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定番のバックパックからジャケットやベストまで、アーカイブで辿る「ジャンスポーツ」のルーツ

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国内外におけるヴィンテージのThe North Faceの盛り上がりは勿論、様々なブランドのヴィンテージギアとその復刻に対して大きな影響力を持つショップである、東京・吉祥寺の『The Apartment』。海外から来日するファッション関係者が必ず訪れるお店の一つであり、世界的に見てもアーカイブというシーンを語る上では決して欠かせない同店のオーナーである大橋高歩さんは、今どのようなブランド、ジャンルのアーカイブに注目をしているのだろうか。第四回目となる今回はバックパック界の超定番でありながら、実はカルチャー的な背景も強く持つJANSPORTについてお話を伺います。

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--- 元々、JANSPORTは好きだったんですか?

「バックパックっていうと、自分が高校生の頃とかだと選択肢が中田商店に行ってALICE PACKを買うか、Abercronbie&Fitchのオニギリ(注:軍モノのキャンバスのバックパックをモチーフにした名作。逆三角形の形状がおにぎりの形に似ていることが通称の由来)を買うか、JANSPORTかだったんですよ。当時、駒沢公園の向かい側くらいのところに釣具屋があったんですよ。今はもうあるか分からないんですけど、BOWERY KITCHENのある辺りかな。そこに高校の頃に服をDigしに行って、JANSPORTの山タグのバッグがあって。それを買ったのが一番最初ですかね。バックパックだったらJANSPORTでしょみたいな感じで」

--- 印象としては、アメリカでは学生とか若い子たちが愛用している印象があります。

「そうですね。確かに。例えば、ジーパンで言ったらLevi's®みたいなイメージで、あまりそこに細かい何かがある訳じゃないんですけど、アメリカのバックパック=JANSPORTみたいな感じですかね。OUTDOORとかも当時使ってる人いましたけど、OUTDOORは自分的にはもうちょっと年齢層が低いというか、ちょっと子供っぽいイメージがあったりして。JANSPORTは自分の好きなカルチャーのところから来ているっていうイメージでしたね。」

-- いわゆるHip Hopを含めたストリートカルチャーですか?

「そうですね。自分がHip Hopを凄い好きだった頃に、バックパックラップ(注:ステージ上などでもバックパックを背負うスタイルのラッパー)が凄い好きで。Black Moonとか、Boot Camp Clickの面々ですね。バックパックラップって色んなイメージがあると思うんですけど、Rawkus(注:90年代半ばに設立され一時代を築いたHip Hopレーベル)とかが出て来た時に、アメリカでのバックパックラップのイメージと、日本でバックパックを背負ってラップする人ってちょっと違ったんです。日本だと少しナードなイメージというか、Kanye Westが出て来た頃の意味合いに近いようなイメージがあるんですけど、NYではバックパックを背負ってる奴っていうのはラックカルチャー(注:万引きカルチャー)とかグラフィティーカルチャーと結構密接で。自分はグラフィティーライターがThe North Faceのベースキャンプダッフルを背負うスタイルが凄い好きだったので、いつもベースキャンプダッフルを背負ってたんですよね。そういう感じで、自分はラックはしないですけど、ラックカルチャーとかストリートカルチャーのアイコンていう感じでJANSPORTのバックパックをずっと見ていて。基本的にはずっと形一緒なので、面白いアイテムが出たらその都度チェックしていました」

--- バックパックというアイテムの捉えられ方の違いが面白いですね!

「自分はLO LIFEのカルチャーが好きなんですけど、彼らが大人になってからの写真を見ると、いわゆるラックとかのカルチャーじゃなくて、コレクター的な少し安全なカルチャーになっていて。皆高価なPOLOとかを着て、バックパックとかは背負ってないイメージだったんですね。でも、若い頃の写真、発足当時の80年代後半から90年くらいまでのを見ると、バックパックを並べてる写真がよくあって。これってなんなんだろ? 学生だからバックパックなのかな? みたいなところから最初興味を感じたんですけど、よく見るとその頃はパンツはMARITHE + FRANCOIS GIRBAUDかGUESSなんですよ。で、バックパックが JANSPORTで、なんでJANSPORTを持っていたかっていうのが、話を色々聞けば聞くほど面白くて。掘り下げることでどんどん面白くなって来たんですよね」

