文具事務用品メーカーのキングジムでは、自社通販サイトを「新商品のPR起点」と位置づけ、通販の販路も含めた取扱商品の拡大を図っている。
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同社ではラベルライター「テプラ」、事務用ファイル「キングファイル」を筆頭に取扱商品数は約3000SKUと業界水準と比較しても多く、これまで自社通販サイトでは顧客サポートを目的に売れ筋商品の付属品をはじめ、店頭では品薄の周辺商材を軸に提供してきた。
自社通販サイトを刷新してBtoCの本格運用を開始したのは2022年7月。プラットフォームを変更し、社内運用できめ細かい情報発信ができる仕組みを整えた。これにより、毎月の新商品発表直後に購買意欲が高い顧客層を獲得できるようになった点が最大のメリットだとする。
EC事業部企画課長の木次谷健氏は、「新商品の発表日から発売日まで約1カ月の期間を設けているが、以前はSNSでの盛り上がりがピークとなるプレスリリース直後に『商品がどこにも売っていない』というロスが生じていた。基本的に取引先になるべく早く商品を取り扱ってもらうよう提案することしかできなかった」とし、現在は自社通販サイトがその受け皿として機能。CVR向上にもつながっているようだ。「新商品そのものが広告塔となって集客・拡販するという好循環が生まれている」(木次谷課長)とし、予約販売の状況から色柄の売れ筋や男女比など購入者の属性がある程度把握できるため、営業提案や店頭展開などにも役立つとしている。
検索機能も強化した。まず商品カテゴリで大項目を選び、遷移先のページで表示される商品一覧をさらに小項目やシリーズ名で絞り込むなど、顧客が迷わず商品に到達できる導線を用意。このほか「新商品」「OUTLET」「SNSで人気」などテーマ別の検索機能や記事コンテンツから商品ページへ誘導するなど回遊性を高めた。一方、特定の機能をもつニッチな商品には固定ファンも多く、指名検索で購入される割合が高い点も特長だとする。
タイマーが即売
直近では4月19日に発売した「ビジュアルバータイマー」がヒット。時間管理のツールとしてアナログ式タイマーが需要を拡大する中、同商品は横方向の目盛りで残り時間を表示するという新規性で注目を集め、発表とほぼ同時に在庫分は完売。現在は5月末以降に発送する予約販売を行っている。価格は税込2970円。初年度の販売目標数量は6000個。
「ストア限定品」では、キングファイルのデザインを忠実に再現したペーパーバックやブックカバーなどを展開。マニア心を刺激するレアな商品群はサイトへの誘導にも貢献しているようだ。
「これまで自社流通に乗らない限り商品化はできなかったが、直販ならではの小ロット生産が可能になり企画力が発揮できるようになった。今後も部署横断的にアイデアを出して独創的な商品を展開していく」(同)。
販促面では、昨年10月に自社サイト内に「アレコレテプラ」を公開。ラベルライター「テプラ」の文具以外の活用術や商品の選び方をガイドし、ウェブCMと連動してすそ野拡大を進めている。
2017年4月に立ち上げた文具ブランド「HITOTOKI」も売れ行き好調。「文具女子」などのブームを牽引し、右肩上がりで成長を遂げている。4月には都内で初のポップアップイベントを3日間限定で開催し、通販サイト限定品を販売するなどOMOを展開。コロナ禍のオフィス縮小に伴う事務用品の需要減を受けて、販売好調なBtoCでさらなる拡販を図る考え。
課題は自社倉庫とEC専用倉庫の在庫調整。「在庫商品は10時までの注文で当日出荷できるが、それ以外の商品は自社倉庫からEC専用倉庫への移動時間が余計にかかる」とし、今後は倉庫拡張も視野にサービス拡充を進めていくという。
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