Courtesy of Aesop
Courtesy of Aesop

Them magazine

【インタビュー】世界で愛されるスキンケアブランド「イソップ」の揺るぎない品質へのこだわりとその哲学

Them magazine

ファッション・カルチャーマガジン

フォローする:

Courtesy of Aesop
Courtesy of Aesop
— ADの後に記事が続きます —

イノベーション・ディレクターのケイト・フォーブス博士が語る《イソップ》のプロダクト制作と素材の探求について。

メルボルン発のスキンケアブランド《イソップ》。創業当社から高品質の素材と研究、商品開発に対する確固たるこだわりを持って多くのプロダクトを世界に向けて発信してきた。ここで改めて説明する必要もないほどに、ブランドへ寄せられる信頼と人気は絶大だ。その人気の要因は一切の無駄を削ぎ落とした合理的なデザイン性と店舗でのスタッフによる丁寧なカウンセリング、何より数多くあるプロダクトが持つ品質の高さだろう。同ブランドの製品・研究開発のイノベーション・ディレクターとして全製品およびサービスの管理統括に携わるのが、ケイト・フォーブス博士だ。現行製品のなんと約9割を手がけてきたケイトはまさに《イソップ》の理念を体現しているといっても過言ではない。そんなブランドの核となってプロダクトの誕生からローンチまでを監督する彼女に、"ローズ オードパルファム"のローンチを記念してインタビューを行った。改めて《イソップ》の素晴らしいフィロソフィーを知ることで、手に取るプロダクトの価値を考えるきっかけになるはず。

Photography by Julien T Hamon (2020) Courtesy of Aesop

――ブランドに化学者として入社してから、イノベーション・ディレクターとなった現在までの経緯、そしてブランドとの歩みを教えてください。

《イソップ》に入社したのは2000年で、最初はブランド初の社内化学者として創業者のデニス・パフィティスと一緒に働いていました。初期の仕事は、エッセンシャルオイルやビタミン、抗酸化物質のスキンケアにおける有効性の研究です。この研究により、《イソップ》におけるスキンケア製品の幅が広がりました。ブランドの成長とともに私の仕事内容も研究開発に加え、製品ポートフォリオの管理、コンプライアンス、梱包材料にまで広がったのです。こうして世界中のお客様に愛される製品の多くに関わってこられたことを誇りに思います。《イソップ》は14年の"マラケッシュ インテンス オードトワレ"のリニューアルとともにフレグランスを一新しました。何より嬉しいのは、調香師のバーナベ・フィリオン、セリーヌ・バレルと一緒に4種類のフレグランスの開発に関われたことです。2人との作業はとても刺激的で、フレグランスづくりにおける芸術と科学の力について多くを学ぶことができました。

――入社した際、すでに歴史のあるブランドのヘリテージをどのように受け止め、引き継ぎましたか?

《イソップ》で働くようになってほぼ20年になります。入社当時の従業員数は20人程度で、オーストラリアのメルボルンにある、オフィスと研究所と倉庫を兼ねた小さなビルで働いていました。入社してからほとんどの期間を創業者のデニス・パフィティスと一緒に働く幸運に恵まれましたので、デニスやその他のリーダーたちの決断方法を直接学ぶことができました。あらゆる業務に細心の注意を払い、しっかりと思考を重ね、高い品質を目指すとともに、自信を持って大胆に新たな境地を切り開く。お客様や、あらゆる決定においてサポートをしてくれる社内スタッフへの深い敬意も忘れない。彼らと働けたことで、そういった姿勢を学ぶことができたのです。この伝統を学び理解することは、新たにイソピアン(イソップらしい分野や行動規範を持っている人)となる従業員にとっては大変なことかもしれません。そのため、《イソップ》では新人研修やトレーニングに非常に力を入れています。新人研修には3カ月以上をかけ、彼らがどの部署でも無事に着任できるよう尽力しているのです。

――《イソップ》のプロダクトが完成するまではどのようなプロセスがあるのでしょうか? その過程で、難題にぶつかったときはどのように解決していますか?

新製品開発には通常、最低でも2年かかります。また、製品が複雑な配合の場合には、それ以上の時間を要することもあります。それは高品質の新製品を作るために、必要な時間をしっかりかけるようにしているということでもあります。高度な技術を持つ《イソップ》の化学者は、新製品を発売する前に配合をあらゆる面から入念に検査してより良いものに仕上げていきます。さらに厳格なテストを全製品に対して行い、製品の有効性、安定性、安全性を確保しているのです。実は、《イソップ》では最大20種類の製品を並行して開発することもあるのですが、その中でも無事に製品としてローンチされるのはほんの数製品です。研究開発に苦労はつきものですが、それもプロセスの一部だと思っています。配合の性能に関する難しさもあれば、梱包材料の性能に関する難しさもあります。研究開発プロセスにおいて、いろいろな難題にぶつかることはわかっているので、あらかじめ多くの選択肢を用意してから開発を開始し、作業を進めながら改良していくようにしています。まるで漏斗で濾過するような開発プロセスと言えるでしょう。

Photography by Julien T Hamon (2020) Courtesy of Aesop

――スキンケアのブランドとして歴史を歩んできた《イソップ》が、フレグランス部門を立ち上げたのはなぜですか?

《イソップ》のフレグランスは昔から人気で、私たちにインスピレーションを与えてくれる存在です。高品質の植物成分を配合した独創的な魅力のあるブランドのフレグランスは、市場でよく見るフレグランスとは一線を画する製品と言えるでしょう。これまで、著名なフランス人調香師のバーナベ・フィリオンとセリーヌ・バレルとのコラボレーションにより、4種類のフレグランスを開発してきました。バーナベとは"アロマティック ルームスプレー"シリーズでも協業しています。敬愛する調香師とのコラボレーションはとてもやりがいがあります。製品のコンセプトそのままに、独創的で繊細、かつ洗練されたフレグランスを生み出してきたことを誇りに思います。

――調香師とはどのように一つのフレグランスを完成させますか?コンセプトから一緒に話し合うのでしょうか?

