■調査会社コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ(Consumer Intelligence Research Partners:CIRP)は10日、ウォルマートのサブスクリプション・サービス「ウォルマート・プラス(Walmart +)」の会員数が最大820万人のぼるとの予想を発表した。
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年間98ドル(月額12.95ドル)となるウォルマート・プラスはアマゾン・プライムに対抗する有料のメンバーシップ・プログラム。スーパーセンターにある食品や日用品、オモチャ、家電品などを対象に無制限で無料で当日宅配を受けられる他、ガソリン割引や店内での買い物時でのセルフスキャニング・チェックアウトも特典となっている。
CIRPが昨年11月~今年1月にかけて約500世帯を対象に行った調査によると、ウォルマート・プラスの会員数は1月末時点で740万~820万人との推計となる。
昨年9月から始まったウォルマート・プラスはウォルマートの通販サイト、ウォルマート・コムの顧客の13~14%を惹きつけると見ているのだ。
売り場で生鮮食品等をピッキングし店舗から当日発送するネットスーパーでは顧客の26%がウォルマート・プラス会員としている。
またCIRPのアナリスト、マイケル・レザー氏によるとウォルマートはサブスクリプションのローンチから1年(今年9月)で1,000万人を会員にするとの予測だ。
プラス会員の理想的な候補者として、毎年平均で1,900ドル(約20万円)をウォルマート・コムで買い物する利用者として上げている。ウ
ォルマート・コム利用者の平均支出額は年1,000ドルとしていることから、2倍近くを支出する利用者がプラス会員になると見ている。
プラスの年会費98ドルについては予想より割高とした人の割合は3分の1となる29.4%だった。一方、コストコの会員費を割高とした人は36%でアマゾン・プライムでは63%にも上っている。
調査結果で興味深いのはプラス会員にならない一番の理由はアマゾン・プライムになっているを上げていることだ。つまりプライムとは重複したくないとの回答なのだ。
ウォルマート・プラスでは、宅配サービスを提供している2,700店を含む4,700店以上のウォルマート・スーパーセンター等で利用可能となっている。
ウォルマート・プラスの宅配は、ウォルマートの宅配サービス「デリバリー・アンリミテッド(Delivery Unlimited)」をリブランド(再構築)したものだ。
1回の宅配手数料が通常9.95ドル(一部に7.95ドル)かかっていたところをデリバリー・アンリミテッドでは年会費(もしくは月会費)で無制限に注文できる定額宅配サービスとなっていた。
年会費98ドルを払ってデリバリー・アンリミテッドを利用していた会員はそのままウォルマート・プラスの会員となっている。
なおウォルマート・プラスの宅配では対象品目が16万品目。ローンチ当初は1回あたりの最低注文額が35ドルとなっていたが、昨年12月にこの条件は撤廃された。
最低購入金額の撤廃は、注文翌日から2日後に届くウォルマート・コムでの買い物に適用される。ネットスーパーに関して35ドル以上というミニマムオーダーは従来どおりとなっている。
CIRPによるとプライム会員数は1.42億人と見ており、ウォルマートがサブスク会員数でアマゾンを脅かす存在になるのはまだ時間がかかりそうだ。
ただし、サブスク料金の安さや今後増えると予想されるサブスク特典によってはアマゾンもうかうかしていられない。
また4,700店以上あるリアル店舗を生かした店舗網で、スピード宅配の対象地域の拡大もアマゾンにとっては脅威となる。
ウォルマートは先月、ロボット物流のマイクロ・フルフィルメントセンター(Micro-Fulfillment Center:MFC)を本格的に拡大していくことを発表した。
ウォルマートがサブスク会員数でアマゾンに肉薄するのはそう遠くないのかもしれない。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ウォルマートは昨年度、アメリカ国内の店舗数が前年度に比べて13店舗減少しました。チェーンストアとして成長してきたウォルマートにとって店舗数の減少は創業以来初となる歴史的な出来事です。さらに昨年の10月31日現在、スーパーセンターやディスカウントストアなどウォルマートUSの店舗数は4,748店と前の年から8店舗減少しています。つまり2年連続で店舗数が減っているということで、チェーンストア理論から見ればありえないことです。ウォルマートは店舗数を軸にした成長戦略を止めたということ。ウォルマートにとって今後の成長のものさしとなるのはサブスクリプションです。サブスク会員数の増加が成長戦略のKPI(Key Performance Indicator)になるのです。ネットフリックスと同じ重要業績評価指標を持つことになります。つまり既存店・売上高前年同期比以上にリテンションレート(Retention Rate:サブスク会員維持率)やチャーンレート(Churn Rate:サブスク会員解約率)等が重要な指標になるのです。
ネットスーパーを始めた日本のチェーンストアはサブスクリプションを研究すべき時代になります。
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