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ファッションの世界で働ける幸せ―アンソニー・ヴァカレロが語る「サンローラン」への想い

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Them magazine 「GINZA SIX」Special Issueにて、《サンローラン》のクリエイティブ・ディレクターに就任して間もなかったアンソニー・ヴァカレロにインタビューを敢行。現在もメゾンを牽引する彼の当時の思いをプレイバック。

《サンローラン》というファッションの"聖域"ともいえるブランド。前任者にはトム・フォードにアルベール・エルバス、ステファノ・ピラーテ ィ、そしてエディ・スリマンがなお連ねる。そして、これまでのデザイナー同様アンソニー・ヴァカレロもまた、''モードの帝王''イヴ・サンローランから受け継いだ遺産を現代に甦らせようとしているのだ。ベルギー生まれの若きイタリア人デザイナーである彼が描き出す、歴史の新たな1ページとは。

――ファーストコレクションとなった2017S/Sシーズン のインスピレーションや、あなたが表現したいと思う男性像とは一体どのようなものなのでしょうか?

私が考える《サンローラン》の男性像というのは、少し自己中心的かもしれませんが、自分のようなパリジャン、 都市部に住むシックな男性をイメージしています。過去のしがらみやノスタルジーにふけることなく、また同様に先の見えない未来についてあれこれ思いを巡らせるのではない、今を生きている男性というのを表現しようと思っています。そしてファッションにおいても一つのスタイル に固執せず、さまざまなプロダクトやスタイルを柔軟に取り入れることのできる人に向けてデザインしています。

――あなた自身も《サンローラン》が似合うような出で立ちですが、自分で鶯たいと思うようなものをつくっている のでしょうか?

そうですね。実際にサンプルを自分で着てみることも 多くて、そこで気付いた点や気になる箇所を修正したりアップデートしながら、コレクション制作を進めています。 自分だけでなく私の周りにいる人々のこともイメージしています。「自分らしさ」というものを持っている人たち に惹かれます。

――2017-18A/Wシーズンでは、ウィメンズコレクション のランウェイのなかでメンズのルックが数体登場しました。 あなたが手掛ける《サンローラン》のメンズコレクションの 本格始動を心待ちにする人々は多いと思います。

確かに今シーズン、ウィメンズのランウェイのなかに 数体メンズウエアのルックを登場させました。しかし現時点では、今すぐにメンズウエアをウィメンズと同じ割合にしようとは考えていません。むしろ女性がメンズウエアを取り入れたり、反対に男性がウィメンズウエアを通じて自身を表現するというようなアプローチが好きです。女性が男性サイズのボンバージャケットやセーターを着るのはとてもセクシーだと思いますし、逆もまた然りです。ジェンダーを超えたミックススタイルに興味があるのです。もちろん男性がメンズウエアを着たときに生まれるシルエットやラインもクールだと思いますが、私はそこに"パーフェクト''であることを求めてはいません。ウィメンズウエアにマニッシュなアイテムもありますし、メンズコレクションのなかには女性が着ても素晴らしいものもたくさんあります。女性だからドレスを着る、男性だからスーツばかりというのではなく、男女問わずにウエアをミックスしてもらいたいのです。

「ファッションの世界で働けることを 心の底から幸せだと感じています」

――世界で最も影響力のあるメゾンの一つである《サンローラン》からクリエイティブ・ディレクターという職のオファーを受けたとき、あなたはどのように思いましたか?《サンローラン》のなかであなたが行っていくことはどのようなことなのでしょうか?

実は以前から、いくつかのブランドからアプローチを受けていました。これまではすべて断っていたのですが、 それは大きなブランドでデザインするということが私の目的ではなかったから。しかし《サンローラン》は例外 です。ファッションの世界で最も重要な位置にいるこのメゾンからのオファーを断る人はいないと思います。《サンローラン》というメゾンだから、それが私がこのポジションを引き受けた理由です。また私がシグネチャーブランドで行ってきたクリエイションが、今後《サンローラン》でつくり上げていくものの延長線上にあると思ったからでもあります。今まで自分自身のためにやってきたことを、今度は《サンローラン》のためにやっていく。自分自身のクリエイティビティの進化を、このメゾンのなかで成し遂げるというのが主な目的です。

――クリエイティブ ・ ディレクターに就任してからすでに 何度かキャンペーン ・ ビジュアルを制作、発表していますね。フォトグラファーも毎回異なる人選で、そのテイストもがらりと変えていますが、あなたがキャンペーン・ビジュアルで表現したいことは何でしょうか?

そもそも、"キャンペーン''という言葉が古いのではないでしょうか? 数多くのメゾンがシーズン毎に年2回ほどキャンペーン・ビジュアルを発表していますが、現代はInstagram の時代です。メゾンのファンやカスタマーには毎週、または毎日のようにビジュアルを発信すべき時代になってきているのではないかと思っています。これまでコリエ・ショアとイネス・ヴァン・ラムスウィールド&ヴィノード・マタディンの2組が《サンローラン》でビジュアルを撮影してくれたのですが、《サンローラン》が 表現する女性像というものをアーティストとして、さまざまな視点で撮ってくれています。《サンローラン》ウーマンはあるときは夜に生きる女性だったり、グラマラスな女性だったり、いろいろな表情を持つ女性。こうしたイメ ージを彼女たちのファインダーを通じて表現してもらおうとしています。

――撮影するフォトグラファーは、あなたが毎回決めているのでしょうか?

そうですね。

――では、日々たくさんの写真を見ているのでしょうね。

私がモードの世界に入ったのも、写真がきっかけです。青年時代、当時の広告や雑誌のエディトリアルといったファッション写真が私の想像を膨らませてくれました。今でもコレクションのイメージやビジョンを決めるときは、必ず写真を見ています。

――では最後に、今後《サンローラン》に対してどのよう なビジョンを抱いていますか?

非常に難しい質問ですね。というのも、私はこれまで未来を見据えるというよりは、日々の生活を一日一日誠実に過ごしてきました。この先の "将来設計" というものはありません。自身のブランドで活動していたときから感じていましたが、ファッションの世界で働けることを 心の底から幸せだと感じています。そしてこれから先も成長しながら歩み続けられればと思っています。私は予言者やマジシャンではないので、未来を予測することは できませんが、これからの《サンローラン》に、ご期待いただければと思っています。

ANTHONY VACCARELLO
アンソニー・ ヴァカレロ ベルギー出身。ブリュッセルの国立ラ・カンブル視覚芸術高等専門学校を卒業後、2009年にシグネチャーブランドを立ち上げる。 2006年にイエール国際モードフェスティバルにて大賞、 2011年にはANDAMファッション・ア ートを受費。 2016年4月《サンローラン》のクリエイティブ・ディレクターに就任。

Photography_Buruno Staub. Edit_JUNICHI ARAI(Righters).

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