学芸出版社から、後世に残したい、泊まれる文化財35選が掲載された『ときを感じる お宿図鑑―スケッチで巡るレトロ建築ガイド』が発売された。
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著者は、古い宿の魅力に取り憑かれた吉宮晴紀氏
ときを感じる お宿図鑑―スケッチで巡るレトロ建築ガイド』2000円(税別)では、東北から九州・沖縄まで、選りすぐりの35事例を掲載し、その見所を建物のスケッチと豪華な写真で徹底解剖。著者は、建築を学ぶ傍ら、古い宿の魅力に取り憑かれ、全国100軒以上の宿を巡ってきた、「ときやど」を主催する吉宮晴紀氏だ。
吉宮晴紀氏は、千葉大学で建築を学ぶ大学院生。幼少期から家族旅行で各地を旅行し、様々な宿に泊まったという。
小学生時代の高速道路のジャンクションの鳥観図に始まり、間取り図やパースなど立体的な絵を描き続けている吉宮晴紀氏は、大学生になってから、文化財の旅館の面白さに惹かれて情報サイトを開設。併せて、小学生のころ読んだ妹尾河童氏の『河童が覗いたヨーロッパ』を思い出しながら、独自の断面パースで旅館の建物を記録してまわるようになったとのことだ。
WEBサイト「時を感じる宿に泊まろう~ときやど」の主催者で、Xにて「建築学生の呟き」を運営している。
各地域から、選りすぐりのお宿を紹介
『ときを感じる お宿図鑑―スケッチで巡るレトロ建築ガイド』では、東北から、まるで竜宮城のような、温泉街を一望できる珍しい意匠の宿、山形県「赤倉温泉 湯澤屋」、江戸時代の素朴な建物で秘湯を楽しむ、山形県「滑川温泉 福島屋」、地形を活かした庭と建物すべてが見事な、福島県「会津東山温泉 向瀧」を紹介。
関東からは、史上最高の旅館建築である、神奈川県「塔ノ沢温泉 元湯環翠楼」、
東京駅と共に歴史を刻む、レンガ造のホテル、東京都「東京ステーションホテル」のほか、漁業が栄えた明治時代の雰囲気をよく残した、茨城県「平潟港温泉 砥上屋旅館」、日本の湯治文化を堪能できる秘湯の一軒宿、栃木県「北温泉 北温泉旅館」、昭和初期の姿をとどめる貴重な浴場が必見の、群馬県「四万温泉 積善館」などが掲載されている。
中部からは、昭和初期のホテルらしさが残るほぼ旅館の宿、山梨県「下部温泉 湯元ホテル」や、水を活かした美しい旅館建築、静岡県「修善寺温泉 新井旅館」、『犬神家の一族』でお馴染みの、堅牢な建築により100年以上愛された宿、長野県「井出野屋旅館」などを紹介。
近畿・中国・四国では、遊郭の面影を色濃く残す宿、京都府「橋本の香」や、宣教師の家として建てられた泊まれるヴォーリズ建築、広島県「いんのしまペンション白滝山荘」などに注目だ。
九州からは、外は山小屋、中は豪華客船のような、スイス風クラシックホテル、長崎県「雲仙温泉 雲仙観光ホテル」、城下町でお洒落に営む古民家ゲストハウス、大分県「たけた駅前ホステルcue」、球磨川のほとりに佇む木造三階建ての秘境宿、熊本県「球磨川温泉 鶴之湯旅館」、奄美の島暮らしを体感できる古民家宿、鹿児島県「伝泊 高倉のある宿」などが紹介されている。
コラムや宿MAP、宿年表も掲載
各地域の宿紹介の合間には、「宿の建物用語を学ぶ」「宿の変遷を辿る」「宿の照明に注目してみる」「宿泊の作法を心得る」といったコラムを掲載。コラム「まだまだある!全国のレトロ宿」には、35選に入らなかったレトロ宿も載っている。
その他、同書に登場する宿MAPや、宿年表も掲載。レトロ好きな人は、『ときを感じる お宿図鑑―スケッチで巡るレトロ建築ガイド』を参考に、レトロな宿に泊まるレトロな旅を楽しんでみては。
(佐藤ゆり)
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