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【インタビュー】思春期の少女7人を映したドキュメンタリー映画「オール・ディス・パニック」が描く、若き女性であることへの抵抗

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思春期の少女7人の平凡な日常を3年間にわたり追ったドキュメンタリー映画『オール・ディス・パニック』。デビュー作ながら高い評価を受けた監督のジェニー・ゲージが、本作で描かれる彼女たちの成長、ニューヨークでの生活、若き女性であることへの抵抗について語る。
By Douglas Greenwood; translated by Aya Takatsu

ジェニー・ゲージ(Jenny Gage)の作品を少し調べると、なぜ多くの人がそれを"シネマティック"だと評するのかがわかるだろう。ファッションフォトグラファーから映画監督に転身した彼女は、カメラを通して、女性のハリウッドスターたちをとてもさりげなくとらえる。まるで彼女たちの名声という名の殻が突如として閉じてしまったかのように、壮大な背景が、その前に立つ人間に引けをとらぬ存在感を放つのだ。

ゲージが公私にわたるパートナーであるトム・ベタートンと10年以上暮らしたニューヨークは、彼女の意欲作に最大のインスピレーションを与えた。デビュー作『オール・ディス・パニック/all this panic』は、大人の一歩手前にいる7人のブルックリンの少女をとらえたドキュメンタリー。

青年期と責任ある社会人のはざまにあるこの難しい時期は、あとになって思い返すと霞みがかっていて、曖昧なこともしばしばある。学校生活のストレス、不器用な性の目覚め、門限。それらがモヤモヤと混じり合う世界は、できれば忘れたい黒歴史にもなりえるのだ。

『オール・ディス・パニック』を通して、ゲージはそんな時期を再構築し、美しい何かと狂おしいほどの真実を生み出した。

レナ、サーガ、オリヴィア、アイヴィ、デリア、ジンジャー、そしてダスティ。ゲージがその姿を追ったこの少女たちは80年代の学園ドラマに出てくる不良を思わせる。けれども、その人生はこれ以上ないほど平凡だ。ゲージとベタートンは3年間、彼女たちの姿を追い続けた。

控えめな口論や10代のケンカなど、ありとあらゆる出来事をカメラはとらえている。大胆なまでに深く対象を追ったこの作品は、現代の若い女性がどれほど賢く、またどれほど誤解されているかを観客に伝えている。

i-Dは監督のジェニー・ゲージにインタビューを行なった。

──『オール・ディス・パニック』の元となるアイデアはどんなふうに生まれたのでしょうか。

ジェニー・ゲージ 少女たちのこの時期の生活には、常に興味がありました。私たちに子供ができてすぐ、通りの向こうにジンジャーとダスティが引っ越してきたんです。彼女たちが学校に行ったり、地下鉄の駅に向かうのを見てたんだけど、話している(であろう)内容に惹かれました。

──では、どのようにして彼女たちを映画に参加させたのですか?

JG 彼女たちの両親にメールを送りました。カメラで追っかけ回してもいいかって。そしたら答えがイエスだったんです。あの子たちは今じゃこんなことを言うんですが(笑)。「どうやって頼まれたのか覚えてないな! ある日突然現れたあなたに、いつの間にか慣れちゃったから」

──監督が16歳のころの生活と、今の女の子たちの生活に、共通点はありますか?

JG 私はカリフォルニア州のマリブーで育ったんですが、全然違いますね。マリブーはロサンゼルスから1時間くらいですが、郊外じみたエリアです。私がそこにいたころは、どこへいくにも親に車を出してもらわなきゃいけなかった。環境は違うけど、あの子たちがキャラを変えてみたがったり、何時間も自分の部屋に閉じこもって音楽を聴くことには共感しっぱなしでした。それがティーンの良さだから。自分と向き合う時間は十分にありましたね。たぶん、十分すぎるくらいに。

