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今注目の「D2C」を解説、押さえておきたい基本とブランド事例

今注目の「D2C」を解説、押さえておきたい基本とブランド事例

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近年、アパレル・ファッション業界にも「D2C(Direct to Consumer)」の大きな波がやってきています。次々に新しいブランドが誕生し、SNSやECサイトを中心にファンを醸成していますが、改めて「D2C」って何?と言われると、正確に説明できない…という方も少なくないのではないでしょうか?そこで今回は、D2Cの基本、代表的なD2Cブランドの事例、働きかたの特徴などについて、ご紹介いたします。

編:みなさんこんにちは。今回は、今アパレル・ファッション業界で大注目の「D2C」について聞いていきたいと思います。まずは簡単にみなさんの自己紹介をお願いいたします。

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相原:営業の相原です。
外資・ラグジュアリー、スポーツ・アウトドア、カジュアルなど幅広い企業を担当しており、最近はD2C企業の担当も増えてきています。

宮内:業務委託案件マッチングサービス「FLEXSHION(フレクション)」責任者の宮内です。
D2C企業を含め、カテゴリーを超えて日々さまざまな企業と接し、企業ごとの特徴を把握しています。

佐々木:営業アシスタントマネージャーの佐々木です。
アパレル企業だけでなくIT企業やD2C企業など幅広くさまざまな企業を担当しています。

ECサイトを主軸に、中間流通を通さないことでフレキシブルかつ効率的なビジネスを行えるのが特徴

編:まず「D2C」とは何か、基本的な説明をお願いします!

相原:D2Cは「Direct to Consumer」の略で、企業が自ら企画・製造した商品を、消費者へ直接販売するビジネスモデルのことです。一般的に、商品が消費者のものに届くまでには小売店などの中間業者が入ることが多いのですが、D2Cの場合は直販なので、効率よく商品を届けることができ、リーズナブルな価格で小ロットやオーダーメイドにも対応できることが特徴です。

編:「SPA」との違いは何でしょうか?

相原:SPAは「Speciality store retailer of Private label Apparel」の略で、企画から製造、販売を一貫して自社で行うビジネスを指します。何だか似ていますよね(笑)。カンタンに言うと、SPAが実店舗販売を軸としているのに対し、D2CはECサイトを軸にしています。

宮内:販路の軸がECサイトなので、SNSを中心としたデジタルマーケティングによる顧客獲得を重視しています。商品情報をはじめ、ブランドや商品ができるまでの背景を発信してその反応を見たり、たとえば「生地はどっちがいい?」とファンにアンケートを取って決めたりと、双方向のコミュニケーションによってブランディングされていることが多いです。

編:店舗などがないため、ファンづくりの過程も異なるということですね。

佐々木:ひと昔前は、109のカリスマ店員のような存在が当たり前でしたが、ECサイトの成長に伴って、世界中どこからでも同じ距離感でブランドに接することができるようになりました。また、「デザイナー」や「商品」だけでなく、ものづくりの過程やインフルエンサーの思いなどからファンが生まれているのも特徴です。

編:どういう企業がD2Cブランドを立ち上げているのでしょうか?

既存のアパレル企業が新規事業として立ち上げるケースもありますが、新進気鋭の企業や、異業界からの参入が圧倒的に多いです。消費者とのタッチポイントがデジタル中心であるため、ITに強みを持った企業が多いですね。

編:OEMやODM、地方の工場などが参入するケースもありますよね。

宮内:はい。場所を選ばず、ものづくりに長けた企業が直接消費者にアプローチできるのも、ECサイトの強みですね。

従来型のアパレル企画・製造に捉われず、自由な発想でものづくり、販売を行うブランドが多数

編:では、アパレル・ファッション業界で注目を集めているD2C企業・ブランドをいくつかご紹介いただけますか?

宮内:D2Cは中間業者が入らず、店舗運営に掛かるコストもかからないので、間接費が極めて少ないのが特徴です。そのためビジネスの自由度が高く、大きく3種類に分けられます。

■ニッチ
在庫を抱えず、小ロットでニッチ層に向けたブランドを立ち上げるパターン。1企業で多数のブランドを展開することが多く、1ブランドで10億、100億を狙うのではなく、10ブランドで1億ずつ売り上げる、というタイプ。

「Dear Sisterhood(ディア・シスターフッド)「jour de muguet(ジュール・ド・ミュゲ)」「1/18billion(ワン・エイティーン・ビリオン)」等のpicki(ピッキー)社や、スモールサイズウェアを展開する「COHINA(コヒナ)」のnewn(ニューン)社など。

■パーソナライズ
消費者の体型や用途などの希望に対応するパーソナライズサービス。サイズや素材をオーダーし、自身にフィットする商品が買える、通常のオーダーメイド型と比べて納期が格段に早い、といった特徴がある。

