Image by: A LEATHER
日本発のレザー専門ブランド「エー レザー(A LEATHER)」が好調だ。2022年にブランドを立ち上げ、2023年の売上は前年比250%で着地。年末年始にかけて阪急メンズ大阪で催されたポップアップでは「商品を十分に用意できなかった」(担当者)と言うが、3週間で予算の約200%を売り上げた。2024年には卸展開を開始し、売上は前年比500%を目標に掲げているという。
エー レザーは、デザイナーの長岡利和が「日本のレザーを世界へ」をテーマに2022年に始動。食肉副産物として生み出された日本製皮革のみを用いてメンズ・ウィメンズウェア、シューズ、小物などを幅広く提案している。レザーだけでなくファスナーやボタン、裏地なども日本製にこだわっているほか、裁断や縫製も日本の職人のみに依頼しており、一貫して「オール・メイドインジャパン」である点も特徴だ。
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これまで大阪の直営店と公式オンラインストアのみで展開してきたが、ブランド力がついてきたと判断し、2024年秋冬シーズンから卸売をスタート。デザイナーの長岡は「いきなり卸業態からスタートしてオーダーがつかないと工場や職人に迷惑をかけてしまう。100%自己資本で先行きが見えない部分もあったので、ある程度自信がつくまではBtoCオンリーでやろうと決めていた」と話す。
同ブランドが人気を集める理由は3つある。まず1つ目はレザーの柔らかい質感。革に関しては日本全国から取り寄せているので、それぞれ飼育方法や環境などの違いで元の触り心地は異なるが、全てを姫路の同一タンナーに依頼して独自の薬剤で鞣したあと「姫路の水染め」と呼ばれる伝統技法で染め上げている。この染色法は水を使いゆっくりと時間をかけて染めることで、より深みがあり高級感のある色合いに仕上がるのが特徴で、通常レザーを染色する際に用いられ、革を固くしてしまう副作用がある「顔料仕上げ」の必要がない。そのため、ラムレザーのように柔らかく上質な手触りに仕上がるのだという。「独自の鞣し剤と『水染め』は、それぞれ姫路を流れる川の水質でなければ実現できない。レザー専業ブランドとして革のクオリティ担保は必須だと考えている」と長岡。
2つ目はレザー製品の中では手が届きやすい価格帯だ。エー レザーが定番的に展開しているアイテムの価格は、アウターで10万円前後、パンツで8万円前後、シューズで7万円前後、バッグで6万円前後。エー レザーでは、パターンなどを内製化しているほか、小傷やシワなどがあり通常捨てられてしまうような部位も使用することでコストカットを実現している。原材料の調達を国内からに絞ることで輸入コストがかからないこともリーズナブルな価格に寄与しているという。
3つ目は、ラインナップの幅広さ。エー レザーでは、ライダースジャケットなどレザーの定番アイテムだけでなく、シャツやフーディー、ジャンプスーツ、テーラードジャケット、ボトムスなど幅広いカテゴリーを展開し、2024年秋冬コレクションでは全22型を揃える。特にボトムスは定番のテーパードパンツのほか、ワイドパンツ、トラックパンツ、袴パンツなどを用意しており、選択肢は多い。長岡は「一着購入した人が、気に入って別のカテゴリーやシルエットのアイテムを追加で買ってくれることが多い」と語る。
Image by: A LEATHER
卸売のスタートに伴い、海外市場の開拓も狙う。セレブリティから高い支持を得るロサンゼルスのセレクトショップ「H.Lorenzo」などの取り扱いが既に決まっており、今後はアメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国などで10〜15店舗への展開を目指す。長岡は「日本のレザーを世界に届けることを目標にブランドを続けているので、特に欧米で認められたい気持ちが強い。今後は3年以内に国内に自社の縫製工場を建てることを目指していく」と話した。
国内ではエー レザーのほかにもレザーアイテムが好調なブランドは散見され、「シュタイン(stein)」では、2023年度のレザーアイテムの売上額が前年比で343%に伸長。型数も2倍に増えているので単純比較はできないとしながらも、ニーズの高まりを感じているという。レザーコートなどを取り扱う「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」でもカテゴリーのプロパー消化率はほぼ100%を維持しているといい、順調さが伺える。動物愛護やサステナビリティの観点からリアルレザー撤廃の機運も高まっている昨今だが、この流れに対し長岡は「人間が肉を食べ続ける限り、余剰となる革は出てくる。それを最大限有効活用することこそサステナビリティだと思う」と主張。今後リアルレザーの市場はどのように変化していくのか、注目したい。
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