--- なるほど。掘っていく中で、再発見した部分もあるんですね。

「そうですね。ラックスキルみたいなのを、ブルックリンのそういう若い連中はオリジナルなものを持っているんですけど、初歩的な段階として、バックパックを背負って、背中とバックパックの間に物を入れるっていうスキルが当時あったっぽくて。後は自分らがよく聞く話だと、映画の『KIDS』でもやってた、40ozのOLD ENGLISHのボトルをバギーパンツの足に入れるみたいな感じで、グラフィティーライターとかも軍パンを穿いて、軍パンの中にボコボコ物入れて盗んでみたいなことを聞いたことがあって、JANSPORTもそういうのに使われるっていう、ラックカルチャーの中にあったみたいで。向こうの奴らの中にある、凄い狭い地域だったりコミュニティーの奴らにしかない超ローカルルールみたいなのって、ファッションとして凄い面白いんですよ。それこそJANSPORTなんて、元々NYのブランドでも無いですし、全米の学生皆が使うようなバックパックだと思うんですけど、ブルックリンの連中の間にだけ、JANSPORTのストラップ、ストリングスって向こうでは呼ぶんですけど、を狩るカルチャーがあったみたいで。JANSPORTのストリングスってことで、ジャンストリングスって呼ぶんですけど、何色が良いとかそういうのもあるらしくて。昼飯の時とかに学食とかにJANSPORTを置いてたら、絶対に盗られちゃったり、街で背負って歩いてる奴がいたら、このストラップをカツアゲしたり。それで、狩ったストリングスを沢山自分のバックパックに付けてる奴が、超スワッギーだっていう謎なカルチャーがあるらしくて。それは向こうの連中のラップのリリックとかにもたまに出て来て。」

--- へー! 知らなかったら全く意味が分からないですね。

「意味分かんないですよね。Timeless Truthっていうクィーンズのデュオがいて、その片割れのSolaceって奴のソロ曲で、ストリングスをジャンスポみたいに引っ張るみたいなリリックがあって、最初聞いたときは意味が分からなかったんですよ。で、色々調べたら、Skyzooの曲で、そういう当時を懐古している曲があって。タイトルもそのままで、「JanSport Strings」っていう曲で。ジャケもストリングスをいっぱい付けたイラストで。」

--- おー!

「凄いイケてるけど悪いみたいな連中が、JANSPORTを背負って街を歩いてる弱そうな学生とかを、物陰に連れて行ってストリングスを奪るみたいな。そういうカルチャーが90年代の頭にあったらしくて(笑)。そういう面でも JANSPORTは面白いんですよね」

--- この秋にThe ApartmentとJANSPORTとコラボという形でリリースされ、大きな話題となったこちらのモデルですが、これもJANSPORTの中ではアイコニックなモデルの一つがベースとなっていますよね。

「これは"Super Sack"というモデルをアップデートしたものなんですが、"Super Sack"自体がJANSPORTの中でも値段が高いモデルで、色んなブランドから形をサンプリングされていたりもして、少しハイエンドなアイテムなんです。このモデルを作った経緯みたいなものを、今回コラボさせてもらうにあたって、一番最初にJANSPORTの本社に行って、当時のことを知っているNicoさんていう副社長の人に話を聞かせて貰ったんです。当時は、放置されたスクールバスに皆でナイフを持って行って、シートを切ってボトムに貼って、シートベルトを切ってストラップにして、皆で縫って作っていたらしくて。それが70年代後半らしく、そうやって作られたバックパックがアイコニックな形としてどんどん進化していったんですね」

「何かしらのタイミングで、REIのアニバーサリーで作られたりとか、JANSPORT30周年を記念して作られたりっていう感じで。JANSPORTにとって一番は、ど定番の"Right Pack"とかだと思うんですけど、"Super Sack"はブランドの中の最上位機種みたいな、乱発しない存在なんですよね。今も廃盤になってますし」

