株式会社アイ・エス・エス・コンサルティングの安齋陽子さんは、求職者と企業の両者から高い評価を受けていて、業界でも広く名の知れた存在です。彼女のコンサルティングを受けて転職した人の間では、彼女の名前を冠にした「キャリアについて語り合う会」も結成されたそうです。なぜ安齋さんはそこまで厚い信頼を獲得できたのか。彼女のこれまでのキャリアを伺いながら、人に寄り添うコンサルティングを実現するにいたった背景や、よりよい転職に導くために行っていることについて、語っていただきました。
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安齋 陽子さん/株式会社アイ・エス・エス・コンサルティング コンサルタント
一部上場スポーツメーカーにて人事総務を経験後、舞踊留学で渡似。帰国後、外資系クリスタルブランドにてショップスタッフを経験後、エリアマネージャー兼トレーニングマネージャーとしてリテールのマネジメント、インストアプロモーションの企画・運営、および直営店の新規出店に数多く携わる。また全国250名の採用およびトレーニング全般に従事。2006年より人材ビジネスに転進し、15年以上のキャリアを有する。
イスラエル舞踊のダンサーが世界一の売上を叩き出し、クリスタルブランドのエリアマネージャーに
―安齋さんが所属している会社について、ご紹介いただけますか?
株式会社アイ・エス・エス・コンサルティング(ISS Consulting, inc.)は、1996年、外資系企業に特化した転職エージェントとして創業して以来、今日まで一貫して「グローバルで活躍する候補者のキャリアと、クライアントのビジネスを成功に導くこと」を使命に、働く人の無限大の未来を共に創造し続けてきました。中長期的視点で、必要な時に必要なサポートを継続的に行うことで、自分らしく一歩前に進む人・組織を応援し続けています。
―安齋さんのキャリアについてもお伺いします。経歴を拝見して驚いたのですが、イスラエル舞踊を勉強していて、イスラエルに留学された経験をお持ちなのですね。
私は子どもの頃からクラシックバレエをやっていて、大学でスペイン舞踊にどっぷりハマっていたんです。その後、よりニッチな舞踊を学びたいなと思い、エジプト舞踊やイスラエル舞踊を学び始めました。情勢があまり良くない時代でしたが、イスラエルには計半年くらい行きました。
―それからスワロフスキーで働くようになられたと伺っています。
当時はダンサーとして活動していて、渋谷のBunkamuraのホールで踊っていました。Bunkamuraにはスワロフスキーのお店があり、帰り際にいつも前を通っていました。そのうちショップスタッフとお話するようになり、「ショップで働いてみませんか?」と誘われて。当時踊りだけでは食べていけなかったので、派遣会社に登録して、派遣社員から始めました。ここのショップであれば出演のギリギリまでシフトに入ることができますし、昼間の公演が終わってからも仕事に行けるので。
―Bunkamuraのスワロフスキーは、非常に小さな店舗なのだとか。
そうなんです。店内は3歩くらいで歩けてしまいます(笑)。
―入社をしてから、あれよあれよといううちに、世界一となることをやり遂げられたのですよね?
店長になった時に、坪当たりの売上高(坪効率)が世界一位になりました。その背景の一つには、クリスタルジュエリーが非常に売れたからですね。貴石と変わらない輝きを持ち、なおかつ手軽に扱えることが広く受け入れられたのだと思います。
―坪効率世界一にするために、どんな工夫をされましたか?
まず、BUNKAMURAという芸術複合施設という立地を活かして、上映されている映画や舞台公演の内容を加味して、毎週ディスプレイを変えていました。21:00にお店が終わるのですが、スタッフ総出で夜中まで試行錯誤の上、ショップ内を全面チェンジしたこともあります。店内のBGMもすべて上映中の映画や公演を意識して変更していました。
また、当時はCRMという概念がなく、ちょうど個人情報保護法の交付された時期と重なっていました。そのため顧客データを取得することがなによりも難しくて。お名前をいただけないお客様に関しては、購入後の小さなタグを顧客カードに貼って、何を話したか、購入以外で気になった商品はなにか、それはなぜか、どういった雰囲気の方だったか細かいことも記載していました。そういった小さい積み重ねが功を奏してか、とにかくスタッフのファンになってくれる方がとても多く、老若男女問わず毎週・毎日顔を出してくれるお客様も。様々な苦労はありましたが、スタッフとのチームワークで楽しく接客をしていました。また、お店の雰囲気が良く、楽しそうにしているとそれまでクリスタルのオブジェやジュエリーの存在に気づいてなかった方々に気づいてもらえて、口コミで広がっていく様子が非常によく分かったことも、面白かったですね。
―販売員から店長になり、それからエリアマネージャーにもなられています。
