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セレブのパパラッチ対策に見え隠れする奇妙な心理とは?

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身を隠したいと望みながらも、見られたいという想いを隠せない有名人たちの心理を考察する。

By Philippa Snow; translated by Ai Nakayama

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最近、2004年の映画『クローサー』のワンシーンから抜粋されたナタリー・ポートマンのGIFをいたるところで見かける。彼女が演じる、半裸でピンクのウィッグをつけ、中国の人形のようなショーガールのGIFだ。

みんながこのGIFに夢中なのは、そのポップなキャンディカラーのせいかもしれない。あるいは、ラインストーンが輝く紫色のブラストラップが片方外れているからかもしれない。

あるいはそのメッセージかもしれない。字幕ではこう書かれている。「ウソは女が服を脱がずにできる、いちばんの楽しみ。でもセックス中のウソはもっといい」

ナタリーが演じるのはジェーン・ジョーンズ。アリスという名前でストリッパーとして働いており、客から「本当の名前を教えてくれ」と言われたときに返したセリフだ。さすがだ。

誰もが憧れ知名度もあるセックスシンボルにとって、めったに手に入らない最大の幸福と言えば、プライバシーだろう。ひとの目をくらませ、自らの身を隠すこと。ナタリー・ポートマンだってそうだ。しつこいメディアに追われているだけでなく、昔彼女と交際していた、と吹聴する中年男性(例:モービー)の思い込みにも対処しなくてはいけないのだから。

2018年のウィメンズマーチでのスピーチで、彼女は観衆にこう告げた。「初めてのファンレターを、わくわくしながら開けたことを覚えています」。冷静、そして慎重かつ落ち着きはらったトーンだ。

「男性が書いたその手紙の内容は、私をレイプしたいという願望でした。私の18歳の誕生日を祝うカウントダウンが、地元のラジオ局で始まっていました。つまり、セックスしても違法じゃなくなる日へのカウントダウンです。映画のレビューでは、私の〈ふくらみかけた胸〉について言及されていました」

そんな状況で、ウソをつきたい、あるいは誰にも明かさない部分を置いておきたいと思わない人間などいないだろう。『クローサー』のラストシーンで、ナタリー演じるジェーンはニューヨークを歩いている。彼女は、他人が思わず振り向くほどの魅力を放っている。しかし現実世界では、ウィメンズマーチのスピーチで語られたように、ナタリーはひときわ輝くその美貌を消す方法を学んできたようだ。かつてのマリリン・モンローと同じように。

有名人が自分の正体をバレないようにするということは、自分らしさを主張するものを脱ぎ捨て、〈ダークモード〉へと変化するということだ。アリスとしては知られていても、誰もジェーン・ジョーンズとしての自分を知らないのだから。

今年4月、テイラー・スウィフトがパパラッチの目から逃れるためにピンクボブのウィッグを着けていた、という根拠のない噂が流れたときは、テイラーも『クローサー』のジェーンを参考にしたのか、と思わずにはいられなかった。

また2007年には、剃髪時代のブリトニー・スピアーズもピンクボブのウィッグを着用していた。ベースボールキャップ並みにカジュアルに着用しており、まるで「ウソは女がペルソナを脱がずにできる、いちばんの楽しみ。でもペルソナを脱いだときのウソはもっといい」と言わんばかりのカジュアルさだった。

Chanelのビーチタオルを埋葬布のようにまとったケイティ・ペリーの姿には、ファンではない私も興味をそそられたし、ジャスティン・ビーバーがプライベートでバスケを楽しむときに採用していた、適当すぎるあからさまなつけヒゲには小気味良さを覚えた。普段は完璧なリタ・オラが、Soundcloudラッパーのような仮装をした姿には、より魅力を感じた。

どこに行っても顔が割れることに抗うのも楽しくはあるが、彼らには、完全に姿を消したいという願望よりも誰かに見られていたいという欲望があるのだと思われる。

有名人が身を隠すことを望むとき、彼らは、無名時代の過去の生活を取り戻そうと努力し、そしてそこにおかしみが宿る。まるで、人目をひくウサギをボロボロのハットに戻そうと頑張るアマチュアのマジシャンの姿を見ているようだ。彼らの頑張りの結果をまとめれば、きっと立派な論文になるだろう。