「Oh My Glasses(オーマイグラス)」のオーマイグラス社、「FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)」のファブリックトウキョウ社、「KASHIYAMA(カシヤマ)」のオンワードパーソナルスタイル社、「FAMZON(ファムゾン)」のニューワールドカンパニー社など。

■インフルエンサー
すでに固定ファンを獲得しているインフルエンサーがディレクターとなり、ブランドを立ち上げるパターン。ディレクターの世界観がそのままブランドに落とし込まれるケースが多いため、フォロワーがそのまま顧客になりやすい。

「eimy istoire(エイミーイストワール)」「ánuans(アニュアンス)」などはIT企業の3ミニッツ社から独立したDOT ONE(ドットワン)社が、「apres jour(アプレジュール)」「kutir(クティール)」などはアダストリア社のグループ会社、BUZZWIT(バズウィット)社が、それぞれ展開している。

編:こうやって分類されると分かりやすいです!

相原:ニッチ型のpicki(ピッキー)という企業は、ブランドメイキングファームとして次世代ブランドプロデューサーを輩出し、複数ブランドを展開しています。SNSを通じてものづくりの過程から発信することで、期待値を醸成、販売促進へとつなげているのが特徴です。
一つひとつのブランド規模はそこまで大きくありませんが、ブランドごとに強い顧客が付いており、受注生産に近いレベルの小ロットで確実に売り切ることができており、勢いを伸ばしています。

宮内:インフルエンサー型の「ánuans(アニュアンス)」は、中村麻美さんがディレクターをつとめ、2020年に立ち上げたブランドですが、ECサイトオープン初日の売上がなんと9,000万円!ルミネ新宿、伊勢丹新宿、梅田阪急、ルクア大阪に実店舗もオープンしました。

編:実店舗展開するパターンもあるのですね。

宮内:EC主軸であることには変わりありませんが、事業戦略の中で実店舗やポップアップ店舗を展開するブランドもあります。オーダーメイドスーツの「FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)」なども実店舗展開していますね。

佐々木:BUZZWIT(バズウィット)社もECサイト専用ブランドを10ブランドほど展開し、創業3年で急拡大しています。通常のアパレルとはものづくりのサイクルやスピード、プロセスが異なるため、アダストリア社から分社化したBUZZWIT社のように、別企業化するケースも見られるようになってきました。

編:あえて分社化することでD2Cの特徴を活かしていくということですね。

佐々木:そうですね。また、上記例には出てきていませんが、2020年、ZOZO傘下に入ったyutori(ユトリ)社の社長は、ゲーム・IT企業のアカツキ社出身でまだ20代。Instagramコミュニティメディア「古着女子」が成功し、アカウントに集まる古着ファンに向けて、「9090(ナインティナインティ)」や「spoon store(スプーン ストア)」などのブランドを展開しています。経営層にアパレル出身者がおらず、明確なビジョンを掲げ、ゴールに対してPDCAを回せることが重視されています。

編:単なる販路の違いだけではなく、従来型のアパレルにはないビジネスモデルやマネタイズの発想がとても自由だなと感じます!

宮内:これまで、ブランド規模をいかに大きくできるか、ということが重視されがちでしたが、D2Cの多くは必ずしもそうではありません。良い意味でアパレル業界に縛られない、色んなアイデアや他業界の成功パターンを詰め込んでいけるビジネスだと感じます。

顧客の声と徹底的に向き合うマーケットイン型のビジネス
反応も売上もダイレクトに届くのでやりがいは大きい

編:D2Cが持つ、スピーディーで柔軟で自由なビジネスのおもしろさはどういうところでしょうか?

相原:たくさんあると思いますが、ひとつはスピードが速い分、売上の反応も早いということです。シーズンに縛られずにMD組みを行うことが多いので、常に発信し続けることで、成長率200%以上、なんて景色を見ることもできます。自分自身の手でブランドを成長させたという実感がやりがいにもつながるのではないでしょうか。

編:シーズンに縛られずに、とはどういうことですか?

相原:ブランドを創り上げていくためには、お客さまに飽きられず常に情報を発信し続けなければなりません。そのためには、数か月おきにシーズンアイテムを出すよりも、少数でも高頻度で商品を出し続けるほうがSNSとの相性が良く、結果的にシーズンごとのMD組みではなく、小ロットで次々と出していくスタイルになっているのだと思います。

宮内:D2Cは、コレクションブランドのような、作り手の思いを重視するプロダクトアウト型のものづくりとは対極で、顧客の声を反映させるマーケットイン型のものづくりです。お客さまが求めるものを世に出していきたい、お客さまの反応をものづくりに反映していきたい、という方にはとてもおもしろいと思います。

佐々木:もちろん、従来型のアパレルも顧客の声は大切にしていると思いますが、D2Cは「顧客の声」そのものがビジネスの軸なので、より顧客をリアルに感じられると思います。