店長になって、坪効率で世界一位になった3か月後くらいにお話しをいただきました。もともとエリアマネージャーの前に、各店舗のトレーニングを見てほしいという話から、そのままエリアマネージャーになりました。
―今の時代は、派遣からから店長、エリアマネージャーになるケースは少ないですけど、それだけの成果を上げられたからなのでしょうね。
当時会社としても初の試みでした。BUNKAMURAチームの成果への評価だったと思います。当初、BUNKAMURAの成功体験を他の店舗にも展開してほしいというお話しでしたが、当然売り場面積も違えば顧客層も異なり、特に百貨店内の店舗だと自由にできないことが多く、とても苦戦しました。もともと営業に対してやってみたいという想いがあって、純粋に「面白そうだな」と思ってお受けしましたが、結果を出すのには時間がかかりましたね。
紹介につなげた求職者たちが、安齋氏の名前を冠にした会を結成
―スワロフスキーを卒業されてから、人材紹介の仕事に転進されたということで、この仕事を選んだ理由を教えてください。
スワロフスキーではショップスタッフの方が250人ほどいて、私はその採用にすべて関わっていました。その際、人が仕事を選ぶ時の決め手とか、何を基準に選んでいるのだろう、といったことにすごく興味がわいてきて。スワロフスキーであれば「スワロフスキーが好きで」とか、「どなたかがつけていて」と、ブランドにあこがれて働くケースが多かったのですが、スワロフスキーがショップスタッフを募集していることを知らない人の中にも、きっと合う人もいるでしょう。逆にスワロフスキーで働いていても、それ以外の職種で活躍できる方もきっといるのではないかな、と思ったんです。
「自らサーチしていかないと、自分に合う仕事は見つからないのかな?」と気になり、その間に入る仕事はないかと探して、この仕事に出会いました。私はこれまで人材紹介会社を2社経験していますが、両社とも「人と組織に寄り添う」というスタンスをとても大切にしていました。
―今回、なぜ取材をさせていただきたいとお願いしたのかというと、クライアント(求人を出している企業)や候補者(応募した人)から安齋さんを推薦する声が多くて。評価をいただいてるということは、安齋さんは普通の方がやっていないことをやっていらっしゃるからだと思います。まず候補者が転職を決める時に、一緒に考えることを心がけているそうですが。
もともと会社のモットーでもあり、私のモットーでもあるのは、「候補者(応募した人)に寄り添う」というところです。もちろんクライアント(求人を出している企業)にも寄り添いますが、候補者に寄り添うことで気持ちの機微にいち早く気づけるように意識しています。
選考が進むにつれていくつか選択肢ができてくると、候補者の方の中には、自分が本来何のために転職活動していたのか、根本の思いに立ち返ることができなくなってしまうケースもあります。そういった時に、その方にとって何がベストかをフェアにお伝えできる方法を考え、「相関関係やポジショニングを捉えることができる“マトリクス”を利用したらいいのでは?」と思い、自分なりのマトリクス表を作り始めました。
マトリクス自体はその方によって項目を変えたり、その方の大切にしているものを伺って、どんどん形を変えていくものなので、これ、という決まりはありません。それを作ることによって、その方にとって、自分がやるべきこととか、今後を長期スパンで考える時、ものの考え方の整理がつきやすくなる、というところがいいな、と思ってやり始めました。
―安齋さんがご紹介している案件に対してマトリクスを使うだけではなく、安齋さんではない人材紹介会社からオファーが出ている企業に対しても、マトリクスを使っているそうですね。しかし人材紹介であれば、営業の本心としては「自分の所で決めたい」という思いがあるのではないでしょうか?
マトリクスを一番多く使う場面としては、2社、もしくは3社と複数オファーが出ていて迷っている、というケースですね。もちろん転職を繰り返して欲しいわけではないのですが、その方のキャリアはそこで最後ではない場合もあり、今後もどういったタイミングでご縁があるか分かりません。もちろん弊社は弊社でご紹介した企業に自信をもっているので、より詳しい情報提供はできますが、実際にその方の状況やキャリアを考えたうえでどうなのか、ということをフェアに考えたいな、と思って始めました。
マトリクスで整理した結果、過去には他社を選ばれた方はいらっしゃるんですけれども、そういった方々が企業の社長になられた時などに、再びご依頼いただくこともあって。自分の部下を採用したいとか、ご自身が身辺を考えたいという時に、「あの時、真剣に自分のキャリアに寄り添ってくれた」という印象で戻ってきてくださるケースが多いです。そういった意味でも、自分としては正しくて誠実なことをできているのかな、とは思っています。
―どういった項目がマトリクスに入っているのでしょうか?