──ニューヨークは多様な文化が折り重なっている街ですが、映画に登場する女の子を通して、非常に巧みに描いています。彼女たちのなかには有色人種の少女もいますし、何人かは自分の性的指向に気づき始めている。大切なのは彼女たちの声なのでしょうか。

JG はい、それが主題です。あの子たちに自らのストーリーを語る場を提供したかったんです。若い女性に焦点を当てたストーリーがもっと必要なんです。脇役として使うものではなくて。賢い女性たちがお互いを支え合っている姿を示したいという強い欲求がありました。アメリカの政治情勢とは裏腹に、いまの10代って本当にすごい。その流動性や性的傾向、お互いの支え合い、オープンさ。現代のティーンには、たくさんのポジティブな要素があるんです。

──セックスや飲酒、パーティについて、映画のなかでは正直で率直な意見が交わされます。カメラの前であれほどオープンでいることを彼女たちはなんとも思っていなかったのでしょうか。

JG もちろん思っていたはずです。自分たちがしゃべった内容について心配したり。でも正直に言って、恥ずかしいと感じていたのはたいていの場合、トムと私で、あの子たちではありませんでした。同じ部屋にいる唯一の男性だったトムは、いつも1人で赤面して(笑)。撮影を始めた当初、セックスやパーティはあの子たちの頭の中にはなかった。友情や学校生活に夢中だったんです。成長していくにつれて、そういうことが自然に湧きあがって、ボーイフレンドとかガールフレンドについて考え出すようになっていった。なので、話題にのぼるのは自然なことなんだと思います。

──同じように、女の子たちのあいだでは、涙を流すような場面や言い合いもありました。そういうときは映さないようにしようとは思わなかったのでしょうか。

JG 映画にするにはプライベートすぎると思うこともありました。そういうときは映しませんでした。ほかのドキュメンタリー監督なら、無理やり撮っていたかもしれませんが......。

──彼女たちの年齢についても考慮しなければいけなかったのではないでしょうか。

JG そのとおりです。あの子たちは若い。街を歩くときも、すばしこくて流れるようでした。トム(と私)は、追いつくために小走りしなきゃいけなかったくらい。家に帰り着くまで、いったい何を撮ったのか見当がつかないなんてこともありました(笑)。

──友達と一緒にこの映画を見たのですが、2人とも、若きフェミニストとしてまともに受け入れてもらうことについて話すサーガのスピーチに舌を巻きました。文句のつけようがないほど雄弁でしたね。

JG そうでしょう! 若い女性たちが今考え、話している内容がどれほど重要かということに、みんな気づき始めています。映画に盛り込んだこと以外も、サーガは話してくれました。彼女はすごく賢いし、政治的にもアクティブなんだけど、こんなことも言ってました。「だけど私、ワン・ダイレクションにも超ハマってる。何にもおかしいことないでしょ!」 あの子たちは複雑なんです。

──ティーンを描いた映画で、お好きなものはありますか? 彼女たちにその映画の話をしましたか?

JG 『フィッシュ・タンク』と『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』が大好きです。どんな映画が好きかってあの子たちに聞いてみると、『パロアルト・ストーリー』に共感するみたいでした。納得ですよね。ティーンのアンニュイな気分をはかなく、そして美しく描くこの映画は、あの子たちにぴったりハマります。もうひとつ、私たちみんなが好きだったのが『スタンド・バイ・ミー』。彼女たちは、こんなことを言っていました。「どうして女の子にもこういう映画がないの? 私たちの『スタンド・バイ・ミー』はどこ? 私たちの少年時代はどこに行ったの?」

──悲しいことに、今でも女性がお互いを賛美し合う映画はメインストリームにはないようですね。

JG そうなんです。リアリティTVの絶頂期に、私たちはこのドキュメンタリー映画を撮っていました。でも、あの子たちはみんな「他の女の子の悪口を言っているところなんて見られたくない」と言っていたんです。すごく美しいなと思いました。

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