コーセーの2023年12月期の業績は、売上高が前年比3.9%増の3004億600万円で、営業利益が同27.7%減の159億8500万円、経常利益が同28.7%減の202億5200万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同37.9%減の116億6300万円の増収減益となった。ALPS処理水問題による買い控え、利益率の高い中国および韓国のトラベルリテール事業が大幅な減収だった一方で、「コスメデコルテ(DECORTÉ)」が国内売上過去最高を、アメリカ事業をけん引する「タルト(tarte)」がブランド史上最高売上を達成し、増収を支えた。
地域別では日本事業の売上高が同16.4%増の1898億円と好調に推移。コスメデコルテは“大谷売れ”で大幅に認知・売上を拡大した。リポソームシリーズやAQラインはいずれも前期比50%増と成長し、ポイントメイクやフレグランスも支持され、各種ベストコスメを合計423件獲得するなど躍進した。低中価格帯を担う「ワン バイ コーセー(ONE BY KOSÉ)」や「メイク キープ ミスト」も堅調に売上を伸ばした。また、子会社のアルビオンで「エレガンス (Elégance)」がインバウンド需要により好調だった。
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アジア地域は、引き続き中国の消費低迷の影響を受けるなどで、売上高が同34.7%減の528億円に落ち込み、売上構成比も約10%減少。中国は百貨店売上はほぼ前年並みに着地するも売上構成比の高いECとトラベルリテールが大幅減収となった。北米の売上高は同27.5%増の512億円と伸長。タルトが主力のベースメイク以外にリップでも売上を拡大し、TikTokライブストリーミングも好調だったことから売上を伸ばした。また、雪肌精や新たに進出した「アディクション(ADDICTION)」が堅調に伸びているという。
今期の国内事業はコスメデコルテを主軸に据え、リポソームシリーズとAQラインにフォーカスし、継続的な新客獲得とリピーターの醸成に注力。店頭接客などを含むアフターカウンセリングを見直し、継続利用を促すとともに、好調な定期購入サービスにも投資するなどで、2桁成長を狙う。そのほか各ブランドでもリピーターを強化する考えで、オンラインの会員サービス「コーセー ID」の連携を推進し、連携数を既存の2倍に引き上げるのを目標とした。「アルビオン(ALBION)」はアイコン化粧水「薬用スキンコンディショナー エッセンシャル」の発売50周年を起点に訴求。回復基調の雪肌精は、3月に控えるアイコン化粧水の刷新を皮切りに成長にアクセルをかける。大谷選手を起用した新ヴィジュアルおよびCMを制作。コーセーが掲げる3G戦略(グローバル、ジェンダー、ジェネレーション)のジェンダー視点での提案も広げる。
小林一俊 代表取締役社長は、「コスメデコルテは国内では引き続き存在感を高め、海外は中国だけではなく、欧州初の免税店として、11月7日にパリの百貨店にデコルテのカウンターをオープンするなど、欧米でもしっかり足掛かりを準備している。今期も大きな成長を期待している」と語り、フランスには支社を置き、本格進出を図る。
欧米で高い成長を見せるタルトは、今年創業25周年で、コーセーによる子会社から10年の節目を迎える。ブランド売上は買収時から約4倍に成長。引き続き現地のニーズや購買行動を見据え展開に力を入れるとした。
そのほか、コロナ禍で建設を延期していた山梨県南アルプス市の新工場の名称を「南アルプス工場」とし、今年7月に第一期建設を着工すると発表。2026年2月に竣工し、上期を目処に稼動を開始する。当初予定していた大量生産型工場から、需要の質的変化に応じることのできる柔軟な生産体制を備え、将来の需要の量的変化にも臨機応変に対応可能な、多品種生産工場として稼働させていくことを決定した。
敷地面積は11万1525平方メートルで、第一期建設の建物は3階建てで、延床面積は3万9300平方メートル、従業員300人程度が就業する予定。投資額は250億〜300億円を見込む。コスメデコルテや雪肌精などの主力スキンケアの生産を軸に、突発的な需要などに対応する「瞬発力のある工場機能」を備える。従来工場でのプロフェッショナルの知見をAIやIoTなどを駆使して再現したスマート工場を目指し、環境に配慮したサステナブルな要素や、“ヒューマンファースト”な設計を取り入れる計画だ。
今年新たに設置した商品本部の本部長に任命された常務取締役の小林正典氏は「当社のモノづくりの高い技術に立ち返り、高品質でイノベーションを巻き起こすような商品を生み出していく。必要であれば外部企業や海外とも連携し、より高いレベルのモノづくりに挑んでいく」と語った。
2024年12月期の連結業績は、韓国では厳しい状況が続くとした一方で、中国はトラベルリテールを中心に徐々に回復し、日本事業の着実な成長やタルトの成長などから、売上高を前期比3.9%増の3120億円と予想。営業利益は、アメリカを中心とした認知拡大のマーケティング費用を折り込みながらも、同25.1%増の200億円に設定した。また、経常利益は同2.7 %増の208億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同8.0%増の126億円を見込む。
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