今はコロナ禍の影響もあると思いますが、働く環境を意識する傾向が増えてきています。そういったことを踏まえ、ここ最近で新たに入れた項目としては、「コロナ禍における対応をどうしているのか?」とか、「在宅ワークはあるか?」といったことですね。また、ブランドごとに今の課題や今後の取り組みを伺った上で、候補者の方にとってどうキャリアの白紙を埋めることができるか、また、社員のエンゲージメントにどう取り組むか、リテンションプランがあるかどうか、といったことを追加しています。
企業からオファーをもらった場合、今回は受けられなくても、次にチャレンジできる機会が訪れそうなブランド・企業なのかとか。社内でのキャリアアップ、ステップアップがこれまでにあったかどうか、これからもあるのかどうかなど、その辺りをまとめます。
―そして驚いたのが、安齋さんは口コミによって1社で52人の方の転職相談にのり、40人弱の転職を成功につなげた、と伺いました。安齋さんのコンサルティングが厚い信頼を獲得しているからこそ、実現できたのでしょうね。
まさにマトリクスを作り始めた頃にサポートした方が、「キャリアに対して真剣に考えてくれるから、まずは相談をしてみれば?」と他の候補者の方に言ってくださって、それが次第に広がっていったんです。
―さらに驚くのは、その紹介を受けた人たちがコミュニティを作ったそうで。
最初は私の知らないところで、いつの間にかできていました(笑)。
―安齋さんが参加することもあるけれど、その会のメンバーだけでキャリアについて飲みながら話すこともあるのだとか。自分がいないところで会が発生して、自分がいないところでそのコミュニティの人たちがコミュニケーションを取っているというのは、この仕事をしている冥利に尽きますよね。
コロナ前はその飲み会に誘われることもあって。不思議なご縁だなと思いながらも(笑)、皆さんがキャリアのことを熱く語りながら真剣に考えてくださる場ができたことは、本当によかったと思います。
これからの時代に求められるのは、どこでも通用できる“ポータブルスキル”
―今までは候補者側のお話でしたが、昨今のクライアント、産業側の企業について採用、もしくは企業側がこういう方法で辞めさせないように努力をしているといった、企業側の話をお伺いできますか?
デジタル人材の中でもEC、CRM、ウェブマーケティングといったところは、本当に多くの企業が採用したいと思っています。少し前までは、マネージャーレベルの求人が主でしたが、今はディレクター以上が増えていますね。
そして現在社内にいるデジタル人材を流出させないために、企業においてはリテンションプランの策定も非常に重要な課題になっています。分かりやすいところでいうと、給与を上げたり、肩書を与えたり、コロナに準じて100%在宅ワークにする、といったリテンションプランを改めて作っている企業も増えてきています。
デジタル人材はもともと母数が少ない中で、リテンションプランが充実していると流出もしにくい。当然売り手市場であり、候補者の方にとっては業界問わず企業の選択肢は広いです。そのため私たち人材紹介会社は企業側が欲しい人材のニーズを100%満たす方をご提案するのは、難しくなってきています。現状を正確に把握した上で、お互い理想を持ちつつ、その中で何を取捨選択するかというところを双方の間にたって見定めていくのが私たちの仕事であり、企業側とも懸命に取り組んでいるところです。
―特にデジタル領域のディレクターの給与の提示額は、今まででは考えられないくらいアップしています。それでも入社しないというケースもあると言いますね。
そこでマトリクスの大切さが出てくると思います。給与だけではない判断をするために何が必要か、ということを吟味してもらうようにしています。
―今だからこそ、こういったことを考えなくてはいけないでしょうね。
企業側にとっても非常に大切でしょう。企業側に話をしている時に、頭の中でマトリクスを意識してコンサルティングをしていきたいと思っています。
―他に必要なものはありますか?
私は“ポータブルスキル”というものが、重要だと思っています。ポータブルスキルとは、その人が身につけてきた確固たるスキルを、どこであったとしても、同じように発揮できる力を指します。そういった汎用性の高い能力を持っている方は強いな、と感じていて。それこそ年齢や経験の長さに関わらず、どこに行っても活躍できるのでは、と思います。
―たとえば、どんなものがポータブルスキルと呼べるでしょうか?
テクニカルな部分にこだわらず、論理的思考や問題解決能力などの複合スキルを駆使した上で、実践できることだと思います。例えば、「問題解決能力があります」だけでは、状況によってその強弱がでてきてしまいます。ポータブルスキルは環境に左右されずファクトベースに基づいて自分の頭で考え、行動できること。そこをいかに獲得し、磨いていくかが今後は大切になっていくと思います。
―安齋さんのステイクホルダーはたくさんいらっしゃると思いますが、そういう人たちに対してどういう思いで関わっていらっしゃるのか、教えていただけますか?
私が関わってきたクライアントや候補者の方々など、皆さんがどうやったら幸せになるかというところを、非常に大切に思っていて。そうなるためのお手伝いができるといいな、と思っています。
―株式会社アイ・エス・エス・コンサルティングでは、現在、新たな仲間を募集されているということで、どういう人を求めていますか?
ファッション・ラグジュアリーやコスメの業界に強い方で、人材紹介エージェントの経験者を求めています。私たちの会社は売上至上主義ではないので、人に寄り添う気持ちを大事にする方、人を軸として考えられる方であれば、共感していただけると思います。
株式会社アイ・エス・エス・コンサルティング
募集要項:https://www.isssc.com/iss/recruit/job/
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