たとえば元有名子役で現お騒がせ女優のアマンダ・バインズは、マリファナ所持で逮捕されたさいにウィッグを着けており、シンディ・シャーマンのかの有名な写真作品を想起させる出で立ちだった。評論家のマーティン・ゲイフォード(Martin Gayford)は、シャーマンの作品について「自らが、本物のモデルには真似できないような姿をさらしている」と評した。不思議なことにその作品への評は、逮捕時のバインズの姿の描写にそっくりそのまま転用できる。

「絶望し、狂気じみた目つきで、ひどい二日酔いに苦しんでいるような雰囲気で、ボサボサの髪の毛」
2016年にはジョー・フランシスのメキシコの邸宅でバカンスを楽しむキム・カーダシアンが、自分のそっくりさんを用意(そっくりさんの顔はキムとはまったく似ていなかったのだが、身体が似ていることについて注目を集めることができたので成功なのだろう。ジョン・アップダイクはかつて、有名であることとは、顔を侵食するマスクだ、と書いたが、お尻に関しては言及していなかった)。

いっぽうレオナルド・ディカプリオは、立派な中年男性に変装することを選択した中年男性なので、あまりバレずに過ごせているようだ。しかしそのアプローチは、さながらアーウィン・ワームのパフォーマンス。ダウンに顔をうずめたり、真っ黒なスキー用マスクを着用したり、傘をすぼめて肩までの長さのケープのように使ったりしている。

皮肉なのは、完璧な仮装をしないことこそが、パパラッチをかわすのに有効ということだ。つまり、一般人のように服を着る。退屈で冴えない服を、そういう格好をしているときの自らの写真の価値が下がるまで何度も着る。

それを極めているのが、同じくピンクボブのウィッグ経験者であるクリステン・スチュワートだ(彼女がそのウィッグを着用したのは、いつになくフェムっぽいアイテムで、彼女の中性的で不機嫌な雰囲気を隠すためだった)。

彼女はジム用のスポーツウェアや、ファックボーイ的なTシャツ姿をよく目撃されているが、それは単純にトムボーイスタイルが好きだからだけではなく、目立ちたくないという思いがあるらしい。

2012年のインタビューで彼女は、「私がシンプルな服をよく着ているのは、パパラッチに何も与えたくないから」と答えていた。「私は文字どおり、毎日同じ服を着て出かけてる。そうすると彼らは何も言えない」

しかし、彼女のように完全に存在を消したいと考える有名人は稀だ。だからこそ、一般人のような格好に徹するよりも、紙袋やタイガーマスクををかぶったり、ペパロニ柄の全身タイツを着用したり、道徳的なメッセージを走り書いた紙で顔を隠したりするほうが人気なわけだ。彼らには、完全に姿を消したいという願望よりも誰かに見られていたいという欲望があるのだと思われる。

ところで、ナタリー・ポートマンの本名はナタリー・ヘルシュラグ。また、彼女が演じたと思われていたシーンが、実は代役によるものだということも明らかになっている。かつて彼女は、パパラッチから身を隠すためにピンクのハットをかぶっていたことがある。ぱっと見はまるで、あのジェーンのウィッグかと思うような姿だった。それは偶然の産物だったが、忘れがたきジェーンのイメージを想起させた。

彼女は2018年9月のCBCのインタビューに、こう答えている。「今、私が街を歩いても、誰にも気づかれないと思いますよ」
ちなみに前述の『クローサー』の、ウソをつく楽しさを語ったジェーンのセリフの直前では、ジェーンにセックスをしようと持ちかける男が長広舌をふるっており、ジェーンのセリフに興を添えている。

「ここの女たちはみんな、空気で膨らませたロボット、ヤク中の赤ちゃん人形だ。君もな」と男はイライラと叫ぶ。男は彼女の性的な魅力に、完全に我を失っているのだ。

「君らは偽名を使って、自分をだまして別人になりすましている。見知らぬ男どもにアソコを見せつけてる、破廉恥にもな(中略)自分のいちぶが失われたと思ってないんだ」Redditで有名な女性についての投稿を探せば、同じような主張が見つかるだろう。

私が有名だとしたら、それは隠れたくもなるはずだ。

This article originally appeared on i-D UK.

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