「これがJANSPORTの30周年で出たやつで、2000個限定でシリアルが全部手書きで入ってるんですよね。JANSPORTって3人で創業してる会社なんですけど、途中で買収されちゃっていて。このSkipっていう人だけ最後まで残っていた人で、JanさんとMurrayさん、ここは夫婦なんですけど、その3人のサインが入ってるモデルですね。サインも手書きで、JANSPORTの所蔵品を借りて来ました。」

--- 今回のコラボの元ネタになったのが、こちらですね。自分はノーマルの"Super Sack"は見たことありましたけど、これは初めて見ました。

「自分はバックパックがとにかく好きで年中背負ってるんで、奥さんがよく誕生日にバックパックをプレゼントしてくれるんですよ。これも15年くらい前にプレゼントしてもらったもので。結構面白い作りっていうか。バックパックって基本的に、マウンテニアリングに超シリアスなやつとかだと、狭い道ですれ違ったりする為に、横幅を細くして、縦に伸ばすじゃないですか。でも、こういう風に横に幅があるディテールのバックパックって、バギーなファッションに合わせ易いんですよね」

--- 実際今アップデートしたものを製作してみていかがですか?

「凄く良くできたなって思って。Vintageの"Super Sack"って古着屋でもある程度値段が付いてるんですよ。でもそういうのって、ヴィンテージ慣れしてる人なら大丈夫なんですけど、普通の人だと裏面のPUの劣化の匂いとかが耐えられないっていう人が多くて。ボロボロになって剥がれてくるし、それが自分はずっと問題だなって思っていて。Poloのヴィンテージって価値が落ちないじゃないですか。それって、そもそもの話として劣化がないっていうのが凄い大きいなと思っていて。自分はThe North Faceが一番力を入れてずっと集めてきてるんですけど、The North Faceもモデルによっては劣化が酷くて。裏地が剥がれてきたり。自分は重曹使って洗ったりとかするんですけど、そうするとシェルにもコシが無くなりますし、色々マイナス点が大きくて。今回製作するにあたっても、臭いだけでもなんとかならないのかなっ思ったときに、緩衝材を両方にかますことを思いついたんです。緩衝材がWになることでハリも保てますし、勿論荷物も守れるし、裏地も剥がれないないっていう。自分たちがこういうコラボとかでモノを作る時って、それこそ90年代のPoloとかを若い子達が評価することで、再び価値が上がるみたいな感じで、今年生まれた子が20歳くらいになった時に、このバックパックを再評価してくれて、"Super Sack"の価値がまた上がるみたいになったら良いなと思うんですね。一応、そこにエントリーできる可能性は作れたんじゃないかなと思ってます。」

--- 今格好良いだけじゃなくて、タイムレスなアイテムにってことですね。元々そういうアイテムですし、更に長い年月に耐えれるだけのポイントをアップデートしてるんですもんね。

「そうですね。90年代のモノづくりってやっぱりホントに凄いですし、良いものを作ってるんですけど、どうしても経年劣化で越えられない部分が出てきちゃうじゃないですか。20年て洋服とかの物の経年劣化でいうと限界の限界だと思うので、そうなって来ると物理的に物は良いんだけど、ダメってなっちゃうのが多くなってきて。やっぱりそのタイミングだから、今リイシューするとしたらここかなって思いますね」

--- そういった意味でも、リイシューする価値があるんですね。

「そうですね。これを出すことで、"Super Sack"の寿命を20年延ばすじゃないですけど。そういう風に出来たらなと思います」

--- これは随分珍しそうなモデルですね。

「これはアメリカのJANSPORTのヘッドクォーターに行ったときに、アメリカでこのモデルを担当してくれたScottさんていう人が、別れ際にプレゼントしてくれたんです。今回のコラボから着想を得て作ったスペシャルなモデルなんだって、サンプルとして作ったからってプレゼントしてくれたんですよね。多分、高価な素材を組み合わせて作ってくれたんだと思うんですよね。これが今後発売されるのかどうかとかは分からないんですけど、色んな要素が詰まってますね」

--- これは最近のモデルですよね?

