Netflixのオリジナルドラマ『The OA』の製作打ち切りが発表された。えっ、一体どういうこと? 視聴者の感情や予想を巧みに利用した類稀なるストーリーテリングでパート1を駆け抜け、続くパート2ではあっと驚く世界観の拡張をみせた超ド級の傑作が、ウチキリ?

その知らせを聞いたファンたちは、すぐさま行動に打って出た。Twitter上ではハッシュタグ「#SaveTheOA」をつけた投稿が滝のようにアップされ、早くも製作再開を求める署名運動も起こっている。また抗議を表明するためにNetflixから退会する人や、Netflixに見切りをつけて、HBOやHuluに「The OAの続編をつくってくれ」と嘆願するファンも現れている。

打ち切りの理由として、米『ハリウッド・レポーター』誌は、Netflixがシリーズ物を続けるより新しい作品のほうが新規顧客を獲得できると判断したのだろう、と伝えている。ビジネスとしては妥当な判断に違いない。それでも、この打ち切りに対して冷静でいられないのは(『The OA』の視聴者ならだれもが賛同してくれると思うが)、これが特別な作品だからだ。

どう特別なのかは、ネタバレに接近するので詳しく書けない。未見の人には「とにかく観て」というしかない。もしかすると、パート1の途中で「なんかビミョー」「見るのやめようかな」と思う人もいるかもしれない。それでも見続けてほしい。それだからこそ、見続けてほしい。信じ(続け)ることが、本作のテーマだ。くじけそうになっても〈クリエイター〉を信じて、ラストまで見続けてほしい。信じ続けたものには、最後にきっと、大きなカタルシス/報いが訪れるはずだ。

脚本・監督を共同で行なっているブリット・マーリングとザル・バトマングリは、企画の当初から、『The OA』をパート5まで続く物語として構想していたと言われている。今となっては、パート3以降の話の展開は想像するほかないが、いつの日か、どんなかたちであろうと、本作の続編が見られる日が来ることを信じたい。

以下は、『The OA』の脚本・監督・主演を務めるブリット・マーリングが自身のインスタ上で公開した、ファンに宛てたメッセージの全訳。

『The OA』ファンの皆さんへ

すでにご存知の方も、このお知らせで感づいている方もいるかと思いますが、Netflixによる『The OA』製作の打ち切りが決まりました。

ザルと私はこの物語の完結が叶わず、とても残念に思っています。最初に知らせを聞いたときには大泣きしました。Netflixの担当のひとりも同じだったようです。私たちがまだクイーンズの事務所でハップの地下室シーンを構想していたころから協力してくれた人です。『The OA』は制作に関わったすべての人、そしてこの物語を気にかけてくれたすべての人にとって、強烈な旅でした。

あるとき、パネルでこんな質問を受けました。「なぜあなたはSFにこだわるんですか?」私には「こだわって」いたという自覚もなく、自分がこれまで書いてきた物語のほとんどがSF(スペキュラティブ・フィクション)というジャンルに収まるものだとすら気づいていませんでした。青天の霹靂でした。その質問にはSFを楽しめない人からの非難めいたニュアンスがあったので、そこでは「だって......世界を創るのは楽しいでしょう?」とだけ答えました。けれどもそれ以来、その質問について繰り返し考えるようになりました。考えてみるに、より真実に近い回答はこういうことになります。

この世界で一度たりとも自由だと感じたことがない人にとって、その〈現実〉世界についての物語を着想するのは難しいことなのです。自分や他の女性が演じるキャラクターを描いているひとりの女性として、ナラティブへの舗装された道は限られていると感じます。私もいずれ作家として成長し、〈現実〉のなかで、自分だけの道を整えられるようになるかもしれません(エレナ・フェッランテみたいに)。しかし今までは、妨げられていると感じることがほとんどでした。

私は、社会的に〈優位〉な、ごく少数の女性を描くことはできます。けれどそれは、私たちを虐げてきたヒエラルキーをそのまま維持することになってしまう(虐げる対象を移すよう要求するだけになってしまう)。私は、大多数を占める貧困層の女性を描くことはできます。しかしそれは、動画と華のある役者たちの力によって美化されてしまったり、本来その作品が批判しようとしていた〈ステレオタイプ〉の数々を温存させてしまう。私は、ジェンダー不平等のあれこれをさらけ出す自虐的な女性を面白おかしく描くことはできます。けれどそうすると、ハンナ・ギャズビーが『ナネット』で指摘したとおり、ギャラと問題提起の機会を得られる代わりに、自分の自尊心を傷つける屈辱を差し出さなければならなくなってしまう。

SFはこうした〈現実〉をエッチアスケッチ〔お絵かきボード〕のようにきれいに拭き消してくれました。SFはどんなことでも想像していいのだと教えてくれました。そして、ザルと私はそれを実行したのです。

私たちは想像しました──集団は個人よりも強いと。私たちは想像しました──ヒーローは存在しないと。私たちは想像しました──サンフランシスコの木々や、人々が理解できて耳を傾けなければならない声/意見をもった巨大タコを。私たちは想像しました──人間は数ある種のなかのひとつでしかなく、必ずしも最も知的で進化した種ではないのだと。私たちは想像しました──本来なら居合わせなかったであろう人たちを団結させ、行動へとうながすダンスを。別の世界にいく可能性のために、自らのもろさを投げうたせるダンスを。

これが、ザルと私、協力してくれたアーティストたちにとっての『The OA』です。別の世界へと足を踏み入れる可能性、そしてその世界で自由にふるまうことについての物語です。

Netflixと制作に関わった人々には心から感謝しています。彼らはパート1とパート2を実現のものにしてくれました。この妥協のない16時間は、私たちの誇りです。本当にたくさんの方々がこの作品を観てくれたことも自信につながりました。感想やファンアート、「Reddit」での予想合戦、そして世界中の広場やベッドルームやクラブや裏庭で踊ってくれたあのダンス。

この物語の完結は叶いませんでしたが、私たちは必ず、別の物語を語ります。人新世(アントロポセン)で生きていくための対処法として、それ以外に有効な手だては思いつきません。それに、見方によっては、本作のキャラクターたちに終わりを迎えさせなくてもいいのかもしれません。

私たちの想像のなかで、スティーブ・ウェンチェルは次元のあいだを漂いつづけるでしょう。彼はどこまでも進化していき、永久に追いかけつづけて、やがて救急車に、そしてOAにたどり着くことでしょう。

愛を込めて

ブリット

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