編:SNSコミュニケーションなどを通じて、リアルタイムで企画が生まれるシーンも見かけますよね。従来のアパレル企画を知っている人ほど、その軽やかさに驚かされるのではと思います。

宮内:その分、デジタルリテラシーは求められます。SNSやECサイトのさまざまなデータから、顧客のインサイト(消費者行動・感情)を読み取り、それらを商品企画や販促企画につなげていかなければなりません。今後のアパレル業界において重要度が高まるスキルを、スピード感のある環境で身に付けられるのは、将来的な意味でも大きな魅力ではないかと思います。

編:現時点でD2Cでの経験がなくてもチャレンジできるものですか?

宮内:D2Cはさまざまなバックボーンを持つ人が集まっている場合が多いので、必ずしもD2Cでの経験が求められるわけではありません。今までのご経験が、企業の求めるスキルと一致し、D2Cビジネスへの感度の高さや高い意欲があれば、十分チャレンジできます。

編:D2Cビジネスへの感度の高さ、とはたとえばどういう点でしょうか?

相原:マインド面で言うと、自ら変化していこう、という積極性が必要です。「あなたにこの業務を任せる」というジョブ型、プロジェクト型に近いスタンスの組織が多いので、雇用で守られている、教わって仕事を覚える、という受け身のスタンスだと、組織のカラーとは合わないかもしれません。

宮内:IT業界はプロジェクト型で動くことが多いため、ITをバックボーンに持つ企業の場合、ジョブ型、プロジェクト型に近い組織になりやすいのだと思います。組織として成長過程で社内の流動性が高いので、初めてのことでもどんどん動いていく柔軟性が求められることが多いですね。

佐々木:成長過程の組織という意味では、ポジションを兼任するケースが多いのも特徴です。デザイナー兼CS、生産管理兼ECサイト運営など。ひとつの職種を極めていきたいタイプの方は、事前に組織構成をよく確認しておくと良いでしょう。

編:聞いていると、スタートアップ企業ならではの忙しさがあるのかな、という印象を受けます。

佐々木:インフルエンサーやYouTuberなど、著名人をディレクターに据えたブランドの場合、いわゆる「定時」の中では仕事が完結しないこともあります。いつでもどこでも仕事ができるので、リモートワーク率も高く、自由度が高い一方で、表裏一体の大変さもあると思います。

宮内:ただし、生産性や効率化を重視する企業が多いので、総労働時間が長いということはあまりありません。よりフレキシブルに、ライフスタイルの中にうまく馴染ませながら、メリハリをつけて自由に1日のサイクルを作ることができると思います。D2C企業・ブランドと業務委託契約で案件を請け負うタイプの方も多いので、フリーランスの方はそのような形で携わってみるのもおススメです。

知的好奇心が高く、自分で「正解」を創り出していきたいという人にオススメ!

編:D2Cに興味を持った方々に、心がまえなどメッセージをお願いします。

多くのD2Cが新しいことにチャレンジしています。正解がないことが前提なので、「正解を教えてください」「正解が分かりません」というスタンスではおそらく付いていけないでしょう。色んな失敗をしつつも、自分たちで正解を作りに行くという考えを持てる方はフィットすると思います。

宮内:デジタルリテラシーが高い、マーケットリサーチが好き、ニッチのコアゾーンがいるところを知っている…といったことだけでなく、既存のアパレルビジネスに違和感を覚えている、変えていきたいけれど、現職の体制上難しい、といった方にもオススメです。モノの境界線がなくなっている今、ファッション=洋服だけでなく、コスメやスポーツ、インテリア、アウトドアなど広くライフスタイル提案に広げていく計画を立てている企業も多く、知的好奇心が高い方はすごく成長できる環境だと思います。

相原:これまでのアパレル経験に固執するのではなく、それらを活かして新しいことにチャレンジする、という心がまえで臨まれることをおすすめします。今後、ものづくりのプロセスやスピード感はどんどん変わっていくと思います。業界全体の大きな変革期のスタートラインである今のうちに、その変化を経験しておくのは、今後の大きな財産になるはずです。
若い方は、修行感覚でチャレンジするのもひとつの選択肢です。「ずっといて欲しい」というよりも、「同じ思いでやりたいことを一緒にやりましょう!」というスタンスの企業が多いので、やる気がある方はその想いを全面にぶつけてみてください!

佐々木:最近、D2Cって何?D2Cって分からない…という声を聞くようになりましたが、少しインターネットで調べるだけで情報は山ほど出てきます。本もたくさんあります。今回の話は基本的な内容なので、興味を持たれた方は、ご自身でも情報収集してみることをおすすめします。興味を持って飛び込んできてくれる人を、企業も待っていると思います!

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