フレグランスの開発は、香りの着想源となるものをリサーチすることから始まります。"ローズ オードパルファム"の着想源となったのはシャルロット・ペリアンの生涯と作品であり、私たちはバーナベとともに彼女の生涯と作品を具現化できるのはどの原料なのか想像を巡らせました。その後、様々な濃度で様々な原料の試験を繰り返し行いました。原料の供給源は多様で、地理的な違いもあれば、抽出方法が違う場合もあります。香りを評価できる程度まで、アルコール溶液の中で香料を濃縮・熟成させる必要があるため、開発プロセスには長い時間がかかります。また、フレグランスはつける人によって香りの変化が異なるため、お客様が香りをどのように纏うかを考えながら決めるようにしています。

シャルロット・ペリアンが日本で作業する様子(1940年代)
ACHP/ADAGP 2020
左/ACHP/ADAGP 2020、右/Photography by Julien T Hamon (2020) ACHP/ADAGP 2020

――ブランドにとって"香り"はすべてのプロダクトにおいてとても重要だと思います。《イソップ》にとって"香り"はどのような役割を担っていますか?

《イソップ》のストアは良い香りがすることで知られていますが、製品を作る際に最も大切にしているのは肌への働きかけです。エッセンシャルオイルやその他の成分も、肌や髪にとって良いものを選ぶようにしています。どの成分もなんらかの目的にかなうものでなければならず、そうでなければ使用はしません。結果として生まれる製品の香りによって、五感がさらに喜びで満たされていきます。香りは人の記憶と強く結びついており、私たちをその記憶へと連れていく力を秘めていると考えています。

――パッケージデザインにもファンが多いですが、容器やデザインについてどんなことを大切にしていますか?

《イソップ》はいち早くこのような容器を導入した企業のひとつです。私たちにとって最も重要なのは中身の品質を確保することです。容器は機能的で、ミニマルかつ控えめでなければならないと思っています。私たちは常に美観に配慮していますが、このアンバー色の遮光瓶は、目を楽しませるだけでなく、製品の中身を保護するという重要な役目も果たしているのです。リサイクルも可能なので、サステナビリティに対するブランドの姿勢にも合致していますね。

――《イリス・ヴァン・ヘルペン》や《リモワ》とのコラボレーションがとても新鮮でした。コラボレーション相手に求めることはあるのでしょうか?

常にアートからインスピレーションを得ている《イソップ》は、製品に魅力を与えてくれる、同じ感性を持つアーティスト、ギャラリー、文芸フェスティバル、そして作家たちと、文化的で創造的なパートナーシップを組んでいます。こうしたコラボレーションを見れば、《イソップ》がバランスの取れた生き方を大切にしていることが分かると思います。ここでいうバランスの取れた生き方とは、より良い人生を送るには創造的な探求と知的好奇心が必要不可欠であるとする考え方です。私たちはこうしたコラボレーションから多くのインスピレーションを得ていますが、足して2になるのではなく、それ以上に興味深いものを創造することを目指しているのです。

――先日『イソップ:ザ ブック』をローンチされました。スタッフによる店舗での製品の説明だけでなく、ブランドの歩みや姿勢、哲学を伝えることが大切だとお考えですか?それはなぜでしょうか?

ブランドにまつわる物語は数多くありますが、『イソップ:ザ ブック』の発表は、《イソップ》の世界について私たち自身の言葉で深く掘り下げる貴重な機会となりました。《イソップ》の秘話や独特の世界観とともに、私たちが幸運に恵まれつつも妥協のない姿勢を貫いてきたことをお伝えすることで、他とは異なる存在であることがいかに重要であるかを示す内容になっています。本書を通して、ブランドのより深い世界や内面を見ていただきたいと思っています。

――ナチュラルなスキンケア製品を求める人が増え、それに伴ってさまざまなナチュラル志向のブランドができてきたように思います。そしてもっとこれから増えていくと思うのですが、《イソップ》がほかのブランドと違うのはどの部分だと考えますか?

《イソップ》はオーガニックブランドでもナチュラルブランドでもありません。私たちの一番の目的は、高品質の成分を配合することで製品の有効性と安全性を確保することです。《イソップ》は創業当初から植物由来の製品が肌にもたらす恩恵と、科学が生み出す優れた成果に魅了されてきました。こうした人間の優れた能力と自然界の力を融合させることで、独自の製品を作っています。同時に創業当初から、製品の研究開発において他社とはまったく異なるアプローチを取っています。他社が行っていることはあまり気にせず、流行にもとらわれないようにしています。私たちはただひたすらに、品質、顧客サービス、デザインを重視しているのです。私たちのカスタマーもそうした姿勢に価値を見出してくださっているのではと思っています。

Kate Forbes
ケイト・フォーブス。メルボルン大学理学部化学科で理学士号(優等学位)と博士号、イギリスのデ・モントフォート大学の学位(美容科学)を取得。2000年に《イソップ》へ入社。同社初の研究所でインハウスの化学者として仕事を開始して以来、企業哲学から高品質の製剤処方を維持し、顧客へ新しい形のアプローチを行ってきた。製品・研究開発のイノベーション・ディレクターとして全製品およびサービスの管理統括に携わる。

Edit_Marin Kanda.

最新の関連記事

Realtime

現在の人気記事

    次の記事を探す

    Ranking Top 10

    アクセスランキング