「そうですね。これは面白くて可能性があるなって思うんですよね。JANSPORTって学生の背負ってるシンプルなリュックっていうイメージがあると思うんですけど、ブランドとしては登山だったりエクスプローリングみたいなところに取り組んでいたりもして。街用の定番的なところ以外にも、この辺りは可能性があると思います」

--- こういうのって日本でも普通に展開されているんですか?

「展開していますし、限定のアイテムという訳でもないんですけど、価格が高いので普通のリテーラーがオーダーしていないかもしれないです。これも海外のバックパックのレーティングサイトでは既に高い点数が付いているんですよ」

--- そうなんですね! ネクストヴィンテージになるやも...

「色的にもThe North Faceのヴィンテージとカラーがバチバチにハマってるんですよね、そこは余り意識してないと思うんですけど。こういう今のハイエンドなモデルとかがゆくゆく面白いヴィンテージになっていく可能性があるなと思って」

--- JANSPORTのウェア類はどのような流れで収集されるようになったんですか?

「個人的にいくつかのブランドにサンプル出しなどをする仕事もしている関係で、色んなマウンテンジャケットを見ているんですけど、JANSPORTには突拍子もない切り替えしのアイテムが何故かあるんですよ。そういう意味で、ネタとしてもJANSPORTのジャケットが面白いんですよね。バックパックを作っているノリを、そのまま洋服に落とし込んだような作りになっていて。この首元のスナップボタンの脇のディテールとか、機能性的には絶対要らないやつだったりして。切り返しも意味のない部分が立体裁断になってたりして。全てがバックパックを作っている延長なんですよね」

「これとかも、機能を拡張していくタイプのバックパックあるじゃないですか。あの方法論をこ落とし込んでいて。今でこそフィッシングベストは流行ったし、着るバッグみたいな言われ方をするじゃないですか。けど、JANSPORTはバッグを作るメンタリティーでこのベストを作っているので、そういうとこが凄い面白いんですよね。洋服として面白くて、勉強になりますね。あと、JANSPORTのボディが凄い良いんですよ。カレッジもの風のスウェットとかTシャツとかあるんですけど、凄いボディが良くて。90年代のLeeのボディって凄い良いんですけど、あの感じですね。肉厚で詰まってて。90年代のRep Teeを探すときはLeeボディだと良いんですよね」

--- 古着としてJANSPORTの洋服類の価値は上がったりもしてないですよね?

「無価値だと思いますね(笑)。そこも良いですよね。いつくらいに作ってたのかっていうのはハッキリしないんですけど、作りとカラーリング的に90年代だと思うんですよね。前半ですかね。掘ったらもっと面白いものが出てきそうですね」

--- 最後に、改めて大橋さんが考えるJANSPORTの魅力をまとめて頂けますか?

「例えば最初に時計を買うならTIMEXとかG-SHOCKとかで、どっかのタイミングでROLEXのサブマリーナーを買って、いつかポールニューマンみたいな。そういう値段的な意味でのアップグレードってあるじゃないですか。それはそれで凄い面白いんですけど、意外とアメリカの人とかって収入も地位もあるみたいな人がG-SHOCKとかTIMEXみたいな入門編的なものを身に付けていたりして、そういうのって凄い面白いと思うんですよね。バックパックも、ここから進んでいって、ハイブランドもアウトドアブランドも無限にあるじゃないですか。でも、一つの選択肢として、社会的なステータスも収入もあるような大人がJANSPORTの同じ型のバックパックを使い続けていたりしたら、凄い面白いですよね。VANSとか、CONVERSEとかだったら全然あり得る話じゃないですか。そういう意味での選択肢としてJANSPORTが大きくなって来たら、日本でもJANSPORTがカルチャーっぽい存在になってきますよね。単に学生が入門編として買うバックパックじゃなくて。自分はJANSPORTをずっと使ってますっていうようなスタイルを築く。それくらいアイコニックなブランドだと思ってます」

大橋 高歩
NYのカルチャーと密接にリンクするファッション、ライフスタイルを提案する吉祥寺のセレクトショップ、the Apartmentとthe Apartment SOHOのオーナー。
http://www.the-apartment.net

Photography_ Haruki Matsui
Text_ Maruro Yamashita

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